第1話
バリーン!
「はあ、またか……というかウチの家、まだ割れてない窓ガラスって残ってたの?」
俺は剛田武人16歳。男女比1:10で男性が優遇されている世界に転生していたようだが、前世の記憶を取り戻す前に俺はすでにやらかしていた。
ことの起こりは3ヶ月前、基本的に引きこもりになる男性が多いこの世界で、俺は男にしては珍しく、動画配信者として活動していた(男は男性手当てがあるから働かなくても十分食べていけるから)。
配信内容はただ無言でゲームをするだけのものだったり、マンガを無言で読んでいるだけのものだったり、偶に生配信をすれば心優しい女性を見下した発言が多く面白くもなんともない動画ばかり。
それでも男性netTuberというだけで需要があり登録者数は1000万人を超えていた。
それがある日を境に激減していく。1000万人が500万人になり、500万人が200万人になり100万人になり50万人まで減ったところで、その原因が分かった。
それは男性動画配信、沢風和也という存在だった。
俺と同じ歳で最近動画配信を始めたという新参者。
基本的にデブやぽっちゃりで俺様系、自己中な男性しかいないこの世界に、その配信者は細マッチョのイケメン。爽やか系で口調も柔らかく女性に丁寧で優しかった。ちなみに俺はデブ。
動画の内容も女性視聴者を意識していて面白く編集されており、動画の終わりには必ず女性を応援するような言葉で締めくくっている。
生配信では女性と一緒に楽しくゲームしたり、褒めたり慰めたり、相談に乗ったりで、多い時は同接10万人を超えていた。登録者数は今でも増え続け、現在では2000万人は超えていたと思う。
そのうちドラマやCMなんかにも出てくるんじゃないかと俺は思っている。
んで、当時、それを面白くないと思った記憶を取り戻す前のおバカな俺氏。いつもの調子でその動画配信者を罵倒し卑下する言葉を発信した。
俺の方がすごいんだぞ、ポッと出の新参者が調子に乗るな、とね。
いやぁ、それからは酷かったね。俺の登録者数はバンバン減っていき最後は一桁。今は0になってるんじゃないかな、見てないけど。
住所は特定されて晒されて、脅迫の手紙や不幸の手紙がバンバン届くし、腐った卵や汚物、それに小石なんかも毎日のように投げ込まれた。
今でも窓ガラスは割れている所はあるし、というかほぼ全て割れている。壁面なんかにも汚れが目立つ。
当然、普通の生活もままならなくなり母さんと妹は病で倒れて入院。未だ帰ってきてないと思っていたら、昨日絶縁状が弁護士を通して送られてきた。あと精神的に参っているから近づくなとも。
そうだよね、恨みたくもなるよね俺のせいで普通の生活ができなくなったんのだから。
俺? 俺氏は反省どころか母さんや妹に八つ当たりしていたクズでまったく反省していなかったよ。
生まれてからの記憶は普通にあるから、かなり迷惑をかけていた自覚はあるので素直に署名捺印してから迷惑料を払う意思があることを付け加えてから、人目の少ない夜中にこっそりと投函した。
迷惑料のお金? 有り難いことに、こんな状況でも男性手当てはしっかりと出ていて今でも入ってくるし、半年続けていた動画配信の広告収入がかなり貯まっていた。
通帳を確認した時には目玉が飛び出るくらい吃驚して何度も通帳の数字を確認してしまったよ。
だから数千万円くらい振り込むつもりだ。このお金で家を買って普通の生活を送ってくれれば俺の気持ちも少しは収まる。ほんとごめんなさい。
もちろん以前の俺氏は家の事は何もできないダメ男。というか基本的にこの世界の男は女性に甘やかされていてダメ男が多く自分では何もできない。
だから母さんたちが身体を壊して入院すれば、俺を世話する人なんていないから、食事もままならなくなり、案の定3日目に空腹で倒れた。
その時のショックのおかげで前世の記憶が蘇り一命をとりとめたんだけど、前世の記憶が戻っていなかったら多分餓死していたと思う。
今の俺は自炊できるから、たぶん前世の俺は自立し一人暮らしをしていたのだと思う。だから一人でも割と平気なのだろう。
でも餓死していたかもっていうのは事実だ。当時は、恐ろしいことに血走った目をしたカズヤファンが俺の家の周りをうろうろしていて、怖くて外出できなかったからね。
幸い炊いてないお米が60キロほどあったから(以前の俺はデブだけによく食べていた)、ほかの食材がなくても、ご飯だけは食べれたんだよね。
デリバリー? 普通に断られた。もう掛けてくるな! とも言われたね。
それが一件だけじゃなく全てね。たぶん女性たちの間では、俺は要注意人物として扱われる存在になっているのだろう。
でもね。残念ながらそれだけじゃないんだ。超人気イケメン男性配信者を煽った影響は。
物を投げつけられて傷んだ家の改修や清掃の業者からも断られたし、男性に何かあればすぐに駆けつけてくれる男性保護官も見て見ぬふり。もうね、自分の事は自分でどうにかするしかないのよ。
幸いお金はある。
最後まで読んでいただきありがとうございますm(__)m




