表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
災の世界の中で  作者: 山田
1/1

第1話「 父の愛、鳥の声」

青い星に産まれた「生」と「死」

生が「地」「海」「日」を作り

死が「人」「病」「老」を産んだ。

彼らは青い星を「地球」へと作り上げた。


しかし、いつしかそれらが新たなる災害を産み、

全てを一括りに「災」と呼ばれるようになった。


いつしか力を持った災「人」は「死」を殺し、

4つの古代兵器へと作りかえ、「人以外の災」を殲滅し始めた。


そんな世界の中で生まれた1人の少年の話。


人という災の強い思いを新たなる災を呼ぶ。。。



 木造の家がきしむ音が、夜の奥で鳴っていた。雨戸の隙間から月が滲み、カナトの部屋を銀色に染めている。

 掛け布団の中、カナトは息を殺すように寝たふりをしていた。薄暗い部屋の隅、棚の上の小さな鳥籠に視線を這わせる。そこには、ひと羽のインコがいた。


 名前はまだない。

 けれどカナトは心の中で「リリ」と呼んでいた。母が死んだあの日、近くの森で震えていたところを拾ったのだ。リリはいつも、夜になると静かに囁くような鳴き声を発した。それはまるで、「忘れないで」と言っているようだった。


 階下で軋む床の音が止まった。

 カナトはまぶたを閉じ、胸の中の鼓動を押さえる。

 ドアの向こうに父の足音が立ち止まる。

 ドアノブが、ゆっくりと回る。


 ――カナトは震えていた。

 何も考えたくなかった。ただ、リリのさえずりが、自分の耳の奥で優しく響くように願っていた。だが、現実はそれを許さなかった。


 そして、それは来た。


 父の「愛」は、痛みと匂いでできていた。

 この夜のことは、言葉にできない。ただ、カナトの中に“何か”が生まれた。自分の存在が、誰かの欲の道具でしかないのなら――いっそ全部、壊したいと。


 その瞬間。

 彼の片目に、赤く燃えるような文字がうっすらと浮かび上がった。


翌朝、カナトは目を覚ました。

 リリの鳥籠が開いていることに気づく。中は空だった。羽根が一枚、床に落ちている。涙が止まらなかった。


 だが、リリは死んだわけではなかった。

 その羽根には、小さな熱が宿っていた。手のひらにのせると、じんわりと、太陽のような温かさがあった。


「リリ……」


 その名を、初めて口にした。



それは次の日昼間のことだった。

 父の機嫌が良かった理由は簡単だった。誰かから金を受け取っていたのだ。

 誰か分からない男たちがやってきて、母の遺影を床に落とし、カナトを椅子に縛り付けた。


 スーツを着た男性がカナトの顔を見て、小声で何かを言った。



「関係ねえよ。金さえもらえりゃ」


 父はそう言った。

 カナトはそのとき、痛みよりも言葉が痛かった。

それは夜まで続いた。


 その夜。

 カナトは地下室に連れていかれた。そこで彼は、父の「愛」と向き合うことになる。


 父の片目に、赤黒く浮かぶ文字――「愛」。

 欲望が歪み、怨念が塊となり、父は「災害 愛」に変貌した。


 彼の指先が変形し、血のような触手が伸び、カナトを包もうとする。

 しかし、そのときだった。


 鳥籠が砕けた音がした。


 ――リリが、光を放って戻ってきた。


 羽ばたいたリリの体から、まばゆい光が溢れ出す。

 それは災害「日」の力だった。


 そして、その光を浴びたカナトの片目に

「革命」の文字が浮かぶ。

 今度は、自らの意思で。





 父の災害は“愛”であるがゆえ、愛されなければ力を発揮できない。

 カナトは、それを見抜いた。


「……ねえ、父さん」


 カナトは涙を浮かべながら、言った。


「僕、ずっと、ずっと……父さんに嫌われたかった」


 その言葉に、「愛」という災害が崩れた。

 父の体が裂け、感情の塊が空気中に溶けていく。


 カナトは叫ぶ。


「災害なんて、もういらない! 愛も、支配も、神様もいらない! ぼくは、ぼくの灯りで生きる!」


 その瞬間、革命の力が目覚める。

 リリと共に放った一閃の光が、父の姿黒い霧のように消し去った。




 夜が明ける。リリの姿はどこにもなかった。

 カナトは父の家を出る。焼けた一室から、空の鳥かごと古びたリュックを背負って。

 その手には、父の遺品のひとつ、「記録装置付きの指輪」があった。

 それは、封印された「雨」の制御、災害を助長する軍の存在、そして“古代兵器 四季”の手がかりが記録されていた。


 カナトは思う。


「この世界には、まだ知らない光がある。知らない絶望も、きっと。でも……僕は、行く」



 その背には、小さな革命の灯が、ともっていた。


質問や感想を教えて欲しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ