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アーク・ロスト・ワールド  作者: 江本平
第一章 繋ぎ紡ぐは継承の証
21/89

各国重鎮と楽しい会議 上

済(2022.08.16)


◇ リュウゴ


 場の空気が凍りついた。

 空気をあえて読まない俺の行動で、視力検査のように一部が欠けている円形の机を囲むように座った人物たちにかすかな緊張が感じられた。なんだこいつ、とでも思っていそうだ。

 それを横目に、俺は手に持ったサンドイッチの最後の一口を口に放る。


「やあ。君はリュウゴ君の方だね?性格が悪かったらそう思った方がいいってエルムから聞いてるよ」


「へえ?」


 そう言ったのは、扉を開けて入ってきた俺に対してちょうど真正面に座った男だ。て言うか性格が悪いってなんだよ。失礼な奴だ。

 え?俺?俺はいいんだよ。自分のことは棚に上げるに限る。


「さて、自己紹介が遅れたね。私は現<聖託>トリアス・ユーラマ・サクホードだ。こうやって面と向き合うのははじめましてかな?」


 トリアスと名乗ったこの人物こそが、『聖誕祭』のホスト様らしい。優しそうな物腰は確かに人々を安心させそうだ。もっとも、その笑顔の裏で何を考えているのか分からないが。

 この『聖都』とはいくらか付き合いとまではいかなくとも関わりがあるが、トリアスとこうやって会話するのは初めてだ。


「本題に入ろう。今回の騒動の落としどころについてだ。もっとも、その方針は既に決定していて異論も認めさせないけどね」


 なるほど。ジジイが食えない奴だと言うわけだ。有無を言わせぬ勢いでこちらに意見を押し付けてくる。主張のない人間なら知らない内に言質を取られてしまうだろう。

 だが、規約や法律なんてものは都合のいい時にすがり、邪魔なら無視すればいい。ぶっちゃけ個人の力が強大すぎる場合、この世界ではごねればだいたいなんとかなる。


「おい、話し合いは――――」


「お姉ちゃ~ん!あいつひどいの。最初眠たいから来たくないって言ってたの」


 ひどい言われようだ。確かにそれは事実だが、飯と引き換えにここに来たのだ。今さらそれを蒸し返さなくてもいいだろうに。

 しかし、それでいいのか次期『聖託』。まるで子どものように泣きつく姿には威厳の欠片もない。


「よしよし。もう、いつになったら大人になるのかしら」


 頭を撫でられながら抱きついたソフィアは、その胸に顔を埋めている。まったくけしからん(うらやましい)


「ええと……ツナギさんでよろしかったですか?私も自己紹介をしましょう。ラクラ王国第一王女、メクラセス・ラクラです。ソフィアとは小さな頃からの付き合いなのですよ」


 丁寧にソフィアとの関係を説明してくれるメクラセスさん。黒髪を弄りながら微笑んでくれるメクラセスさん。美人だ。でも最初は分かりにくかったけどこの人も強いんだよなぁ。底知れなさがある。


「う~ん」


 ソフィアが声を上げながら顔を擦り付ける。とりあえずそこ代われ。


「では先に自己紹介からしていきましょうか。どうぞ?」


 流れを察してトリアスが促したのは彼の右隣に座った男だ。見るからに豪華な服を着ている。まるで王様だな。


「ふむ、余はこの国の国王だ。名は知っておるか?」


 本当に王様だった。


「あーうん。何代目かのアーサーさんだよな?」


「いかにも。アーサー・シーク・マノガスト、アーサー七世である」


 1回だけ見たことはある気がする。ただ、言われるまで顔と名前と肩書きが一致しなかった。こうして見ると確かに威厳が……


「とは言ってみたものの……やっぱ性に合わないわ。別に公の場でもないし?なあ、エルム。あれ?お前なにしてんの?」


「俺に振るなよ」


 前言撤回。威厳の欠片もねえや。国王ってこんなに軽くていいの?

 て言うかエルムは何をしているんだ。あいつの手元には淡く光るものがある。


「汎用魔法陣の立体応用だ」


 なるほどわからん。簡単に言うと……手遊びだな。重要な会議中に何してんだか。


「じゃあ次はリーグミールちゃん行ってみよう!」


 ノリが合コンじみて来た。これが国の王か。嫌だなぁ。エルムが重鎮なのも拍車をかけている。


「リーグミール・コルードです。シュルロード帝国の者です。以後お見知りおきを」


 年老いた男性と言ったところか。油断ならない雰囲気を放つ。シュルロード帝国にはキナ臭い噂が多い。案外黒幕だったりして……


「ところであんたは何で突っ立ってんの?」


 次に俺が話を振ったのは、そのリーグミール何某の隣に立つ男だ。明らかに空いている椅子があるのに座ろうとしない。


「お気遣いなく。ただ座るという行為に抵抗があるだけなので……」


「変人か何か?」


 覇気の薄い声で答えたのは、全身を鎧に包んだ男。どこかボーっとした雰囲気だ。


「彼はテルマノ。私と同じシュルロードの者です」


「次は誰が行く?」


「エルムは要らねぇ」


 個人的にはあと二人、武闘派の奴らが気になる。俺を除いてこの部屋で強い奴は四人。エルムは知ってるし、テルマノは聞いたから、残りは二人だ。

 ほんの少し目配せしただけだと思うが、それで伝わったようだ。


「それじゃお先に。ロンだ」


「それじゃ少なすぎるでしょ?うちの騎士団長ってちゃんと言わないと」


 言葉の足りなかったロンに対してメクラセスさんが補足する。騎士団長かぁ。強いのも納得だ。一見椅子に深く腰掛け無造作に座ったように見えるが、無駄な力が入っていない。そしてもう一人も……


「俺はドットだ。多分何の役にも立たないだろうけどかわいい後輩に頼まれて楽しそうだから来た。よろしく」


「黙れドット」


 なんだただの野次馬か。心配して損した。

 この場にいるのは、この国の重鎮が三人、隣国からは二人ずつ。俺たち当事者二人と野次馬一人、計十人になる。


 ここで突然だが、今回の事件について整理してみよう。一言で言うと、ソフィアの命が狙われた。そして俺たちがそれを防いだ。

 ローゼンとゴリの奇襲。そして謎の魔物――――多分人工なのだろうそれらも興味深い。

 途中でエルムも来たが、実質働いていないようなものだ。


 まあ、つまり何が言いたいかというと……


「よし、一回整理しよう。くだらない立場抜きで」


 俺が上げた声に、この場にいる全員が注目する。空気が少し引き締まったのが肌で感じられた。


「今回の事態のMVPは俺。つまり一番偉いのも俺。そこんとこよろしく」


 お偉いさん方相手にイキるのはやっぱり楽しいな!アドレナリンがドバドバ出てるのがよく分かる。


「ハハッ!面白すぎんだろコイツ。なあニア、なんで今まで黙ってた」


「うるせぇな。茶番に付き合うつもりはねぇ」


 ずいぶんと愉快な会話をするのはロンとエルムだ。俺をオモチャかなにかと勘違いしているのではなかろうか。ま、いいや。


「さてトリアス君。さっきなにか言いかけていたね。結論だけでいいから教えてくれない?」


 空気はあえて読まない。他者への配慮なんざ捨て行け。

 ソフィアが俺を尊敬するような目で見つめてくる。メクラセスさんに張り付いてから幼児退行を起こしているのではなかろうか。



「じゃあ簡単に言うとするよ。今回の事態、エルムと君が喧嘩した、という体にする」


「へーそれはなかなかぁー」


 俺と一緒の考えだった。

 楽しい楽しい会議(マウントの取り合い)はまだ終わらない。

人物整理


トリアス・ユーラマ・サクホード…『聖託』。腹黒い


アーサー・シーク・マノガスト…マノガスト聖王国国王。砕けた態度


メクラセス・ラクラ…ラクラ王国第一王女。ソフィアの姉(違うけど違くない)


ロン…ラクラ王国騎士団団長。エルムの戦友


リーグミール・コルード…シュルロード帝国宰相。丁寧


テルマノ…シュルロード帝国の騎士。変人


ドット…エルムの先輩。海向かいの国に世界最大規模の学園がある



 ぶっちゃけ『聖託トリアス』だけ覚えてたらいいです。こいつらの出番はまだまだ先なので

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