表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やらかしていた男子ぼちぼち頑張る。  作者: ぐっちょん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/126

第10話

※ブックマーク、評価ありがとうございますm(__)m

 久しぶりの学校なので指定された時間よりも少し早めに家を出る事にした。


 しかし、昨夜は参ったよ。ワイシャツにアイロンをかけよとクローゼットから引っ張り出したはいいが、前の俺は120キロを軽く超えていたからワイシャツがデカくてぷかぷか、もしかしてと確認した制服もぶかぶか。


 普通に生活していただけなんだけど、今は70キロくらいになっていたから当たり前といえば当たり前だったなんだけど、まったく頭になかったんだよね。焦ってすぐに先生に連絡したよ。


 19時くらいになっていたけど、すぐに先生が来てくれて、先に連絡してくれていた学校指定の学生服専門店に直行。


 展示してあった既製品、非売品で少しサイズが合わないが、ぶかぶかよりまし。それを貸してもらうことになった。


 採寸したからちゃんとした制服が出来上がるまでの辛抱だ。でも採寸に時間をとられて終わった時には20時前。

 お礼にお茶でも出そうかと思い誘ったけど、先生は仕事が残っているからと学校に戻っていった。


 かなり焦っていた様子からも仕事がたくさん残っていたのだろう。

 それなのに仕事を後回しにして俺の所に駆けつけてくれたなんて、何らかの形でお礼はするべきか……


 学校に近づくに連れて、生徒の姿が少しずつ増えてくる。

 まぁ、だからと言って俺に声をかけてくる生徒はいない。

 遠巻きに俺のことをじっと見ているだけだ。いや、そわそわしている生徒もいるね。あの人、挙動不審になってる、動きがちょっとロボットみたい、やばい笑いそう。


 自分の太ももを気づかれないようなぎゅっと摘み、どうにか笑いを堪える。


 そんなことをしているうちに正門が見えてきた。入学式に一度だけ登校していたので、何となく見覚えがあるな。ちょっとだけ懐かしい気がするぞ。


「あの人は……」


 ——先生……?


 なんと先生直々にお出迎えだ。昨日からお世話になりっぱなしだね。


 先生の周囲には上級生らしき生徒さんも複数人いるけど……面識がないのでまずは先生に挨拶だ。


「先生! おはようございます」


「剛田くん。お、おはよう。ちゃんと来てくれてうれしいわ。ありがとう」


「なんですかそれ、そういう話でしたからちゃんと来ますよ」


 俺が上級生の方に視線を向けたタイミングでかるく会釈をして挨拶をしてくれたのは生徒会役員の皆さんだった。

 

 ————

 ——


「ねぇねぇこころ! 昨日の和也様見た? 超カッコよかったね」


「ん、のかじゃん。おはよ! 和也様がダンスしてたやつでしょ。もちろん見たに決まってるじゃん」


「そうそうそれ。って、つくしじゃん。こころがつくねと一緒にいるなんて珍しいね。もしかしてつくねとすでに話してた感じ?」


「え!? わ、わたしは……」


「あはは、つくしが見るはずないじゃん……あーしが、宿題するの忘れてたからノート借りてただけ。じゃこれね、ありがとね〜」


 クラスメイトの横島名さんは(横島名 心【よこしまな こころ】)、私からノートを受け取ると軽やかな足取りで自分の席に戻っていった。


 その横島名さんの隣の席に座った尾椎さん(尾椎 乃加【おしい のか】)は、横島名さんと話しながらもポケットからスマホを取り出している。


 先ほどの口ぶりからも、今人気のイケメンネッチューバー、沢風和也くんの動画でも見るのだろう。


 沢風くんが動画配信を始めてから彼の話題を聞かない日がないくらい、この学校でも彼の人気はすごい。


「はあ。男なんて居なくなればいいのに」


 私は霧島つくし。私は子どもの時から男が嫌いだ。男は傲慢で我儘で自分勝手。

 それに女は替えのきくアクセサリーか何かだと思っている態度も気に入らない。


 会社を経営し私を育ててくれる母を私は尊敬している。そんな母の前に、たまに現れるのが太った男で、私の父らしいが、そんな父は私に見向きもせず母に向かって、偉そうにお金をせびる(実際は母が喜んで手渡している)。


 お前とは別れる。これは数えるほどしか会ったことのない父の口ぐせで、母がちょっとでも口答えすれば怒りの込もった罵声を吐き捨てて居なくなる。けど、お金が無くなれば、平気な顔で、またお金をせびりにくる。


 なぜ? そんな男を許している。といつも思っていたけど、16歳になって母が教えてくてれた。


 男性と結婚しているという事実は、社会的な信用を得られやすく、会社を経営してる母からすれば、そんな父でも別れる方が社会的損失が大きいらしい。というのは建前で、女として男性に求められたいという欲求があるから仕方ないらしい。


 経験すればあなたも分かるって、聞きたくなかった母の性事情。でも、私はそんなことに絶対にならないもん。みんながカッコいいという沢風和也くんだって興味が湧かない。


「つ〜くし。朝から暗い顔してどうした?」


「さっちゃん? おはよう」


 ボーっと前方の黒板を眺めていた私の前に、親友のさっちゃん(牧野 幸子【まきの さちこ】)が顔を覗き込んできた。


「うん。おはよ。それで何かあった?」


「えっと、ほら、今日ウチのクラスに剛田武人くんだっけ? 来るって昨日先生が言ってたから」


「なるほど。つくしは男が嫌いだもんね」


「う、うん」


 入学式に一度しか見ていないけど、剛田武人くんは男性にしては珍しく、ウチの学校でも有名なネッチューバーだった。


 この学校の生徒はほとんどのチャンネル登録していたと思う。私はしていないけど。


 そんな剛田くんは、彗星の如く現れてすぐに人気が出た沢風和也くんにちょっかいを出し? 大炎上した、らしい。


 この学校でも、今までにいないタイプの男性(痩せ型でイケメン)である沢風くんのファンになった生徒は多く、ちょっかいを出した? 剛田くんに腹を立てて報復とばかりにチャンネル登録を解除したという生徒も多いとか。


 中には自宅まで押しかけて、窓ガラスを割ったとか、腐った卵を投げ入れてやった、とか、母親に文句を言ってやったとか、ピンポンダッシュを何度も繰り返したとか、思いつく限りの嫌がらせをしては喜んでいる生徒もいたらしい。


 横島名さんと尾椎さんもそうだ。2ヶ月くらいは沢風様のために報復するんだと張り切り、毎日のように走り回っていた。


 大きな声で笑いながら前日の活動報告を誇らしげに語っていたからこのクラスのみんな知っている。


 でも2ヶ月も経つと(暴露系ネッチューバーが離れたことが大きい)炎上もほぼ沈下、この学校も少しづつ落ち着きを取り戻し、最近では、剛田くんが炎上する前、いつもの日常にまで戻っていた。


 だけど、数日前に沢風くんが学校に通い始めたという噂が流れ、それが事実だと知ってから学校全体の雰囲気が暗くなった。


 男がらみの問題ばかりでほんとうんざり。またかと思った。今日、剛田くんが学校に通ってくるのもそう。


 なぜ? って気持ちの方が大きかったけど、どうやら、沢風くんが通う学校と比べては落ち込み、勉強に対するモチベーションを下げる生徒が増え続けている現状に危機感を感じた生徒会と先生たちが動いたらしいのだ。


 意外に思ったのは、基本的に男子生徒はリモート学習が当たり前。男が素直に学校に来るはずない。

 それなのにこんな事に協力する男子生徒がいたなんてびっくりしたよ。


「はあ、やっぱり男なんて来なくていいのに」


「まあまあ、彼(剛田くん)変わったよ。とても頑張っていたんだから」


 さっちゃんがスマホをポケットから取り出し誰かの動画を私に見せようとしていた。けど、


「きた、きたよ」


「つくし、またあとで」


 クラスメイトの何人かが慌てて廊下から駆け込んでくれば、さっちゃんも慌てて自分の席に戻った。


「みんなおはよう」


 すぐに担任の新山先生と、一人の男子生徒が入ってきた。あれほど騒がしかった教室内が静まりかえってしまった。


 かく言う私も息を呑んでいた。入学式に一度だけ見た彼は父みたいに太っている男性だった、はず。

 それなのに今は、スラっとした高身長で顔立ちもかなり整っている美しい少年。


 先生が何か言ってるけど耳に入らない。彼を見つめるだけで顔が火照るよ。


「剛田武人と言います。今日から週に一日だけ通うことになりました。

 学校生活に慣れるまで皆さまにはご迷惑をおかけする事もあるかと思いますが、よろしくお願いいたします」


 傲慢さを感じさせない彼の声が心地よい。彼の仕草一つ一つを目で追ってしまう。なぜ、どうして、あれほど男が嫌いだったはずなのに、私は、私は、一体どうしたのだろう。


 でも、今なら母の言っていた言葉の意味が分かりそうな気がする。


最後まで読んでいただきありがとうございますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ