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アーク・ロスト・ワールド  作者: 江本平
第一章 繋ぎ紡ぐは継承の証
35/89

重なる、交わる

済(2022.10.03)


◇ ツナギ


「この子がかわいそうでしょ!!」


「まあいいじゃねぇか。無事だったんだし」


「でも気を失ってるじゃない!」


 話題に上がるのは、ついさっきリュウゴが助けた少年のことだ。しかしその救い方に問題があった。ソフィアが追及するのはその事についてだ。

 しかし諦めろソフィアよ。こいつは人の意見は滅多に聞かない。


「んなことより……ソフィア、体拭いてやれ」


 そう言うとリュウゴは、背中に背負った少年を地面に下ろした。さっきまでそのまま湖の中にいたのだ。髪も服も濡れ、肌にはいくつもの水滴が見える。今も額を水が流れたところだ。


「そんなことって……ああそういうこと。分かったわ」


 リュウゴがペンダントからタオルを数枚取り出す。ちなみに、現在位置は簡易テントの中だ。この湖の側まで来た時、最初に設置しておいたのだ。


「焼き鳥は……チッ、使えねぇ」


 グレンを一瞥したリュウゴであったが、グレンは眠ったままだ。次に起きるのはいつになることやら。


「仕事だツナギ。火ぃ起こせ」


『はいはい』


 さて、まずは薪を集めて来ようか。テントを出た俺たちは体を入れ替え、近くに落ちている木の枝を集め始めた。






 夜になった。背中はもうすっかり乾き、特にする事のない俺はパチパチとはぜる焚き火を見ていた。頭上には簡易的な物干し竿にかけられた少年の服がある。それらももう随分と水滴が落ちて来ていない。そろそろ乾いた頃合いだろうか。

 ソフィアはさっきからずっと少年の方を見ている。自分も疲れているだろうに、食事の時でさえ気にかけていた。どこかの誰かさんとは大違いだ。お前のことだよ、リュウゴ。


「う~ん……揺れる……」


『何かあったか?』


 少年の発した声に、リュウゴが反応した。


「寝てたんじゃなかったのかよ」


『フラグが立った音がしたんだよ。もうこうバッ!って』


 なるほど意味が分からない。もっとも、それは今に始まったことではないので無視するに限るが。

 ソフィアの意識がさらに少年の方に傾いたようだ。これまでも寝言を言うことは何度かあったのだが、果たして今回はどうだろう。


「おいしい……あれ?ここどこ?」


「よかった、起きたのね!?」


 ソフィアの顔がほころぶ。少年の緑の瞳がソフィアを見据える。少年に駆け寄ったソフィアは、その肩を揺らしながら心配の言葉を投げ掛ける。


「大丈夫?どこも痛くない?苦しくない?」


「あぅ、わー、だいじょーぶ」


 頭をガックンガックン揺らされながらも少年が答える。また目が回ったんじゃなかろうか。ソフィアも人のことを言えないのかもしれない。


「よかったー」


「ねえ、お姉ちゃんたちだれ?」


 抱きついたソフィアに少年が質問する。それに対し、ソフィアはまず自分の名前から教えた。


「私はソフィア。よろしくね」


「ソヒ……ソフィ……、ソフィ姉!」


「……」


 「ソフィ姉」呼びに、どうやら固まってしまったようだ。自分の名前を告げた直後の顔そのままで、ソフィアは少年を見詰める。そして……


「ど……どうしよう……私……お姉ちゃんになっちゃった……」


 頬を染めながらこちらを振り返ってきた。その顔には見覚えがある。悪意がない時のリュウゴの顔に似ている。こういうのをたしか純粋って言うんだっけ?


「どうしたの?ソフィ姉」


「な……何でもないわ。全部お姉ちゃんに任せなさい?」


 首をかしげた少年を今度は後ろから抱きしめる。それに一瞬だけ戸惑いを見せたものの、少年はすぐに体重を預けた。なんとも微笑ましい光景だ。


「ん?」


 別にそのままでもよかったのだが、少年と目が合ってしまった。ならば俺も自己紹介といこう。


「俺はツナギだ。よろしく」


「ツナギ……あ、グルグルの人!」


「それはちょっと違うわよ……」


 グルグルの人って……まあ間違いではないのだが。ある程度は仕方ないとは言え、リュウゴの言動が俺のものだと誤解されるのはいかがなものか。最近はすごく積極的に擦り付けようとしてきている気がする。


「……え~っと……名前聞いてもいいかしら?」


「名前?」


「そう、名前」


 ソフィアはあれをやったのがリュウゴだと知っている。だから俺を擁護してくれたのだろうか?

 それはそれとして、確かに名前は気になる。今までずっと頭の中で少年と呼んでいたが、名前で呼んだ方がよっぽどいい。


「ルーン……」


 少年……ルーンが口を開く。


「名前はルーンだって言ってた」


「そう、いい名前ね」


 ソフィアが薄く微笑みを浮かべる。ルーンはそれに何かを重ねたようで……


『よし。じゃあルーン。これから俺のことはリュウゴ兄ちゃんと呼べ』


 その空気をリュウゴがぶち壊した。これだからこいつは……


「えっ?声?どこから?」


 ルーンが見えない(・・・・)人物をキョロキョロと探す。しかし辺りに人影は見当たらない。それもそのはずだ。だってこいつ、俺にしか見えないのだから。


『オラ代われ代われ』


 うーん……ま、いっか。

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