鉄道会社主催の謎解きイベント、の、正体?
時を同じくして、鉄道会社企画オフィスである。
「いやあ!! 大盛況じゃないか!! やはり『新しい風』を呼び込んでよかったな!」
オフィスでは、キングオブキング Kアイデア6602 の責任者達の高笑いがオフィスに響いていた。
ただでさへ高い山手線の利用率、あとグッズの売り上げ、沿線の商業施設の売り上げは、どのデータを見ても上昇傾向であることは明らかだった。
文句を言うのは、普段から山手線を使っている乗客くらいだろう。小池都知事の計画通り、車両を二階建てにしてよかった。
それだけではなく、海を越えて海外にまで、『山手線』の認知度はより深く広まり、『山手線』をユネスコ文化遺産に! と言う声も広がりつつある。
「これは第二弾をやろう! いっそ使用率が赤字の青梅線でこの企画をやると言うのはどうだろう!? 」
「メーカー(謎解き企画立案者)に、なんとなく根回ししておきます。これは新しい商法になり得ますね」
「君の功績だよ。『難易度の高すぎる謎解き』この発想は正直懐疑的だったけれど、ここまで全世界が熱中するんだったらどんどんやるべきだろう!」
「……? メーカーに依頼したのは課長では……?」
「私? 私ではないよ? …… ……君でもないのか? おいどうするんだ?! 万が一解読者が出て景品を渡さなくてはならなくなったら!」
「全部メーカーに丸投げの状態でして…… 私はてっきり課長が呼び込まれたものかと……」
「なんてことだ……!!」
課長と呼ばれた男からは冷や汗が出ていた。
身元のわからない組織と、いつの間にか結託していたことになる。それも実に巧妙な手段で……
「 何者なのです? 彼らは?」
「…… ……? 知らないよ? 私は……」
企画オフィスに、不穏な沈黙が流れた。
……
……
茂が失踪してから3年が経つ。
彼の貯金は、全て引き下ろされており、役所からは住民票と戸籍が抜かれていた。
あくまで家族に迷惑をかけないつもりだったのだろう。
しかし……パスポートも持たないでどうやって世界中を巡る気なんだろう?
姉である美沙子は自責の念で心が壊れかけたが、最後に見た茂の闘志に満ちた目を思い出して、
あながち間違いでも無かったのかもしれないと振り返った。
この3年の間で、だんだんと 謎解きイベントのことは風化していき、人通りも通常通りになった。
1度だけ、『偽造パスポート所持のアジア人、空港で逃走』と言うニュースが流れて、
茂かもしれないと家族達は期待したが、逮捕されたのは見ず知らずの人間だった。
……ただ逮捕されたのは白人で、アジア人であるという最初の報道からはだいぶ差異があった。
……ある日である。美沙子達の元に『それ』は届いた。
…… …… ……『キング オブ キング アイデアK2 世界編』
今度は航空会社と結託して、全世界を巡って謎を解くと言うイベントだった。
まずは世界5ヵ国特定の場所に向かう必要があるが、
その中にはハワイも含まれていた。
キング オブ キング アイデアK 6602 了