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No.020 / 子孫からの連絡


「はーい!昨日、お知らせしたように、今日は隣の島の1年生クラス「えんじ」との交流授業を行います」


視聴覚室に集められた僕らクラス「萌黄」の生徒を前に、担任の所沢先生が声を張り上げる。

9月に入り、外はまだ夏の暑さの残る陽気だが、エアコンのきいた室内にあって、僕たちは快適に過ごすことができている。


パソコン型の交信機を前に、僕は今一度、今回のバディの名前と顔を確認する。


「では早速、回線をつなげてみましょう」

所沢先生の指示のもと、僕たちは一斉に交信機の電源をオンにした。

みじかい砂嵐のあと、徐々に映像が整ってゆき、モニタに一人の少女が映し出された。

おでこの中央で分けた薄い色の髪の毛を肩の上で切りそろえたその少女は、僕の顔を確認したのか、「あっ」と声をもらした。

僕はつとめて冷静に、第一声を告げた。

「はじめまして、今回バディをつとめることになりました、クラス『萌黄』のジョメイ・スクイです。よろしくお願いします」

僕が自己紹介をすると、少女はぱっと笑顔になり、

「あっ!私、八千代このはです。よろしく!スクイ君!」

と声を張り上げた。


「はーいみんなー、お互いに挨拶は済んだかしら?今日はまず親睦を深めることが目的だから、制限時間いっぱい自由に会話を楽しんでください」

教室の向こうの方で、所沢先生が言った。


「ね、ね、そっちはどんな生活をしているの?」

このはと名乗った少女は、好奇心いっぱいに、まずはそんなことを聞いてきた。

「生活って、普通だよ。寮生活をしながら、毎日学園で授業を受けてる」

「授業の内容は?」

「春から夏にかけては能力や歴史、人格なんかの基本的なことを学んだよ。ああ、ツクモも作ったね」

そう言って、僕は左肩に乗っていた自分のツクモであるポテを指さした。

「あら、スクイくんのツクモは……何それ」

「ああ、見ての通り、おまんじゅう」

このはさんは、ぷっと笑って続けた。

「何それ」

「描くのが簡単だったんだよ」

「なるほどねー」

見ると、このはさんの左肩には、何やら無機物が乗っていた。

「砂時計?」

「ええそう。砂時計。いいでしょ」

「へぇ。珍しいね。しゃべるの?」

「うん、ちゃんとしゃべるわよ」

そう言ってこのはさんは、砂時計をくるっと回転してみせた。

砂時計の中におさまっている黄色い砂が、さらさらとくぼみから落ちてゆくのが見えた。


「ねね、スクイ君のクラスには、子孫からの連絡はあった?」

「子孫からの連絡?」

このはさんの質問の意味が分からず、僕はオウム返しに質問した。

「現世に生きる子孫からの連絡よ。各学年、毎年ひとりふたりはいるのが普通って聞いてるけど……」

そこまで聞いて、僕は記憶をたどってゆく。

「ああ、そういえば、部活の先輩から聞いたことがある。僕らの島では一年にも二年にも子孫からの連絡は0だよ。島ごと呪われてるんじゃないかって噂してるよ」

所属する茶道部で、確か先輩がそんなことを言っていた。

「へぇ0っていうのは珍しいわね」

と、このはさんは首をひねって見せた。

「このはさんには子孫は会いに来たの?」

僕は単純に気になったので、率直に尋ねてみた。

「ううん、ただ同じクラスの友達には来たよ」

「へぇ、どんな会話をするんだろ」

「大体が遺産の話みたいよ」

ここでも、僕は記憶をたどる。

「そういえば先輩が言ってたな。子孫は僕たちがスリープ前に現世に残してきた遺産について話すものだって」

「そう。授業で習ったかもしれないけど、現世の遺産って、私たちが直接子孫とやりとりしないと相続できないじゃない?」

そういえば授業でそんなことを言っていた。

「スリープした先祖の遺産を相続したいからって子孫が会いに来るっていうのは、本当みたい」

このはさんはそう言うと、秘密を共有するかのように、人差し指を立てて口元へやった。


「へぇ。なんだか寂しいな。せっかく血のつながった者同士の対面なのにお金の話だなんて」

僕がそう言うと、このはさんも「そうね」とぽつりとつぶやいた。


僕らの話はそれから、とりとめもない話題の共有へと流れてゆき、制限時間いっぱい、僕はこのはさんと楽しい時間を過ごしたのだった。


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