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アーク・ロスト・ワールド  作者: 江本平
第一章 繋ぎ紡ぐは継承の証
3/89

親愛なる我が半身様へ

ここからやっと始まります。


(はい、どうも皆さんこんにちは。もしくはおはようございます?それともこんばんは?まあいいや。天野龍吾です。いろいろあって異世界に来ました)


 カンカンという、木と木がぶつかり合う音がする。木剣で打ち合っているのは薄い桃色の髪の少年(・・・・・・・・・)と、いかにも和という羽織を着た白髪の老人だ。


(いやぁ、目潰しされて不意打ちで連れて来られるのはちょっとね……)


 少年が踏み込んで木剣を振るも、老人は最小限の動きでそれを避ける。そして隙ができた少年の脇腹目掛けて突きを放つも、少年は木剣の腹でそれを受け止める。


(そもそも俺はゲームがしたかったのに……異世界転生だってロマンだよ?でもさ、せめて1週間……最低でも3日は待って欲しかった。いや、3日じゃ足りないな。1週間でも。やっぱ1ヶ月はいる。じゃないとやり込めない)


 少年の木剣からミシリと嫌な音が鳴る。それでも少年は攻めの姿勢を崩さない。足払いを仕掛けるも、老人はそれをバックステップで回避する。老いているのが疑わしくなるほどの素早い動きだ。

 そして両者の距離が開く。


(つまり俺が何を言いたいかっていうのは、あの神様系黒髪ロング許さねぇってことだ。時と場合を選べよ……TPOをわきまえろカス)


 両者間の距離を詰めるのは、またしても少年の方からだ。しかし、あと数歩というところで老人の方も一歩踏み出す。たった一歩。それだけでもこの後の攻防は大きく変わってくる。

 しかし、少年に焦りはない。間合いがずれたならそれに対応すればいい。それを、目の前の老人から教わった。


(つーか人生ハードモードすぎるんだよ。【アーク(・・・)】っていうチートスキルみたいなのはあるにはあるが……無双じゃない。それに……)


 老人が木剣を振る速度の方が速い。少年はそれを迎え撃つ。バキッという音をたて、少年の木剣が半ばから折られる。

 が、少年は諦めない。老人に掴みかかり体術に持ち込もうとする。

 が、老人の方が一枚どころか何枚も上手だ。老人が伸ばした手に触れられた、と思ったらきれいに投げられていた。


「参った」


 完全に抑え込まれた状態で、少年が降参する。悔しそうでも、どこか清々しい表情だ。


「ふぅ、お前は武器を過信しすぎじゃ。壊れる時は簡単に壊れるぞ?」


「うん、善処するよ」


 さながら祖父と孫のような関係性だろうか。それとも師匠と弟子か。

 二人の力量差はたとえ素人が見たとしてもわかる程に離れている。


(うん、やっぱこのジジイに勝てるビジョンが見えねえや。指先1本で人間投げれるのは頭おかしい)


「ところでツナギ(・・・)や、リュウゴ(・・・)はどうした?」


 老人の問いかけに少年、ツナギが答える。


「あぁ、アイツは今引きこもってるよ。実は一昨日……ウッ……」


 グギュルルルルルル~


 ツナギの腹から盛大な音が鳴った。これは………下痢だ。


「ウッ……実は一昨日腹壊してさ。アイツのせいで。それからずっと顔出してない」


「なるほどの。怒られるのが怖いか、ガキめ。それはそれとして、今日の不自然な攻めっ気はそういうことか」


「あぁ……一つの体を(・・・・・)二人で共有してる(・・・・・・・・)っていうのは……本当に……」


 嫌になる、と。


 二人は今ここにいるけどいないリュウゴへの制裁を決めている。



 ツナギにとってリュウゴという存在は、どういうわけか自分の体の中にいた奴、である。リュウゴはだいたい好き勝手やるので、その尻拭いはツナギの役目なのだ。本人が望むかは別として。


 リュウゴにとってツナギという存在は、転生したけどどうやらこの体の持ち主は別にいるらしいぞ、というものである。「転生したら第二人格でしたって?ハハハ、ふざけろ」、とは本人の談である。



 さて、話を戻そうか。今回の出来事の原因はやはりと言うかリュウゴである。


(だって、ジャガイモみたいなのを見つけたらさぁ、薄く切って油で揚げて塩かけて食うじゃん?でも毒があるとはね……まぁこの森にあるもの大体が毒持ちなんだけどね。え?ツナギの胃腸はほら、何回も同じことがあると鍛えられるでしょ?だから大丈夫)


 完全に外道だ。これは何を言われても仕方がない。


 祖父と孫は、やれ縛り上げて木に吊るそうとか、もう純粋にボコボコにしたらいいんじゃないとか、でも体は俺のでもあるからほどほどにねとか話し合い、それを聞いているリュウゴも戦々恐々としている。

 ツナギの腹痛もそれなりにはおさまったようだ。


 爽やかな朝日が降り注ぐ中、物騒な会話が森へと響いていた。

こんなでも一応W主人公です。

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