第103話
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あれ? 香織さんには使えることを教えていたけど、お婆さんたちには教えていなかったのかな?
「はい。そうですね」
ここで誤魔化したところでやってしまった後では意味がない。素直に頷く。
「な、なんと!」
くわっと目を見開きズイズイっと顔を近づけてきたお婆さん。お婆さんと言っても念力の不思議パワーで40代後半くらいにしか見えないんだけど、とてもいや、かなり驚いているようだ。
そして、俺もそんな顔で迫られたら驚くからね、ミルさんだって保護官の立場として、どうしたものかと困った顔をしている。
「えっと……」
しかし、これはまずかったのかな? 俺がヒーリングを使う機会なんてそうそうあるわけじゃないけど、ちょっと使ったくらいではみんな何も言ってなかったからな……
ただ、能力先生からは珍しい念能力だって聞いていたから、でもそれは俺が男だからって意味だと思っていたんだけど……
「孫婿殿! 身体の方はどうなのじゃ? 大丈夫なのかえ?」
お婆さんが突然俺の身体をペタペタと触り出す。一瞬お婆さんの行動の意味が分からなかったけど、すぐに俺の事を心配しているのだと理解した。
「えっと、俺はなんともないですよ……」
「そうかえ。それならばいいのじゃよ」
ホッとした表情を浮かべたお婆さんが俺からゆっくり離れた。
「ん? 孫婿殿は分かっておらぬようじゃが……」
お婆さんが言うには、ヒーリングは病気やケガを治療(能力者の資質レベルや熟練度によって差がある)することができるが、使用後には休息を長くとる必要があり、念力の消費も激しいと聞いていたかららしい。
だから念療院の先生は一日に数人しか診ることが出来ず、予約なしでの診察や治療はしてもらえないのだとか。
しかし、そんなヒーリングでも、ケガや病気によっては一度の使用では完治させることができなく、ある程度まで治療すると、その後の治療は後回し(重症者優先のため長いと数ヶ月先)にされることがほとんどのため、大概の人は普通の病院に通うらしい。
それでも全治一カ月のケガが全治一週間になったり、進行して普通では手の施しようがない重い病気なんかも治療ができたりするので念治療を求める人は多い。
俺は行ったことないから知らないけど、念治療も保険の対象になり3割負担で治療できるのできるのでそこまで高額になることはないらしい。
「孫婿殿、感謝する、ありがとう。だが、ワシは孫婿殿に何かある方が辛い。あまり無茶はしないでおくれ」
お婆さんがここまで心配するのは、お婆さんが前に念療院で治療を受けた際、その先生がたまたま念力枯渇に陥り倒れてしまった経緯があるから。
その先生、かなり無理をしていたらしく一時は危険な状態になったらしい。
だからお婆さんはヒーリングを使った俺が念力枯渇になり倒れるんじゃないかと心配していたようだ。
でも全然大丈夫なんだよね。これは毎日鍛錬しているお陰かも。
一般的には念力は増えないと聞いているけど、ミルさんは鍛錬すれば念力量は僅かだけど増えるし、使い慣れた念能力は念力の消費を少しは抑えられるって言っていたからね。
実際、消費する念力量は減っている気がする。お婆さんに言うとまた心配させてしまいそうだから言わないけど。
「はい。気をつけます」
「うむ」
それからお婆さんは、しばらく俺とミルさんとの鍛錬をうれしそうに眺めていたが、香織さんたちが帰宅したとの知らせを受けると俺たちに声をかけてからそちらに行ったが、
「ふむ。ワシの心配は杞憂のようじゃな、孫婿殿の念力量はとても高いようじゃわ」
その足取りはとても軽そうだったが、俺は俺がヒーリングを使える事を黙っていた事を香織さんが怒られない心配。
……うーん。でもなぁ、お婆さんのあの様子。誰かに話すようには見えない……たぶん、大丈夫かな。
なーんて考えは甘かった。夜になり、すき焼きの準備ができたと知らせがあったので香織さんとミルさんとで大部屋に向かえば、なんだか騒がしい。
デジャブかな? なんてバカな冗談を心の中で考えつつ笑いを堪えながら大部屋に入ると、
「孫婿殿、すまん。すまんのじゃ」
すぐにお婆さんから土下座つきの謝罪を受けた。
「え?」
しかも、次の瞬間には、俺がその理由を尋ねる間も無く、勢いよく迫ってきたお義母さんたちに囲まれていたのだ。
当然、両隣にいた香織さんとミルさんも俺に巻き込まれた形になっている。
「これはいったい……」
「た〜け〜と〜く〜ん。私もヒーリングをかけてほしいのよね」
「!?」
その瞬間お婆さんに顔を向ければお婆さんがすごい速さで顔を背ける。お婆さん喋ってるじゃん。
まあいいんだけど、お義母さんはどこか体調が悪いのかな?
「いいえ、とても元気よ。あら? その不思議そうな顔、タケトくんは本当に分かっていないのね。ほらお母様(お婆さんのこと)のお肌、見て分からない」
お義母さんから聞いて驚く俺。どうやら俺がお婆さんにかけたヒーリングは、お肌にも影響を与えていたようで、お婆さんの顔の小じわは薄くお肌にもハリやツヤが戻ったことで若々しくなっていた、らしく、それはもう、すき焼きなんて後回しの大騒ぎに発展。
特にお婆さんの姉妹や娘(お義母さんや叔母さん)たちは、お肌年齢の気になるお年ご……ぁ、
「お、お義母さん?」
今よからぬことを考えていたかって? いえいえ。とんでもないです。
元々歳のわりに若々しく見える(念力によるもの)お婆さんだから気のせいだろうって誤魔化してみたけどダメみたい。
ぜんぜん違うからね、と笑顔なのに圧がすごい。たしかに今は40代前半でも通りそう。
「「「そうでしょう!」」」
俺が納得した事で義母さんたちの圧がさらに高まる。
堪えきれなくなった俺はお婆さんを頼ることに。念力枯渇になるかもしれないからダメですよね?
「すまぬ」
お婆さんにまたしても顔を背けられてしまった。
「ちょっとみんな。タケトくんが困っているから。ミルさんもそう思いますよね」
「はい。香織奥様」
みんなを止めようとしてくれた香織さんとミルさんだけど……
みんなからを何やら質問攻めにされたあとに羨ま視線を受けて、小さくなっていました。
俺は2人を見慣れていたから気がついていなかったけど、香織さわとミルさんのお肌はいつもぴちぴちのツヤツヤだった。
もちろんそれが鍛錬の時にかけていたヒーリングによるものだってことに……
「タケトくん。お願いしますね」
「はい」
俺が思っている以上に女性は「美」に対して貪欲だったのだ。
結局は、みんなにヒーリングをかけてあげることになり、俺が休むことなくヒーリングをしていたら俺を見ていたお婆さんが「すまぬ」と何度も呟きながら心労で倒れてしまった。もう一度ヒーリングをかけたけど。
でもみんなにヒーリングはしてよかったと思う。恐れていた念力枯渇にはならずに、子どもを除く、ほとんどの方が首や肩が凝っていて(野原一族はお胸が大きい)、何人かは病に罹っていてそれを完治させは事ができたから。
1人だけ左手にやけどの跡が残っていたから消えるか試したら、少し念力消費が激しかったが綺麗に消えていてヒーリングした自分も驚いた。
そんなことをしていれば今年ももうすぐ終わりを迎える。
とある番組ではウタコさんが元気にカウントダウンをしていて慌てて香織さんとミルさんと手を繋ぎタイミングを合わせて大ジャンプ。
こうして俺たちは新年を迎えるのだった。
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