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第9話:文無しの男達

-----------

名前:キンジ

職業:勇者の奴隷

スキル:貯蓄 Lv.2


貯蓄

お金 無制限

物理攻撃 4発

ーーーーーーー ーー

ーーーーーーー ーー

あと2件、貯蓄を設定できます


派生スキル

返済

-----------


なるほど、そういうことか。


ステータス画面に集中すると、俺の頭の中にこの【貯蓄】スキルについての情報が流れてきた。


どうやらこのスキル、レベル✕2の数だけの種類、貯蓄できるらしい。

そしてそれと同数単位分、貯蓄できるってわけだ。


今はレベル2だから、4種類、そして物理攻撃は4発まで貯蓄が可能ってこったな。


なんで金だけが無制限なのかは、どれだけ念じても答えは出なかった。

まぁあれだ。きっと俺のお金ちゃんに対する愛ゆえに、ってやつだな。


【返済】も、やはり元の持ち主にしか返せないらしい。

今まで貯蓄してた攻撃は、俺が受ける前に【貯蓄】していたから、元の持ち主は相手のままって


まぁ、この辺は使い方次第なんだろうが、複数相手にするときついな。


まぁ、あんなイノシシ連中と戦わなけりゃいいだけの話だ。

俺は安全に金が稼ぎたいんでな。


無理せず、安全安心に金儲け。


これが転生したニュー俺の、ニューモットーだ。


と、それはいい。

とりあえず、今知りたい情報はだいたい分かったな。


【貯蓄】にはまだ2種類空きがあるが、その辺はもう少し考えるとするか。


俺はそう決めて、立ち上がりジョセフたちの元へと歩いて行った。


こいつら、いつの間にこんなに仲良くなったんだよ。


めちゃくちゃ談笑しているジョセフと男を見てそう思いながら、2人に声をかけた。


「おい、そろそろ休憩は終わりにして、王都に案内してくれ」

「いや、僕らはキンジを待っていたんだけどね!」


ジョセフが非難めいた目で俺を見ながら立ち上がった。


なんだよ、まだ助けた男に礼を要求したこと怒ってんのか?

小せえ勇者様だな。


「キンジ、声漏れてるからね!?しっかりと僕に聞こえてるからね!?わざと?わざとなの!?」

「あーうるせぇ。ところであんた。王都はもう近いのか?」


「え、えぇ、まぁ・・・」

男はバツの悪そうな顔でそう答えた。


「キンジ、そのことでちょっと問題が・・・」


男に代わるように進み出たジョセフに、俺は次の言葉を促すように視線を向けた。



「泊まるアテがない、だと?」

ジョセフの話を聞いた俺の口から、そんな言葉が漏れた。


「いや、お前勇者なんだろ?王様ってのが泊めてくれるんじゃねーのかよ?」

「それが、無理みたいなんだ。僕が勇者だってことは、さっきアランさんに言ったんだけど、誰であろうと日が落ちてからは、城に入れてもらえないらしいんだ」


お役所か!

いや、最近は夜でも対応してくれる役所はあるんだ。

お役所よりタチ悪いじゃねーか。


っていうか、このおっさんアランっていうのな。

まぁ、どうせ金もらったら会うこともないだろうし、覚える気はないけどな。


「でも、王都っていうくらいだから、泊まるところくらいどうにでもなるだろ」

「そ、そこが1番の問題でして・・・」


申し訳なさそうに、おっさんが項垂れるのを庇うように、またしてもジョセフが前に出る。


いやお前、前出すぎだからな?


「僕らには、宿に泊まれるだけのお金がない!」

ジョセフは胸を張って、言った。


ムカつく。なんかムショーにムカつく。


「キンジは、お金持ってるかい?」


しかもたかってきやがったよ。


「ねーな」


俺は、ジョセフにそう答えた。

実際、転生してそんなに経っていない俺に、金なんてあるわけねーし。


「はぁ。あのボアさえ持ち帰ることができるなら、どうにかなるのでしょうが・・・・」

おっさんが、そう呟きながらボアの死体に目を向けた。


「どういうことだ?」

俺の視線を受けたおっさんは、乾いた笑いを返してきた。 


「ボアは、肉も毛皮もそれなりの額で売ることができるんです。しかし、1体でも我々3人では持ち運ぶのは不可能かと・・・」


なるほど。要はボアの素材を売れば金になるけど、持って行くことができない、と。


まぁ確かにあいつら、1体でもかなりのサイズだからな。


となると方法は・・・


「なぁジョセフ。この世界に、物を無制限に入れることのできる袋とかあるのか?」

「ん、アイテムボックスのことかい?そりゃぁ、あるという噂は聞いたことあるけど・・・あんな高価なもの、僕は持っていないよ?」

そう言ってジョセフは、隣の男に目を向けた。


「わ、私だってもってないですよ!」


あぁ。持ってるなんてはなから期待しちゃいねーよ。

とりあえず、そういうもんがあるならどうにかなるだろ。


俺はそう1人で考えながら、ボアの死体へと近づいた。


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