告白未遂
「だってあれは、“キャラ”なんでしょう?」
暫の沈黙の後、彼女はふと、そう言った。
辺りは静寂に包まれていて、彼女のその言葉がやけに、はっきりと聞こえた。
僕は言葉に困り、唯、沈黙を続ける。
彼女も口を開く気はないらしく、ただ僕を真っ直ぐ見つめていた。
世界は今も赤く染まっている。
風の音さえ無く、そこには世界が広がっていた。
彼女はまだ赤い顔でこちらを見つめている。
僕もまだ口を閉ざしている。
頭から、全てが消えている気がした。
ふと、一羽のカラスの鳴き声が響いた。
世界が、消えた。
僕は慌てて口を開いた。
「ありがとう」
彼女はその言葉を聞いて、優しく微笑んだ。
そして一言、こう言った。
「ごめんなさい」
僕はその彼女の言葉の意味を知っていながら、さして悲しみはしなかった。
世界はもう、赤くはなかった。
「あれは、“キャラ”だったよ」
僕は最後にそう言って、悲しく微笑んだ。