表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/27

第十四話 決意を新たに、はげみます!

「ありがとう、おじいちゃん、おばあちゃん」


 イア()と共にいていいと(みと)めてもらえて、わたしは、うれしかった。


「良かった。ね、イア太!」

「ああ。だけど、まだ考えるべきことは、あるぜ。ミニシンとの(たたか)い……そして」


「え? ミニシンは全部、千代原(ちよはら)さんが見つけたんじゃ?」

「水そうのぬいぐるみの数が足りない。だろ、連中(れんちゅう)?」


 そんなイア太のするどい声に、千代原さんが反応する。


「今も、わたしたちは探しているが、あと二体、見つかっていない」


 千代原さんは、すわっていたイスから立ち上がり、部屋の中央の水そうに近づく。

 そこに満ちた液体の生成AI(エーアイ)「トランス・ペアレント」の(なか)で、カメやクジラを始めとするミニシンたちが泳いでいる。


「すでに、わたしは、この町を『大人のにおい』で囲った。ミニシンは町から出られない。包囲を少しずつ、せばめれば、いずれ、つかまえられる」


 ついで千代原さんは、ふり向き、わたしと目を合わせる。


「その前に、君がおそわれる可能性もある。ミニシンと戦った思い出が、君の脳に残っているからだ。ミニシンは、それを読み取れる。結果、君は別のミニシンを引き寄せる」

「望むところです! 元々、イア太といっしょにミニシンと戦うつもりだったんです!」


「イア太を君に預けたのは、君が一人でミニシンに対処できるようにするためでもあるが、望むなら、別の安全な場所で君を保護する。護衛をつけてもいい」

「必要ありません。イア太とわたしは、無敵です」

「分かった。無理は、しないでくれ」


 ここで千代原さんは、ちょっとだけ、うつむいた。


「君はイア太と共に、カメ型のミニシンを、どうやって大人しくさせたんだ」

「相手を学んだんです。ミニシンは、学びたい気持ちをおさえられず暴れていたようでした。でも、こちらから相手自身を学べば、サプライズになって満足させてあげられます」


「一人で考えたのか」

「いえ、イア太といっしょに思いついて、実行したことです」

「すごいね」


 千代原さんは、もう一度、水そうのほうに目を向け、ぬいぐるみたちを見つめた。


「わたしは、電流を使ってミニシンたちを強制的に停止させる指示を、回収チームに出していた。それしか、できなかった」


 そう言って千代原さんは、とうめいの上着をひるがえし、この部屋から出ていった。

 が、すぐに帰ってきた。

 写真を三枚、わたしに、わたす。


「二枚は、まだ見つかっていないミニシンの姿。そして、あと一枚が、問題の」


 若い男の人の、はにかんでいる写真。

 それを、千代原さんが指差す。


「かれが――、一度(いちど)イア太をさらい、ミニシンたちを町に()(はな)って研究所から消えた、和屋(わや)だ。見かけたら、にげてくれ」

「きれいな人」


 わたしは、おじいちゃんとおばあちゃんにも和屋の写真を確認してもらった。


「見覚えのない顔だね」


 二人共(ふたりとも)、同じ反応だった。

 でも、わたしとしては、どこかで会ったような気もする。




 そして、わたしとおじいちゃんとおばあちゃんは、研究所をあとにする。

 千代原さんから事情説明は受けた。

 もう、ここでの目的は果たしたのだ。

 研究所をかくす、お城の天守閣――そこから出る。

 車を運転して、千代原さんがわたしたちを(いえ)まで送ってくれた。

 わたしたちは千代原さんに、お礼と、別れのあいさつを伝えた。


「では、生成(せいせい)AI(エーアイ)つかい、今川(いまがわ)天野(あまの)! イア太と共に、はげみます!」

(なん)だ、その『生成AIつかい』というのは」


 首をかしげる千代原さんに、わたしは胸を張って答える。


「わたし、イア太の生成を初めて見たとき、魔法(まほう)みたいだなーって思ったんです。服装も、戦いやすいように変えられますし。今は、とっくに元の格好にもどってますけど」

「はは、それは科学技術のたまものだよ。仕組みが分からなければ、(なん)でも魔法に()えるのさ」

「ですよね、イア太は魔法のつえじゃなくて、生成AIです。わたしも魔法つかいじゃ、ありません」


 イア太をにぎりしめ、マイクに(おと)を――プロンプトをふきこむように、わたしは言う。


「だから、わたしは、『生成AIつかいアマノ』なんです!」

「そうか、イア太との関係も大事(だいじ)だな」


 最後に千代原さんが、ささやく。


「この(さき)(なに)があっても天野(あまの)さんだけは、わたしの孫を信じてやってくれ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ