14話 酔っ払いの義姉さん
シャンプーをしているとふと後ろに気配を感じて──振り返ってみても誰もいない。
そして気のせいか、と自分を納得させたけど実は……という展開。
ホラー映画にありがちな話だ。
それが俺の身に起こった。
何よりもヤバいのは現れたのが霊や怪異ではなかったこと。
シャンプーをしている間に俺の背後に現れたのは──義姉さんだった。
シャンプーをしていたら突然風呂場の扉が開かれたのだ。
「ねえ、久しぶりに一緒に入りましょう♪」
「……!?」
ちょっとしたホラーよりホラーじみている。
何事か、と思って状況を確認しようとしたのだが……。
「目が……目がぁ!!」
シャンプーがおもいっきり目に入った。
目を開けない。何が起こっているのか確認できない。
視覚の大切さを身に染みて……いやこの場合は目にしみて分かった。
「もう、新ちゃんたら慌てちゃって」
「いやいや待って! 何で義姉さんがここにいるのさ!」
「だから~、言ったじゃない? 一緒に入りましょうって」
「ダメに決まってるでしょ!?」
何を言ってるんだこの義姉は。
家族とはいえ年頃の男女、二人きりで入浴。
アブノーマルにもほどがある。
とりあえず急いでシャワーを浴びて、視界を取り戻さないと……。
義姉さんを追い出すにも追い出せない。
目が見えないとはいえ場所は風呂場。
シャワーヘッドがある場所は大体覚えている。
右手前方に手を伸ばして……
むにゅ。
「ひゃんっ」
掴んだのはシャワーヘッドではなかった。
薄布越しに感じる量感のある柔らかな感触。
手の中央に当たる突起物。
目が見えず手先に神経を集中させていたのが逆に災いした。
「っ~~!?」
ナニに当たってしまったのか気付いた俺は即座に手を離す。
俺は……俺は……。
「義姉さん……」
「もう、新ちゃんたら……」
「出て行けええええええええええええ!!」
風呂場に声が反響して耳がキーンと痛くなる。
下手すれば両隣の家にまで響いているかもしれない。
だけどそんなの知ったことか。
今はこの酔っ払いを追い出すことが何よりも重要。
「むぅ~、新ちゃんが冷たい……」
「いいから早く出て行ってよ。本気で嫌いになるよ!?」
「それは嫌!」
「なら出て行く!」
「それも嫌!」
「なんでだよ!」
幼児退行でもしているのだろうか。
聞く耳を持ってくれない。
もうこうなれば残された手段は実力行使しかない。
目の痛みなど知ったことか。
ズキリと痛む目を無理矢理開いて、霞む視界の中恐らくタオル一枚纏っただけ──ほぼ半裸の義姉さんの肩を掴む。
そして強引に風呂場から引きずりだした。
「うっ……うっ……新ちゃんに嫌われちゃったぁ~~」
すすり泣く声が脱衣所から聞こえてくる。
その様はある種の妖怪か。
追い出した俺は手早くシャワーを掴んで、シャンプーを洗い流して視界を取り戻す。
そしてタオルにくるまったままうずくまっている義姉さんを無心で処理した。
義姉さんには絶対にお酒を飲ませてはいけない。
そう心に誓いながら。
翌日。
悶々として寝付けなかった俺は寝不足のままリビングに向かうと、
「あら、新ちゃんおはよ~」
いつも通りの義姉さんがいた。
まるで全てが悪い夢だったんじゃないかと思えるくらいいつも通りの義姉さんが。
いや、夢だったとしたらそれはそれで大問題なのだが……。
「義姉さん、昨日のことなんだけどさ……」
「昨日のこと?」
「……まさか、覚えてない?」
「昨日は確か新ちゃんにお祝いしてもらって~……それから……あら? 私どうしたんだっけ」
「覚えてないならいいよ……」
むしろ覚えてなくてよかった。
自覚がある上でやってたのだとしたら色々と大問題だ。
俺の理性の限界を試してるんじゃないか──そう思える行動の連続。
このことは誰にも話さずに心の中に仕舞っておこう。
……それにしても、父さんや義母さんは酔っ払ってもここまで酷いことにはならないし、記憶も無くしていなかったはずなんだけど……。
義姉さんだけが特別弱いってことなんだろうか。
もしかしたら俺もこんな風に幼児退行してしまうのかもしれない。
酒は飲んでも飲まれるな。
使い古された慣用句。
俺はこの言葉を胸に刻むことにした。
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