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第44話:魔王の言葉

突然の魔王襲来の翌朝。


俺は起きたままベッドに腰かけ、考え事をしていた。


昨日魔王は言っていた。


「デリヘルじゃないんだから」と。

そう、こっちの世界にもデリヘルがあるのではないか、俺はそう考えていた。


ってそうじゃねぇ!!

そんなことじゃなくてもっと大事なことを考えるつもりだったんだよ!

いや、デリヘルの件も大事だけども。


だがこっちの問題は、既にこの宿屋の主であるモージャに確認している。


「デリヘル?なんじゃそりゃ?ん?商売女をこの宿屋に!?お前、ワシに喧嘩売ろうとしてんのか?」

だとさ。あの時のモージャは怖かったな。どうやら、宿屋に商売女を呼ぶのはご法度のようだ。

そして、デリヘルってもんは最低でもこの町にはないようだ。

もしかすると、魔王領だけにあるものなのかもしれない。


ひとまず俺は、デリヘルについては昨日の夜の段階でいったん考えるのをやめている。


ついでに言うと、昨日はそっちのお店に行こうと思っていたわけだが、あのドタドタで出かける気をなくした。

まぁ、だからこそデリヘル呼べるかを確認したわけだが。


とまぁ、こんなことを考えていたおかげでひとまず寝起きの頭も覚醒してきた。


というわけで本題だ。

あの魔王が言っていたもうひとつの気になる言葉。


そう。時間を止めたって話だ。


これよく考えたら、俺にもできるんじゃないか?

『痛み』だって【貯蓄】できるんだ。『時間』だってできてもおかしくはない。

もしそれが可能なら・・・

まぁ、いろいろとできるわけですわ。


【貯蓄】のスキルは今、レベル5になっているが【貯蓄】できる枠は、いざというときのために3つほど残している。

今がその、「いざというとき」だ。


そう考えながら俺は、ステータスへと意識を向ける。


-----------

名前:キンジ

職業:勇者の奴隷(勇者の従者)

スキル:貯蓄 Lv.7


貯蓄

お金(無制限)

物理攻撃 14発

無生物 14トン

魔法攻撃 14発

治癒魔法 14発

怪我 14回分

痛み 14回分

ーーーーーーー ーー

ーーーーーーー ーー

ーーーーーーー ーー

ーーーーーーー ーー

ーーーーーーー ーー

ーーーーーーー ーー

ーーーーーーー ーー


あと7件、貯蓄を設定できます


派生スキル

返済

返済・改

スキル常時展開(1つのみセット可)

融資

-----------


えーっと。増えてね?

レベル上がってね!?


え、どゆこと、天の声さん!!


『魔族ボルケーノを倒したことにより、大量の魔素があんたに入り込んだのよ。それによりスキルのレベルが上昇してるみたいね』


あー、そういえば魔王がボルケーノの魔素ってのが俺に入ったって言ってたっけ。


じゃなくて!

そのアナウンス聞いてないんですけど!?

仕事しろよ天の声!


『はいはいどーもすみませんでした!

あんたのオフりたい発言を勝手に拡大解釈して、レベルアップアナウンスもオフってました!

以後気をつけるわよ!!!』


いやなんか、天の声から逆ギレされたんですけど。


え、どんどん天の声が人間臭くなってね?


いやまぁ、この際それはどうでもいいとして。

とりあえず【貯蓄】のレベルが上がってんのは良かったな。

これまで設定した分の【貯蓄】回数も14に増えてるし、しかも派生スキルも1つ増えてるみたいだな。


俺は、追加された派生スキル【融資】に意識を向ける。


どうやら【融資】ってのは、俺の【貯蓄】で貯めたもんを他人に与えることができるらしい。

与えられたやつは、俺と同じようにそれを【返済】可能、と。


使えねぇーー。

何が悲しくて俺の貯めたもんを他人に与えなきゃいけねぇんだよ。

こりゃ今回の派生スキルはハズレだな、ハズレ。


まぁもうそっちはいいや。

それよりも、大事なのは【貯蓄】に【時間】が設定できるかどうかだな。


俺はそのまま、【貯蓄】の設定に集中した。


結果として、【時間】の【貯蓄】は可能なようだ。

ただなぁ。単位が【秒】なんだよな。


これじゃぁ、あんなことやこんなことにまでは使えない。


クソっ!!

人生ままならねぇ!!!


とはいえ、今後の事を考えると現時点で14秒も時間を止められるのは、戦闘の際には役に立つ。


仕方なく、俺は【時間】を【秒】の単位で設定した。


さて、【時間】の【貯蓄】ってのは、どうするんだろうか。

とりあえず、【貯蓄】っ!


「キンジ、おは―――」



「キンジ、キンジ!!」

「あ?なんだよジョーイ、急に現れんなよ」


俺が【貯蓄】を使う直前に部屋に入ってきたジョーイが突然目の前に居ることに戸惑いながらも、俺の肩を揺さぶるジョーイを押しのけた。


「いや、キンジが全く動かなくなったから、死んだのかと思って僕は・・・良かった、生きてて良かったよキンジぃーーっ!」

ジョーイは、そう言って俺に抱きついてきた。


どうやら、【時間】の【貯蓄】中、俺は動くこともなく静止して、しかも一切の記憶もないらしい。

なるほど。こりゃ戦闘中に【時間】を【貯蓄】するのは命取りだな。


ってか、【物理攻撃】の【貯蓄】数が2つほど増えてるな。


「ジョーイ、お前俺を殴ったか?」

俺に抱きついたままのジョーイに優しく問いかける。


「あぁ、あぁ!キンジが死んでいるかもしれないと、2度ほどほっぺたを平手打ち・・・ってアレ!?キンジは?おごぉっ!!」


俺は試しに【時間】を俺自身に返済してみた。

するとジョーイの動きが止まった。


いや、おそらく俺以外の全ての時間が止まったんだろう。

俺だけの14秒だ。


その時間でジョーイの腕から抜け出した俺は、ヤツの背後へと回って2回分のジョーイの平手打ちを【一括返済】した。


ジョーイの平手打ちなんて【貯蓄】しても、役に立たないからな。

決して、殴られた仕返しではない。


にしても、【物理攻撃】の【返済】直前に、【時間】の【返済】はキャンセルになったな。

実際、まだ3秒ほど【貯蓄】されたままだ。


【時間】の【返済】と並行して他の【貯蓄】を【返済】することはできないのだろうか。


これは、色々と確かめておく必要がありそうだ。


俺は、頬の腫れたジョーイを無視して、考え込んだ。

ちなみに、【時間】の【貯蓄】中にも【貯蓄の常時展開】に設定したものについては、【貯蓄】可能。

だからこそ、ジョーイのビンタを【貯蓄】できたってことで。


いや〜、久々に投稿できてますなぁ。

いつまで続くだろうか。

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