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アーク・ロスト・ワールド  作者: 江本平
第一章 繋ぎ紡ぐは継承の証
43/89

バリバリ捨て身特効

済(2022.10.13)


◇ ツナギ


「ハッ」


 気が付くと、不思議な空間にいた。どこまでも繋がっているようで、それでいてすぐそこに出口がある様な感覚だ。


「ッ!」


「何をしている。着いてこい、ツナギ」


 俺の目の前に、翼をはためかせるグレンの姿があった。


 炎の継承。そのために、さらに強くなるために、俺は今ここにいる。だが、すぐに戻らなければならなくなった。その理由が、たった今できた。


「グレン!出口はどこにある!?」


「……戻る気か?」


 俺の問いに、グレンも問いで返した。


「ああ。アイツがいる。目の前にいたんだ……!」


「ならば尚更前へ進め」


「どういうことだ……?」


 要領を得ないグレンの受け答えに、僅かながらに苛つく。

 気が立っている。そう、殺気立っているのだ。


「リュウゴがいる。奴はとやかく言っても、やるべき時はやる奴だ」


「でも一人じゃ……」


「それも含めて上手く立ち回るさ、奴は」


 知っている。

 そういったリュウゴのことに関しては、グレンよりも俺の方が理解は深いだろう。だからこそ、これ以上の説明は不要だった。


「それに、今のまま戻ってどうする。何も変わらんぞ」


「……ッ……ああ、分かった」


 もう、一旦忘れよう。

 今、目の前のことに集中するのだ。アイツのことは一度考えないようにしよう。

 天を仰ぎ、表情を切り替えて、グレンに向き直る。


「やるぞ。最速で終わらせる」


「フン」


 俺の心持ちに納得したらしいグレンが、目の前に扉を出現させる。その扉は、奥から紅い光を漏らしながらゆっくりと開いていく。


「こういうの、なんて言うんだっけな……」


 俺の中の黒い感情が、目の前の紅い光に呼応するように高鳴る。冷静だが、どこか上の空といった感覚だ。不思議と嫌悪感はない。


「ああそうだ。RTAだ」


 リュウゴがよく口にする言葉を、俺も口にする。ただ、何かを呟いてみたかっただけかもしれない。


 俺の瞳は、爛々と紅く輝いていた。





◇ リュウゴ


 なんだか今すごく尊敬された気がする。


「えいっ」


 その可愛らしい掛け声からは想像できない様な速さと鋭さを以て、こちらの命を刈り取らんとリノの爪が迫る。


「りゃりゃりゃりゃりゃっ」


 その連続性も脅威だ。剣が一本のままなら対応しきれなかったかもしれない。


 二本の剣で攻撃を防ぐ。

 距離を離したリノに剣の投擲。

 あらかじめ大樹に刺しておいた剣を手に取り、再び双剣へ。


 さっきからこのルーチンの繰り返しだ。剣の投擲に関しては、投げてから落ちてくる場所まで計算しないといけない。


 非常にめんどくさいのだが、それもこれもリノに猶予を与えるわけにはいかないからだ。あれだけ激しく動き回っていれば、それだけ消耗も早くなる。

 表情の変化は分かりづらいが、確実に息は上がっている。後は地上に戻って倒すだけなのだが……


「アハッ」


 この猫女、ここにきて厄介さが増してきた。攻撃にフェイントを絡めたり、動きに緩急をつけたり。追い詰めると行動パターンが変わるなんて、本当に厄介だ。


「ねえ?さっきつまんないって言ったよね?」


 つまらないと言った覚えはないが、似た様なことを言った気はする。自分の発言に自覚がないのはあまりよろしくないが、今さら生き方を顧みようとは思わない。


「ヒヒッ」


 リノが両手で俺の剣を一本ずつ掴む。指の力だけで抑えられた。


「ハァッ!」


 伸びた俺の腕目掛けて、リノが足を伸ばす。俺の剣を指で挟んだところを起点として、体ごと前に持ってくるほどの勢いだ。


「ム」


 攻撃がクリーンヒットすると、腕の骨を折られていただろう。俺はとっさに両方とも剣から手を離す。


(まだまだもっと……速さが足りない!)


 リノは、俺の行動を見てからその後の行動を変えた。剣を後ろに放り、伸ばした足を勢いそのまま真下に叩きつける。どうやらその足で踏ん張ってこっちに突っ込んでくるようだ。


(私はもっと、できるはず!!)


 心なしかリノの速度が上がった気がする。気付けば、リノはもうすでに飛びかかるためのタメ(・・)が終わっている。



 ここで状況を整理しよう。こちらは無手。相手は溜めが終わって今にも飛びかかって来そうです。


 さて、どうする?


 準備してねぇんだよ。おとなしく受け流すんだよくそったれ。



 せめてもの抵抗に、空気抵抗に【叛逆】。そして、背後に何もない場所と重なるように身を投げ出す。途中で枝に叩きつけられて、背中を強打するのはもう御免だ。


白爪(シロツメ)ッ!」


 ギリギリで見えはしたが、体を射線から外す程には動けなかった。

 前へ突き出されたリノの二本の腕をドンピシャで掴み、爪が体に当たらないようにするので精一杯だった。思わず笑みがこぼれる。


「来んならここだろ!がら空き胴体!」


 来る場所が分かっているなら、後はタイミングだけに気を遣えばいい。


 もしかしたら、俺たちの様子を見ていたソフィアたちからなら、大樹の半ばほどから現れた光の――――雷の軌跡が見えたかもしれない。

 その方向はきっと滝の方へ向いているだろう。



(しょうがねぇなぁ!ちょっとだけ本気出すか!)



 直後、滝が縦に割れた。落ちる水が中央で裂け、岩肌があらわになっている。滝を落ちる水は、丁度半ばから二又に分かれた。


 その裂け目に沿うように、剣筋一つ。

 真っ赤に裂けた、にやけ面一つ。

 リノが剣を指で摘まんでから滝が割れるまで、この間約3秒。

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