サバイバー(10)とオプションパーツ(17+10)
場面は変わります。これがだいたい5年ぐらい前です。
済(2022.08.22)
◇ リュウゴ
「お前ら、ちょっと『聖都』まで行ってみろ」
何を言っているんだこのジジイは。
「そうだな。そろそろ実戦もしないとな」
何を言っているんだこのクソ大バカ野郎は。
世間一般には『魔の森』と呼ばれているらしいここは、俺の第二の故郷だ。ゲームを買いに行ったっきりそのまま転生して早10年。現在の住居は、大きな木を大胆にも活用したツリーハウスだ。と言っても、木に部屋が乗っかっているわけではない。大樹をくり貫き、その中を生活スペースとしているものだ。
そんなロマン溢れるマイホームで朝食を食べていたところ、眼前の二人が水を差して来たのだ。もっとも、食べているのは俺ではないが。
「どういうこと?じいちゃん、エルム」
まだ幼い声で俺が……いや、そういうのはもうやめよう。ツナギが疑問を投げ掛ける。俺たちは一つの体を二人で共有しているのだ。
「何、お主らももう10歳。ちょっとした旅というものじゃよ」
昨日仕留めた獣の肉を口に運びながら、ジジイがそう言った。長い髭があるはずなのだがそれが汚れる様子はない。どうなってるんだろう。
「もうすぐ『聖都』で祭りがある。あと10日ぐらいだからそれまでに来いよってわけだ」
「お祭り!?行く行く!」
瞳を輝かせてツナギが話に食いつく。まだまだ楽しいことに興味深々な年頃なのだ。
俺?俺の行動基準は俺が楽しめるかどうかだよ。面倒事はお断りするような性格だ。
「じゃあ今日ここを出るの?」
このセリフはモフのものだ。モフモフの毛で全身を覆った奴だ。赤ん坊の頃はよくその体毛にくるまって寝たものだ。お世話になってます。
「ねえじいちゃん。『聖都』ってどこにあるの?」
「それも含めての修行じゃ」
ほう。地図なしで森を抜けろと申すか。………自殺行為かよ。一回家出した時は本当に死ぬかと思った。親切な人に助けてもらわなければそのまま垂れ死んでいたかもしれない。
「それじゃあ、わしらは先に行っておくぞ」
「へいへい……」
ジジイとエルムが立ち上がる。木製のドアを開けて俺たちを振り返り、エルムはローブとつば付き帽子を取って来た。杖は最初からテーブルに立て掛けていたのだ。何でも常在戦場の考えなんだと。
「お留守番は任せてよ~」
「いつもすまんな、モフ」
「いいよいいよ。ボクが行くと騒ぎになるだろうし」
ツナギはまだ残っている自分の分の朝食を急いで掻きこんでいる。もう少し綺麗に食べれないのだろうか。俺的にはすごく気になる。
全て食べ終わったツナギが今すぐにでも飛び出しそうだったので、俺はそれをあわてて止める。
「じゃあ僕も……」
『まあ待てよツナギ。前準備はちゃんとしようや。もう苦しい思いはこりごりだろ?』
「む~それはたしかに……」
なぁに。別にズルでも何でもない。だって俺たちには、無限インベントリがあるのだから……無限かどうかは知らないけど。
『モフ。保存食とその他諸々の準備よろしく。俺等はその間に着替えてくるから』
「は~いはい」
手のかかる子供を見るような目が俺たちに向けられたのはきっと気のせいだろう。早速自分の部屋に駆け込んだツナギは上着を着込み、腰には剣を差す。着替えも首のペンダントに詰め込む。
「モフ~。もう大丈夫?」
階下に降りると、さっきまで皿が広がっていたテーブルの上に干し肉やら水やらが大量に置かれていた。それらもまたペンダントに入れ、ドアの方に歩いて行く。
「はい、行ってらっしゃい」
「うん。行ってきます!」
実にいい挨拶だ。親として鼻が高い。
元気いっぱいのツナギは庭を駆け抜け、程なくして森の中へ消えて行った。
◇
とまあ、これが一日目の出来事。しかし、世の中そう都合が良くないことだらけだ。
二日目……三日目……四日目……と、時間は過ぎ去り……
「ここどこぉーーーーー!!!?」
俺たちは今、絶賛迷子中だ。
ツナギはまだ子供で、口調も幼いですね。
まあ、読み進めて行くと作中でも何度か言及した「黒歴史」について分かることがあるんじゃないかと……




