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アーク・ロスト・ワールド  作者: 江本平
第一章 繋ぎ紡ぐは継承の証
45/89

不滅の誓い、ルールさえも搔き消して

済(2022.10.14)



 リュウゴに飛ばされたリノは、土煙をあげながら地面に落ちた。落ちてなお地面を滑り、体の表面にはいくつもの擦り傷がある。


「ッ!」


「無事か?お嬢」


 もうもうと上がる土煙の中から、リノの姿がちらちらと見える。いまだに纏った雷が光るのが見えるのだ。


「うん、だいじょーぶ」


 顔についた血と砂を手の甲で拭いながら、リノが答えた。その表情は笑っていて、自らのダメージなど知らないといった様子だ。


「……」


 そんなリノの姿に思うところが無いわけでは無いが、ジーンは黙認する。そもそも自分にとやかく言う資格は無い、と。罪人である身で、流れるままにただ頼まれただけの身で、リノを拘束する事は出来ない、と。

 ジーンも大概不器用な男である。



 ソフィアが心配するのは、リュウゴのことだ。遠目に見ていたので正確に分かるわけではないが、人影は見えていた。

 一筋の光から離れた人影と、一拍置いて斜め下から現れた人影。状況から考えて、前者がリノで、後者がリュウゴだ。


 その片割れであるリノが地面に落ちて、もう片方のリュウゴはいったい何をしているのかと言うと……


 空から降ってきた剣が、地面に刺さった。

 その後少し遅れて、つま先で剣の柄尻にフワリと立つ男。接地点からは波紋が広がっている。


 その様は、まるで神々しくも禍々しい悪魔がやって来たようで……


「グルルル……」


 ジーンの喉が鳴る。口元は歪み、全身の毛が逆立つ。


「よおイヌ。次はてめえがやるか?」


 剣の上に立ったままで、リュウゴがジーンを見下す。剣の分を合わせてなお両者の目線は同じくらいなのだが、それでもリュウゴが見下しているように見えるのは気のせいではないだろう。


 一触即発の空気の中、両者は睨み合っていた。





◇ リュウゴ


 さて、実質リノは倒したようなものだが、まだまだやる気満々だ。それにジーンも加わった。

 こいつらどんだけ戦闘狂なんだよ。まあ、あんにゃろうの部下ならそんなものか。


「なあソフィア、あいつらやっぱ狂人じゃね?」


「……あなたの方がよっぽどよ」


「ハハッ、失礼だな。俺は趣味人だ」


 自分の好奇心の赴くままに人生を謳歌する。俺にはその生き方が合っている。


 しかし……まだ少し固いが軽口を叩けるほどには落ち着いているようだ。短期間で死線を味わうとこうなるものだろうか。

 残念ながらそれは分からないが、ソフィアはルーンを庇うような行動を取っている。それ自体は素直に評価しよう。


 当のルーンはと言うと……怯えている。いや、体が震えているだけだろう。表情と微妙にマッチしない。

 あれは、何故か震える体そのものに恐怖を感じているように見える。現にリノとジーンの一挙一動にはそこまで反応していない。逆にソフィアはそこに敏感だ。


 ともあれ、これはルーンの無くした記憶と関係しているのだろう。いずれそれについても考えなければいけないのだが、今は別のことだ。

 今俺がするべきことは……


「おいお前ら。二人同時にかかってこいよ」


 不安を取り除く。


「どうする?ジー」


「どっちでも」


 リノとジーンは話し合いをする。と言っても、ひどく短いものだが。長年の信頼ってのはいいね。


「大丈夫なの……?」


「だいじょーぶだいじょーぶ。もうぜーんぜん」


 ソフィアの心配は杞憂だ。なぜなら俺は……


「いいこと教えてやる。俺は死なねえんだよ」


 別にアンデッドのように不死身という意味ではない。ただ、心の在り方だ。


「ほらルーンも……笑え」


「あ……」


 俺は笑顔でそう告げた。


 笑顔は人を幸せにすると言うが、もっともである。人生は楽しんでなんぼだ。

 笑えないのは……そうだな、復讐くらいでいい。



 だからこそ俺は、今も口元に笑みを浮かべる。

 さあ、嗤おうぜ?


「くたばれ限界。そんなものはくそくらえだ」


 地面に降り立ち、俺は剣を構えながらそう言い放った。


 俺の足元からは白い奔流と波紋が溢れる。

 服もはためき、髪は風になびく。


「【限界叛逆(アンチリミテッド):魂の残滓(ソウルレミナント)】」


 ただの限界への【叛逆】ならば、さっきもリノに対してやった。純粋な身体能力の向上、そして知覚速度の引き上げ。

 だが、これはそれらにもうワンアクセント(・・・・・・・)


 俺は白い奔流を纏いながら、リノとジーンに言葉をかける。


「ほら、来いよ」


 弧を描いた俺の口から出た誘いへの返答は……


蓮閃(はすひらき)


 ジーンの斬撃であった。つまり、肯定である。


「ッシャァ!」


 横一文字にこちらへと向かってくる斬撃を剣で受け、搔き消す。

 しかし、背後にはすでにリノの姿が。当然、把握している。


 リノの爪がものすごい速さで迫ってくるが、今や俺も同等のスピードだ。手首を掴み、流れるようにジーンの方へと投げる。


「おいおいこんなもんかぁ?」


「むむ……」


「熱くなりすぎるな、お嬢」


 俺のするべきことは、ソフィアとルーンの不安を取り除くこと。

 あんにゃろうを追いかけるとかツナギを待つとかいろいろあるけど、とにかく今はそれだ。


 不安を取り除くと言っても、具体的な方向性は曖昧だ。いろんな手段がある。

 そこで今回俺は、強さを示すことにする。俺がいる限り安全だと言うことだ。


 つまり、不安を取り除く。

 言い換えると、俺の方が強いから大丈夫。

 さらに言い換えて……


「さあ、蹂躙だ♡」

「蹂躙だ♡」とか言っちゃう真性のヴィラン(主人公)

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