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アーク・ロスト・ワールド  作者: 江本平
第一章 繋ぎ紡ぐは継承の証
22/89

各国重鎮と楽しい会議 下

済(2022.08.16)


◇ リュウゴ


「今回の事態は、エルムと君が喧嘩した、という体にする」


 まあ、落としどころとしてはそれが一番だろう。俺とツナギの評判を無視しているが、それはあってないようなものだからさほど気にしてはいない。だが……


「オーケー分かった。で、代わりに何を差し出せる?命か?地位か?尊厳か?」


「何も?」


 コノヤロウ……少しは申し訳なさそうにしろよ。俺は半目でトリアスを見つめる。


「さて……」


 空気が変わった。さっきまで飄々としていたトリアスからはプレッシャーが感じられる。


「主犯は『百相』のローゼンとゴリと呼ばれた男だ」


 トリアスが淡々と状況説明をしていく。


「彼らの狙いは、私の可愛い娘、ソフィアルーク・クランドの命。しかし、君のおかげでそれは阻止された。礼を言う」


「ぶー」


 ソフィアってのは略称だったか。"ソフィアルーク"とは大層な名前だこと。それはそうと、娘発言に本人からのブーイングが浴びせられる。ざまぁなくて嗤える。


「現在、前者は逃亡。後者は捕縛している。続けて襲撃してくるとは思わない。さて、対価だったね?」


 やっぱり何かあるようだ。心なしかトリアスも態度を崩したように見える。でも嫌な予感がする。


「ツナギ・レイ。今はあえてこう呼ばせてもらおう。……君にソフィアを守護する権利をあげようか」


「えっ!?」


 ソフィアが声を上げた。無理もない。そんな話は寝耳に水だっただろう。他の面々も興味深そうに見守っている。いや、どういった結末になるのか興味がある、と言った方がいいだろうか。

 と言うか守護する権利ってそれ即ち、体のいい雇用契約じゃねぇか。何がお礼だこの腹黒め。


「いや……でも……その……ツナギたちも困るだろうし……その……」


 ソフィアもこう言っていることだし、無理に引き受ける必要はない。個人的には少々引っ掛かるが……


「これはこれは。お嬢様の護衛、なんと心に響く大役でしょうか」


 芝居がかった口調でやんわりとお断りしよう。別にこれがやりたかったとかいうわけではない。


『ん~』


「ですが今回の件は保留ということに……」


『腹減った、飯』


 再度、場の空気が凍りついた。


 ツナギィ……。空気読めよ。





◇ ツナギ


 話し声が聞こえて目を覚ますと、見知らぬ部屋にいた。


『ん~』


 リュウゴが喋っている。まだ寝起きで頭が回らない。今はとにかく……


『腹減った、飯』


 急に静かになった。辺りを見渡すと……あ、エルムがいる。その隣は……一回見ただけだけどもしかしてこの国の王様なんじゃ……?


「お前なぁ~」


 リュウゴの呆れた声が聞こえた。いったい俺が何をしたというのか。


「簡単に説明するぞ?目の前のが『聖託』、その隣が国王で、次はただのアホ」


 リュウゴの説明には緊張感が無いが、かなり偉い人たちじゃないのか?それはそれとして、アホっていうのはエルムのことだよな。まだ根に持っているのだろうか。


「あとは帝国の宰相と座りたくない奴、ラクラの王女と騎士団長。最後の一人が野次馬だ」


 改めて見てみると確かに雰囲気はある。

 突然だが、ここで俺のさっきの発言を思い返してみよう。


「ブフォッ」


 王様が吹き出した。……うん。確かに非常識だった気がするが、そこまで笑わなくてもいいんじゃないか。それと、用意されている椅子に座らず立っている男の視線に違和感を覚えた。


『どういう状況?』


「すげえなお前。どんなメンタルしてんだよ。羞恥心がないのか?」


『茶番はいいから』


「あいよ。まぁ……事後処理の最終確認だな」


 ああ、思い出してきた。夕方まで寝させて欲しいってエルムに言ったんだった。それから俺が起きなくて、仕方なくリュウゴがここに出向いたってところだろうか。俺もまだちょっと眠い。


「ま、いっか。仕切り直しといこうぜ?」


 リュウゴがキザなセリフ回しをする時は、決まって良くないことを企んでいる。今度はいったい何を考えているのだろうか。


「いやあ、俺たちが寝ている間に雨でも降ったのかな?さっき廊下から()が見えてね」


「雨は降ってないはずだけど……今日はずっといいお天気よ?」


 リュウゴの言葉にソフィアが否定の声を上げる。……なにしてるんだソフィア。たしかラクラ王国の王女様だったか?その人の肩に頭を乗せている。


「これはジジイの好みじゃないんだと。返すぜ」


 さっきから困惑している俺のことは無視するらしい。リュウゴは胸のペンダントから一通の手紙を取り出すと、それを前方の『聖託』さんに向かって投げた。

 室内に差し込む一条の光を通過する瞬間、紙に当たった光が虹色に反射した。


「俺からの招待状だ。ちょっとサシで話そうぜ?」


 そういってリュウゴは、じいちゃん宛ての招待状――――そのうち国賓である方の手紙を『聖託』の目の前の机に突き刺した。

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