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アーク・ロスト・ワールド  作者: 江本平
第一章 繋ぎ紡ぐは継承の証
30/89

命を賭けたデバッグ作業

済(2022.08.23)


◇ リュウゴ


 ボンッともジュワッともつかない音がして、水蒸気爆発って本当にあるんだな、と思いました。


 グレンがゲイオウの群れを燃やし尽くした炎。どういうわけか、それが剣に纏わりついたのだ。

 それを鎮火しようと滝の側まで来てみたものの、水の中に入れても全然消えない。それどころかこちらがダメージを受ける始末だ。そんなこんなで最終的に滝壺にぶん投げさせて放置した。


『おいコラ焼き鳥ぃ……あの火、ヤバイやつじゃねえか』


 翼を広げてこちらへと羽ばたいてくるグレンに対して、俺はまず恨み言から入る。


「もー……まずはお礼でしょ?ありがとう、グレン。助かったよ」


「……ああ」


 渦中の人―――じゃなくて鳥なのだが、当のグレンはどこか呆然としている。頭の中がからっぽにでもなったのか?鳥だけに。


『で、ありゃ何だ』


「どの事だ?」


『剣の炎だよ。消し炭になるのは百歩譲ってまだ分かる。けど纏うってのはまた別だろ』


 主にマンガやゲームから得た俺の経験則だと、別の力が働いた、というのが最も有力だ。もう一つの別の要素というわけだ。そして、おそらくあの炎の能力自体は猿共(ゲイオウ)を消し炭にした方だろう。温度はこの際気にしない。さて、あとは何があるか……


「それはツナギだろう」


「えっ?僕知らない」


 なんと、ウチの坊っちゃんの覚醒だったか。うん、別にあり得なくもない展開だ。むしろ熱い。


「【アーク】と呼ばれる力がある。おそらくそれだろう」


『へえ?物知りなんだな』


「かつての我が得た知識だ」


 これまた気になることを……


 グレンから聞くところによると、【アーク】は先天的に持っている場合と、後天的に宿る場合があるという。ツナギはおそらく前者だと、グレンは言う。ただ、今まで気がつかなかっただけで。


『ところでグレンさんや。森の出口は知っておるかね?』


「……歩けばいつかは辿り着く」


『じゃなくて目印』


「そこの川に沿って進め。いずれは外へと行き着く」


 うん、こいつはあれだな。ドンピシャの質問じゃないと答えないやつだ。知らない単語が出てくると諦めるタイプだな。融通の利かない奴め。

 滝から落ちた水の流れる川は、森の外まで流れるようだ。森を出た後は近くの村の人間にでも道を聞けばいいだろう。


『何日かかる?』


「我ならば半日とかからぬ」


 それは空を飛んでってことだな。オーケー表に出ろ。お前に思いやりってのを教えてやるよ。


 しかし、空を飛んで半日……二日分ぐらい見積もっておけば十分か?今日で家を出てから五日目。食糧の貯蔵は十分だ。進行方向の目処はたった。


 …………………………


『よし、ツナギ。修行編だ』


「なんで?」


『任せとけって。度肝抜いてやろうぜ?』







 二日間、トライアンドエラーの精神で実験を繰り返していくつか分かったことがある。【アーク】は運ゲーのクソゲーだ。死にかけないと使おうとも思わなかっただろう。少なくとも俺はそんなこと知らなかった。

 ……順を追って話そうか。






◇ 


『なんとなく傾向がつかめてきたな……』


 これはツナギの【アーク】を模索していた時の記憶だ。ツナギが持つ剣の周りには、弱々しく風が纏われている。今にも消えてしまいそうだ。


「やっぱり魔術っぽいね」


 何度も実験を繰り返すと、おのずと答えは見えてくる。今回は、『纏う』ということに重点をおいてみた。具体的に言うと、何が対象で何が対象外なのかを調べたわけだ。

 グレンの炎を纏えることは分かった。そして実験を続け……


『これを、【エンチャント】と名付けよう』


 対象は、魔術であった。付与魔術―――つまりエンチャントだ。自分のネーミングセンスが恐ろしい。ドンピシャすぎる。

 他にもいろいろ試したが、失敗に終わったのだ。うん、そりゃ景色を纏うなんて出来ないよな。透明な剣とかロマンに溢れてるのに……。どうやら概念系ではなかったようだ。


「ハァ……ハァ……あ~疲れた~」


 剣の周りを渦巻いていた風が霧散する。ツナギがその場に寝転がり、大の字になって愚痴をこぼす。


「う~ん……魔術苦手だなぁ」


 それもそのはずだ。今まで完全物理だったのに、特性を生かすためにはMPいりますなんて急に言われたら俺はキャラメイクからやり直す。


 俺が魔法を使いたい一心で恥を忍んでエルムに頼み込んだのに適正ゼロでしたって言われた時は本気で奴をぶっ殺してやろうかと思った。

 ツナギが稚拙ながらも使ったのは、その時の名残だ。いいな、うらやましい。


 さて、ツナギの把握は終えた。次は俺の番だ。

 崖の上から落ちた時、俺は空中で止まった。あの時は分かりずらかったが、今考えてみると、水面には波紋が広がっていなかった。ならば、俺が見た波紋はいったい何だったのだろうか……


 個人的には時止め系なんじゃないかと考えている。いいね、夢が膨らむ。


『ほれ、今日はもう寝ろ。明日は俺の分な?』


「はーい……」


 返事にあまり元気がない。疲れているのだろう。


 あー明日が楽しみだなぁー。

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