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第40話:守銭奴の誤算

「あ゛ぁ〜〜、疲れたぁ〜〜」

宿屋に着いた俺は、そう漏らしながら小汚いベッドへとダイブした。


「いやぁ・・・しかし、まさかここまでとはねぇ」

体中に溢れる力に満足するように拳を握る俺は、感情を抑えることもできず笑みをこぼした。



アルケーノとかいうクソ魔族をぶっ殺したあと、俺たちは他の冒険者達と合流した。


その少し前には仲違いしたように別れた俺達が、揃って現れたことにクソ冒険者共は戸惑っていたっけ。

しかしそんなアホ面の奴らも、勇者様の言葉に色めき立った。


「む、村を襲った魔族は、し、死んだよ」

アルケーノにボロボロにされたジョーイが死に体でそう言葉にすると、一瞬の静寂の後、


「うぉーーーーーーっ!!!」

歓声が上がった。


「やっぱ犯人は魔族だったのか!」

「危ねえ!俺等じゃどうしようもなかったじゃねぇか!」

「助かった!流石は勇者様だっ!」


冒険者共が、口々に叫んでいた。


村に到着したときは『犯人が許せない』とかほざいてても、結局は怖かったらしい。


「い、いや、倒したのはキンジ―――」

魔族を倒したのが自分だと勘違いしている冒険者共に、その間違いを正そうとするジョーイの言葉を俺は遮った。


「あぁ、この勇者様がこの村を襲った魔族をぶっ殺したんだ。こいつが、お前らを()()()んだ。勇者様に感謝しろよ?」



勇者


後天的に得られる、そして唯一レベルのある職業。

さらに、あの()は言っていた。『勇者は()()()()()()()()()()()()()()()()』と。


それは、実際にいくつかの依頼を達成したことでレベルの上がったジョーイでわかっていたことだ。

そしてさらに。


俺とミーシアは、『勇者の従者』なんていうクソみたいな職業になっている。

まぁ、正確には俺は『勇者の奴隷(勇者の従者)』っていうもはや分けわかっんねぇ状態だけども。


だがこのクソみたいな職業にも、唯一のメリットがある。


勇者(ジョーイ)のレベルアップによる身体能力向上が、俺等にも反映されるってことだ。


つまり、ジョーイが強くなれば、俺もまた強くなるということ。


まぁ、最終的にはジョーイには死んでもらって奴隷から解放される予定なわけだが、それまでは強くなる、と。


奴隷から解放されるためにはジョーイを死地へと送り込む必要があるが、おそらくこのクソッタレな首輪は、その死地に俺まで引っ張っていくだろう。

だったら、強くなるに越したことはない。


ジョーイが死ねば俺の力も弱まる可能性が高いが、あとは【貯蓄】の力で死ぬ気で逃げる。


危険な賭けだが、一生アホ(ジョーイ)の奴隷でいるよりはマシだ。


まぁそんなことを考えていたからこそ、俺は冒険者共にジョーイに感謝するように言ったわけだ。


()()()()()()()()()()のだと思わせるように。


その結果。


「うぉーーーーーーーっ!!!!!!」


さっきよりも野太い歓声が辺りに響き、『勇者様ジョセフ』コールとともにジョーイが屈強な冒険者共の手によって高く高く、胴上げされることになった。


いや、そいつ結構重症だからな?

まぁ、これで死んでくれるならこっちは助かるが。



そのまましばらく続いた胴上げから解放され、残念ながら生き残ってしまったジョーイが俺とミーシアのところへとヨロヨロとやってくると、俺達にだけ聞こえるように呟いた。


「いきなり、レベルが20まで上がっちゃった」


と。



結果、俺はこれまでとは比べ物にならない力が手に入った。

突然の力に酔っていた俺だが、そこで我に返った。


いや、ここまで力が上がるのは予想外なんですけど?

え、これジョーイが死んだら急に弱くならない?

え、俺大丈夫?

死地から逃げられる?


・・・・・・・・・・


ま、なんとかなるか。


「コンコン」


ひとまず問題を棚上げにした俺の耳に、部屋の扉を弱々しく叩く音が入ってきた。

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