第1話「 父の愛、鳥の声」
青い星に産まれた「生」と「死」
生が「地」「海」「日」を作り
死が「人」「病」「老」を産んだ。
彼らは青い星を「地球」へと作り上げた。
しかし、いつしかそれらが新たなる災害を産み、
全てを一括りに「災」と呼ばれるようになった。
いつしか力を持った災「人」は「死」を殺し、
4つの古代兵器へと作りかえ、「人以外の災」を殲滅し始めた。
そんな世界の中で生まれた1人の少年の話。
人という災の強い思いを新たなる災を呼ぶ。。。
木造の家がきしむ音が、夜の奥で鳴っていた。雨戸の隙間から月が滲み、カナトの部屋を銀色に染めている。
掛け布団の中、カナトは息を殺すように寝たふりをしていた。薄暗い部屋の隅、棚の上の小さな鳥籠に視線を這わせる。そこには、ひと羽のインコがいた。
名前はまだない。
けれどカナトは心の中で「リリ」と呼んでいた。母が死んだあの日、近くの森で震えていたところを拾ったのだ。リリはいつも、夜になると静かに囁くような鳴き声を発した。それはまるで、「忘れないで」と言っているようだった。
階下で軋む床の音が止まった。
カナトはまぶたを閉じ、胸の中の鼓動を押さえる。
ドアの向こうに父の足音が立ち止まる。
ドアノブが、ゆっくりと回る。
――カナトは震えていた。
何も考えたくなかった。ただ、リリのさえずりが、自分の耳の奥で優しく響くように願っていた。だが、現実はそれを許さなかった。
そして、それは来た。
父の「愛」は、痛みと匂いでできていた。
この夜のことは、言葉にできない。ただ、カナトの中に“何か”が生まれた。自分の存在が、誰かの欲の道具でしかないのなら――いっそ全部、壊したいと。
その瞬間。
彼の片目に、赤く燃えるような文字がうっすらと浮かび上がった。
翌朝、カナトは目を覚ました。
リリの鳥籠が開いていることに気づく。中は空だった。羽根が一枚、床に落ちている。涙が止まらなかった。
だが、リリは死んだわけではなかった。
その羽根には、小さな熱が宿っていた。手のひらにのせると、じんわりと、太陽のような温かさがあった。
「リリ……」
その名を、初めて口にした。
それは次の日昼間のことだった。
父の機嫌が良かった理由は簡単だった。誰かから金を受け取っていたのだ。
誰か分からない男たちがやってきて、母の遺影を床に落とし、カナトを椅子に縛り付けた。
スーツを着た男性がカナトの顔を見て、小声で何かを言った。
「関係ねえよ。金さえもらえりゃ」
父はそう言った。
カナトはそのとき、痛みよりも言葉が痛かった。
それは夜まで続いた。
⸻
その夜。
カナトは地下室に連れていかれた。そこで彼は、父の「愛」と向き合うことになる。
父の片目に、赤黒く浮かぶ文字――「愛」。
欲望が歪み、怨念が塊となり、父は「災害 愛」に変貌した。
彼の指先が変形し、血のような触手が伸び、カナトを包もうとする。
しかし、そのときだった。
鳥籠が砕けた音がした。
――リリが、光を放って戻ってきた。
羽ばたいたリリの体から、まばゆい光が溢れ出す。
それは災害「日」の力だった。
そして、その光を浴びたカナトの片目に
「革命」の文字が浮かぶ。
今度は、自らの意思で。
⸻
父の災害は“愛”であるがゆえ、愛されなければ力を発揮できない。
カナトは、それを見抜いた。
「……ねえ、父さん」
カナトは涙を浮かべながら、言った。
「僕、ずっと、ずっと……父さんに嫌われたかった」
その言葉に、「愛」という災害が崩れた。
父の体が裂け、感情の塊が空気中に溶けていく。
カナトは叫ぶ。
「災害なんて、もういらない! 愛も、支配も、神様もいらない! ぼくは、ぼくの灯りで生きる!」
その瞬間、革命の力が目覚める。
リリと共に放った一閃の光が、父の姿黒い霧のように消し去った。
夜が明ける。リリの姿はどこにもなかった。
カナトは父の家を出る。焼けた一室から、空の鳥かごと古びたリュックを背負って。
その手には、父の遺品のひとつ、「記録装置付きの指輪」があった。
それは、封印された「雨」の制御、災害を助長する軍の存在、そして“古代兵器 四季”の手がかりが記録されていた。
カナトは思う。
「この世界には、まだ知らない光がある。知らない絶望も、きっと。でも……僕は、行く」
その背には、小さな革命の灯が、ともっていた。
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