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プロローグ

202X年。


神奈川県横須賀市。

東京湾の入口に位置するため、江戸時代から国防の拠点とされ、大日本帝国海軍横須賀鎮守府を擁する軍港都市として栄えた。第二次世界大戦・大東亜戦争(太平洋戦争)後も、米海軍第7艦隊・横須賀海軍施設および海上自衛隊自衛艦隊・横須賀地方隊および陸上自衛隊武山駐屯地・久里浜駐屯地や航空自衛隊武山分屯基地などの基地、また自衛隊関係の教育施設である、防衛大学校と陸上自衛隊高等工科学校も置かれた。

自衛隊が防衛軍となった現在も、旧自衛隊から引き継がれる形で基地・駐屯地・施設が残り、日防海軍(日本国防衛海軍)横須賀基地には第1護衛隊群の他、新たに編成された第5航空護衛隊群が配備されていた。

第5航空護衛隊群は「空母」である航空機搭載型護衛艦を主力とした戦後日本初の空母機動部隊であり、航空機搭載型護衛艦「あかぎ」の他、イージス護衛艦の「ふそう」「やましろ」、汎用護衛艦の「ゆきかぜ」「はまかぜ」で編成され、現在建造中の「あかぎ」の2番艦が就役すれば、2個航空護衛隊の体制での編成となる。

空母と言っても、米軍のJSF(Joint Strike Fighter:統合打撃戦闘機)計画で誕生したF35シリーズの中で、海兵隊向けに開発されたSTOVL機(Short TakeOff/Vertical Landing:短距離離陸垂直着陸機)の『F-35B』を導入し、それを15機搭載できるようにいずも型ヘリコプター搭載型護衛艦をベースに設計・開発された、艦首にスキージャンプ式の飛行甲板があるのが最大の特徴であり、空母の種類としては軽空母に分類される。


「総員、帽振れー」

一般的に「軍艦マーチ」として知られている軍艦行進曲の曲が流れる中、「あかぎ」を含めた第5航空護衛隊群の全ての護衛艦の乗員達が、自分達を見送る人達に向かって正帽を振る「帽振れ」を行う。対岸には軍艦行進曲を演奏する日防海軍横須賀音楽隊、防衛軍協力団体と乗員達の家族、「あかぎ」を含めた第5航空護衛隊群をカメラで撮る防衛軍マニア達で大半を占めていたが、その一方で「平和憲法の復活を」と書かれた横断幕を掲げた十数名程の自称平和団体がいた。

「戦争反対!」「戦争反対!!」

「空母はいらない!」「空母はいらない!!」

「軍隊もいらない!」「軍隊もいらない!!」

「平和を守れ!」「平和を守れ!!」

軍艦行進曲に負けないくらいの大声を上げていたが、護衛隊群を見送る人達は冷ややかな視線を向けていた。


20世紀末、ソ連崩壊の影響でそれまで大国によって抑えられていた民族紛争や地域紛争が続発し、オサマ・ビンラディンが率いる「アルカイダ」をはじめとしたイスラム系国際テログループが台頭し、混乱する世界情勢の中で、朝鮮半島に南北朝鮮統一国家の高麗連邦が誕生し、日本に対しても軍事的な脅威の存在となっていた。

ソ連崩壊後のロシアや、リーマン・クライシスが引き金となった2008年の世界金融危機のアメリカなど、世界中に「自国第一主義」が広まり、高麗連邦の台頭と中国の太平洋への海洋進出など、激化する国際情勢に対応するために日本は憲法9条を改正し、自衛隊を防衛軍へと発展させた。

それでも「防衛軍は侵略戦争のための軍隊ではない」と日本の国内外に示すために、「あかぎ」を空母でなく航空機搭載型護衛艦と呼ぶように装備品(兵器)や階級などの呼称や制服のスタイルは旧自衛隊式のままだった。憲法9条を改正した日本と防衛軍を警戒するのは日本の周辺では中国と高麗連邦、日本国内では旧憲法9条を「信仰」する左派政党や、今日の第5航空護衛隊群の出港の見送りにまで抗議しに来る一部の日本人達だった。


帽振れを終えた乗員達は護衛艦の中へと戻り、第5航空護衛隊群の各艦が小笠原諸島海域へと向かって行った。


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