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アーク・ロスト・ワールド  作者: 江本平
第二章 誓った言葉を胸に抱いて
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プロローグ:幽らめく足取り

第二章、はーじまーるよー



 コツコツと、裏路地に靴音が響く。ボロ布を纏った『鬼』が、手に持つ刀を(ひるがえ)す。


「ハァー……」


「ま……待て……!やめろ!」


 『鬼』の目の前には尻餅をつく男の姿がある。その様は見て分かるように命乞いをしている。


「か、金ならあるんだ!いくらでもくれてやる!だから……っ!」


「その金は、人を貶めて稼いだものだろう」


 『鬼』が怒気を強める。


「お前も、俺が殺してきた奴らの同類だ」


「ヒィッ!」


 上擦った男の悲鳴が路地に反響する。

 そもそも、金に(なび)くような人物がボロ布を纏い、ヨレヨレの服と靴に身を通すだろうか。顔には怨嗟(えんさ)の念が刻まれている。


「死ね」


 端的なその言葉は、しかしそれだけで完結する。『鬼』の誓った言葉がその誓い通りに完遂され、一歩――――気の遠くなるような先にある目的へと、一歩だけ進んだ。


 ゴロリと地面に落ちた男の首と泣き別れになった体は、その内誰かが処分(活用)するだろう。そんなこの国の有り方を『鬼』は憎む。


「チッ」


 刀に付いた血を払いながら、『鬼』は小さく舌打ちする。その刀もボロボロだ。(つか)にはささくれた紐が巻き付けられ、(つば)は割れている。しかし刃の切れ味には一切の陰りがない。俗に言う、妖刀である。


「マノガスト……の、端の方だったな。西の端……」


 刀を鞘に収めながら呟く。次の目的地と、次なる一歩を進むために。


「そこに、お前はいるのか?テレス」


 目を瞑った『鬼』が呼ぶものは、もはや思い出の中の残骸だ。まだ平和だった、全てがぶち壊される前の――――


 少しだけ、寄り道を。諦めることなどできないから。可能性があるなら、『鬼』はそれを拾い上げる。


「……どのみち全部殺す。ゴミ(・・)も――――邪魔する奴も」


 その足取りは、ふらふら、ふらふらと。

第二章 誓った言葉を胸に抱いて

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