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アーク・ロスト・ワールド  作者: 江本平
第一章 繋ぎ紡ぐは継承の証
51/89

「欲張っていこうぜ」

済(2022.10.24)


◇ エルム


 『昇杖』ラヴェルダーナ。

 かつての――――およそ400年前の英雄が振るった杖。「とされる」ではなく、これは正史だ。裏は取れている。

 500年程前の、説明すらも億劫になるような動乱の時代より少し後。『初代聖託』(サマ)と同時代の代物だ。そんな昔のことなど知ったことではないが、主にジジイのせいで裏事情にまで詳しくなってしまった。


 話を『昇杖』に戻そう。この杖が、他とどう違うのか。魔術の発動が楽になるとか、自身のマナを使わなくていいとか、そんなものではない。


 威力の上昇。

 それ一点に尽きる。


 燃費の悪さと精神的負担などのデメリットを抱えた上で、だ。もっとも、俺にとってそれはデメリットにはなり得ない。


 俺は左目を閉じて眼下のロイデバンを眺める。開いたままの右目には、引き上げた知覚によって相変わらず止まったように見える世界が。閉じた左目では、それとは違う()で『世界』を認識する。反転しているように黒く見え、マナの流れも捉えることができる。



 そもそも、魔術とは何か。

 それを説明するには、まずマナについて語らなければならない。



 上空でロイデバンを見下ろす俺は、100を越える魔術を同時に展開する。と言っても、全て違う魔術ではない。いくつかは同じものではあるのだが。それら全てが『昇杖』の強化を受けている。



 マナとは、大気もしくは物質など、この世に存在するものが必ずと言っていいほど備えているものである。一部例外もあるが当然生き物にも備わっており、人間もその範囲内である。



 俺は体内で荒れ狂うマナを制御し、魔術一つ一つに意識を集中させる。ここまでの思考が出来るのは、ひとえに俺の【アーク】のおかげなのだが、それはひとまずおいておこう。



 超自然の現象を操るためには、マナは必要不可欠だ。この世界の人間は誰しも感覚的にマナを使っている。俺も半分は無意識だ。



 俺は魔術の内の一部をロイデバンへと向けながら、自らも前に出る。馬鹿正直に真正面から攻めるつもりはない。俺はロイデバンの背後へと転移する。


「降りて来んのではなかったか」


「信じる方が悪い」


「ハハハッ、それもまた道理」


 ロイデバンは展開した壁で魔術を防ぎつつ、俺へと向き直る。幾つもの閃光が迸るこの戦場には、安全な場所などない。ロイデバンの背後の壁も、全てを防げるわけではない。


「《ブレード》」


 俺は杖にマナを纏い、剣に見立てて応戦する。試したいことがある。その伏線だ。そのための接近。



 ところで、マナには許容量がある。これを越えるほどに摂取してしまえば、体を蝕んだり、造り変えたり、最悪の場合には命を落とす。しかしそういったことは滅多にない。



「随分と剣も使える!異様な共存だなぁ!」


「おいおい、誰に教わったか……お前もよく知っているだろう?」


「フッハッハッ!アーサーかぁ!」


 地面に展開した魔法陣から光が漏れ出る。上空からは雷雨が降り注ぎ、かと思えば、炎によってすぐに霧となる。

 それに隠れて次の瞬間には魔法陣から冷気が立ち込め、先ほどまでの熱気を搔き消す。辺りは氷に覆われた。


 目まぐるしく変わる戦局の中、俺は風に乗って勢いをつけたまま、ロイデバンに斬りかかる。

 しかし、奴の壁に防がれてしまった。その感傷に浸る暇もなく、俺は状況を再度動かす。


 地面を覆ったまま槍を型どった氷と、その氷を突き破って下から生えてきた岩塊が、ロイデバンに殺到する。

 俺は再度風の魔術で体を押し、ロイデバンへと接近する。今度は氷上を滑るように加速した。


「残念、こっちだデカブツ」


 俺の顔の前に突き出された掌が空を切る。魔術で転移した俺はロイデバンの背後から首を目掛けて杖を振るも、硬い感触が返ってくる。結界に防がれた。

 後ろ向きに手を突き出してきたロイデバンから再度転移して距離を取る。


「ちょこまかと……」


 ロイデバンに捕まるわけにはいかない。かといって、猶予を与えるつもりもない。俺はすかさず魔術を叩き込む。

 炎が地面の氷を融かし、一瞬にして蒸気となった。


「【幻界】」


 ロイデバンが消える。攻撃を透かしたか。



 さて、マナの許容量の話だったか。

 俺にはこれがない。よって、大気中のマナを無制限に取り込むことも出来る。これには体質が大きく関わっているのだが、その話も今はおいておこう。

 一つ言えることは、そのおかげで魔術を多く撃てるし、『無限』のニアなんて呼ばれるハメになったってことだ。



(さて、そろそろか……)


 普段からこれだけの情報量を処理してくれば、並列思考も自然と身に付く。体と脳の一部分は戦闘に割きつつ、俺はもう一つのことについて考える。ロイデバンの揺らぎについてだ。


 ロイデバンには、恐らく攻撃が通用しない。いや、その言い方には少し語弊があるか。

 正確には、こちらの土俵に引きずり込まなければならない、といったところだろう。


 つい先ほども空間ごと体を歪ませたのだが、気にした風ではなかった。

 あのまま捻り切れればよかったのだが、あれ以上は動かなかった。実に破るのが難解なことだ。


「そーゆーわけで……偉大なくそったれ先達にお願いがあります」


 俺は突き出されたロイデバンの右手首を掴む。ロイデバンの手首は太く、俺の手では握り潰すことができない。

 お返しをしてやろうと思い杖を突き立てるも、ロイデバンの手首には刺さらない。だが、目的はそれではないので問題はない。


「てめえの『世界』……俺によこせ」


 俺は自らの【アーク】を起動する。この時の俺は獰猛な笑みを浮かべていたことだろう。

 だが、欲張りで何が悪い。


「【掌握】」



 俺の【アーク】――――【掌握】。その能力を簡単に言うと、制御と認識、そして干渉である。マナはもちろんのこと、空間認識もお手の物だ。

 では、どこまで認識した上で、どこまで制御出来、どこまで奪える(・・・)のだろうか。それを今から実演しよう。



 俺はロイデバンの【アーク】に干渉する。

 まず最初に幻視したのは、底なしの『黒』だった。こちらが呑まれかねないような漆黒である。気を抜けば狂ってしまいそうな程の。

 俺はその中から目的のモノを探す。


(気持ち悪いな……二度とやりたくねえ)


 その『黒』に、『白』が落としこまれる。

 一滴の白い雫が泥沼に落とされるように。水に絵の具を落とした時のように。


 消えない幻はない。


「ようこそ。こっち側へ」


「ほう……」


 俺の閉じた左目が、ロイデバンを再認識する。今までの曖昧な雰囲気ではなく、しっかりとした輪郭まで視える。


「《フレクトル》――――十六重(ジ・オクタ)


 俺はロイデバンの周りに魔法陣を展開する。地面だけではなく、空中にもだ。逃がすつもりはない。


「ありがとな、■■。安心して食らえ。そして死ね」


 俺は感謝を告げつつ、口元に笑みを浮かべる。放つのは極大の魔術。

 対象を、その座標ごと切り取り、消滅させる。



「《ゼクタ》」



 直後、大爆発が起こり、大気が歪んだ。

 あとがきという名の捕捉、別に読み飛ばしてもいいやつ


その1.

 至近距離をチョロチョロしながら攻撃が当たりそうになったら背後に瞬間移動して360度全方位から高威力の魔術を叩き込んできて回避手段を乗っ取ってくるような害悪戦法を使うような奴がいるわけないじゃないですかやだなぁ~

 一般的な魔術師が5[MP/s](1秒ごとに威力5の魔術を撃てるとする)のところをエルムは 25[MP/ms(ミリセック)] とか 5[MP/ns(ナノセック)] 位のことを余裕でやってくる。ただただ物量が多いからここまで差が顕著ってわけではないけど。いずれにせよバグ野郎。


その2.

 ロイデバンは特定条件下じゃないとダメージを与えられないタイプのボスキャラ。常時スーパーアーマーつけてるようなもの。

 それと、ロイデバンの【アーク】の名前は【幻界(げんかい)】。もともと【幻界】で攻撃を透かして【現界】でその状態を解除するというもの――――だったはずだが、いろいろありすぎたせいでスキルツリー開拓しまくっている。500年前はヤバかったんだよ……


その3.

 1=モノ

 2=ジ

  ・

  ・

  ・

 6=ヘキサ

 7=セプタ(ヘプタ)

 8=オクタ

  ・

  ・

  ・

 16=ヘキサデカ 


 なのですが、語呂が悪いので2×8=16としています。だから十六重(ジ・オクタ)。ヘキサデカ君には消えてもらいます。

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