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「ああ、いらいらする!」

「アシーナ、服を脱いで。あと傷の手当しよう」


 アシーナはルーカスと戦いたかったわけではない。

 ロナルドと戦い、力づくで婚約を破棄させるつもりだったのだ。

 だからロナルドがいなくなったところで、戦いは終わった。

 まあ、力づくどころか、ルーカスに手も足もでなかったのだが。

 しなやかな体でまったく筋肉質ではないにも関わらず、ルーカスは強かった。おそらくロナルドはルーカスより強いのだろう。

 二人は寮に戻り、傷の手当てをしようとしていた。傷と言っても擦り傷だけだ。


「なんで、ベルは傷がないの?服も汚れてない!」

「アシーナみたいに投げられてないからね」

「ああ、やっぱりベルのほうが強いんだ。昔は私の方が強かったのに!」

「昔は昔だよ。それよりどうするの?ルーカス様にも勝てないのに、ロナルド様に力づくで婚約解消してもらうのは無理だと思うけど」

「そうだけど。それ以外に方法ないよ。あの人、変だから、嫌われるとか難しそう」

「確かに……」

「どうしよう」


アシーナは頭を抱えるしかなかった。



「ああ、戻ってきた。さすがルーカス」

「アシーナさん、怒ってましたよ」

「そうか。面白い子だね」


 ロナルドとルーカスは寮には住んでいない。

 放課後、お茶のために利用する食堂の一室、伯爵位以上の貴族が使用できる個室で、ロナルドたちはそこで過ごすことが多い。

 今日もそうで、ルーカスがそこに行くとロナルドが優雅にお茶を飲んでいた。


「疲れただろう。そう思って君の好きなチーズケーキを頼んである」

「ありがとうございます」


 椅子を勧められ、ルーカスはロナルドの向かいに座る。

 放課後のこの時間は食堂を利用するものも少なく、静かだった。


「ロナルド。もう解放してあげたらいかがですか?」


 ルーカスはお茶を一口飲むと、そう切り出した。

 アシーナは必死にルーカスに立ち向かってきた。力を受け流す形で、ルーカスは何度か彼女を投げ飛ばしたが、それにもかかわらず彼女は何度も挑んできた。

 そして地面から立ち上がれなくなったら、次はベルだった。

 戦っているうちに、ルーカスは彼女、いや彼の性別を知った。女性的な身のこなし、顔立ち、しかし彼は男だった。

 同時にルーカスは彼の想いを知る。

 アシーナを守るためにこの学校にわざわざ女装までしてきたのだろうと。


「どうして?アシーナはちょうどいい駒だ。なぜ手放さないといけない?それとも君がアシーナの代わりになるつもり?」

「な、何を言っているのですか?」

「私は知ってる。君の本当の名前はルイーザ・フォルナンデ。静養しているなんて嘘なんだろう?ルーカスとルイーザは同一人物」

「何をおっしゃってるのですか?ロナルド」

「君でも動揺するんだね。ほっとしたよ。君は私を好きなんだろう?だから男装までしてずっと私と一緒にいた。それであれば君が私の妻になるかい?」

「ふ、ふざけないでください!」


 ルーカス、ルイーザは心を切り裂かれたような痛みを覚え、立ち上がる。

 ずっと彼女が秘めていた感情、秘密。

 ロナルドはそれを薄笑いを浮かべて暴露した。


「ふざけてないよ。私は君でもアシーナでもどっちでもいい。母上のことは私が説き伏せるし。だって君は私のこと好きだろう?アシーナより御しやすい。気心もしれているし」

「本当にやめてください!」


 ルイーザは溢れそうな涙を堪え、彼に背を向けると部屋から出ていった。


 ずっと、ずっと彼女が秘めていた想い。

 大切な想いだったのに、ロナルド本人によって踏みにじられた気分だった。



「方法はあるよ。アシーナ」


 がっくり項垂れているアシーナにベルが声をかけた。 

 傷の手当は終わり、アシーナも着替えを済ませている。

 ベルはまだ制服のままだった。


「ルーカス様に頼んでみよう」

「は?どういうこと?」

「ルーカス様はロナルド様を好きだと思う。だから、婚約解消したいアシーナに協力してくれるかもしれない」

「え?ルーカス様がロナルド様を好き?でも、友達だから好きなのは当然で、私に協力してくれるわけがないよ。だから、ルーカス様は私たちと戦ったんでしょ?」


 アシーナは同性同士の恋愛については全く知識がない。

 森では男女が結婚、交際するのが普通だったから。

 だからそういう恋愛関係があるなど知らなかった。

 ベルも当然、同じ思考だ。


「アシーナ。ルーカス様は女性なんだ」

「はあ?うそ。だってあんなに背が高くてかっこいいのに!」

「それでもだ」


 ベルはアシーナの言葉に少しだけむっとして答える。

 現状ベルの身長はアシーナと同じくらいで、ベルのほうが女性的な顔をしている。とても男性的でかっこいいという部類ではないことをベルは理解していた。


「多分、向こうもわかったんじゃないかな。僕が男だって」

「それってまずいよ」

「まずくないって。僕のことをばらしたら、僕が彼女のことをばらすのを知ってる。だから」

「だからルーカス様を脅すつもり?」

「違う、違う。ルーカス様の恋路を応援して、二人をくっつける。そうすればアシーナとの婚約は解消される。いい考えでしょ?」

「うん。ベル、頭いい」

「ありがとう」


 ベルはアシーナに褒められて得意げに微笑む。

 しかしベルは知らなかった。

 ロナルドによってルーカスの秘密が暴露されて、二人の関係に亀裂がはいっていることを。




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