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No.006 / 百年前の人類


「さて、突然ですが、あなた方は選ばれた十名です」

ヘッドセットの中に所沢先生の声が響く。


所沢先生の言葉の真意を、クラス萌黄の十名の生徒は、皆つかめないでいる。


「と、言われたところで話が見えませんよね。ご安心ください。ご説明いたします」

所沢先生は続ける。


「何を隠そう、あなた方十名は、コールドスリープから目覚めた百年前の人類なのです」


生徒の間に動揺が走る。

「お静かに」

メバエは静かに次の句を待った。

「正しくは世界暦2284年、コールドスリープの実用が開始されてすぐ、ごく初期のスリーパーです」


ドクン、とメバエの鼓動が高鳴る。


「さて、あなた方が眠っていた約百年の間に、世界ではスリーパーたちに社会復帰をしてもらおうという計画が立ち上がりました。その実践舞台の一つとなっているのが、この第四十番VR都市『幽世ランド』です」

所沢先生は続ける。

「皆さんが所属する幽世ランド付属幽世学園は、目覚めたスリーパーたちが問題なく幽世ランドで生きていくために必要な知識や技能を習得する場として、10年前に開校しました。あなた方は幽世学園を卒業したあかつきには、全員が幽世ランドのいずれかの職に就くことが定められています」

幽世ランドの職に就く――。


「ガイダンスは以上です」

皆、一気に緊張がほどけたという顔をしている。


「すいません、質問です」

そう手を挙げたのは、出席番号二番のナミカゼ・シノギだ。

男子の中でも頭二つほど飛びぬけて高く、体格に恵まれているシノギは、それだけでも人目を引く。

「俺たちはいつ、スリープとやらから目覚めたんですか?」


そうだ、学生寮で目覚めた時、セキは昨日メバエと出会ったと言っていた。

メバエは所沢先生の答えを待った。

「今朝のはずです」

先生はそう短く告げた。


では、セキの言っていた昨日の記憶は、なんだというのだろう。

セキの顔をそれとなくうかがってみるも、セキは「どおりでぼーっとしてると思った」などと口にしている。

そのセキの言に、「言われてみればねー」と賛同を示す声まであがっている。


おかしい……。

皆、異常なほどに動揺していない……。


メバエは自らを顧みた。


……。


私もか。

私も、まるで動揺していない。


果たしてこのメバエの違和感は、幽世ランド、ひいては現実世界をも巻き込んだ事件に起因するのであるが、この時のメバエは知る由もない。


「メバエ、行くよー!」

所沢の野外レクチャーは続く。

一瞬抱いた違和感を打ち消し、メバエはセキの呼ぶ声に「はーい」と返事をし、幽世大滝前の広場を後にしたのだった。


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