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ポヤンキーな関口くん

作者: undecane

パッと浮かんだ文章を「おりゃー」と書いてみた…。

俺の名前は関口航。


学内では誰もがひれ伏すワルである。


生粋のワルである。




俺、イコール、ワル。


ワル、イコール、俺。


そんな関係が学内ではいつしかできていた。


肩をふって歩くと誰もが道を譲り。


食堂だって待つことはない。


当然席だって譲られる。


俺の周りはいつも空いている。


話し相手だって、ガンを飛ばせば、大人しく来る。




素晴らしい。


ワル。最高じゃないか。


そんな風に思っていた頃の話だ。




ポヤンキー・関口。


いつの間にか流れていた名前、あだ名。



ポヤンキー?なんだ、その弱そうな接頭語は?


気になって出くわした女子に聞いてみた。




「おい!」


「はっ!っっはい!なんでしょうか?」


プルプル震えてる女子。


足腰が悪いのか?カルシウムと運動が足りてないな!


「ポヤンキー・関口って俺のことか?」


そう尋ねる俺。


彼女達の血の気の引いたお顔。


悪くない。


「…あの、その。えっと、私たちじゃないんです!」


私たちじゃない。まるで、誰かがつけたような物言いだな?


「だれだ?誰がつけた?」


「私たちは、うちのクラスの雫ちゃんから聞いただけなんで…」


「なるほど。近藤か…」




近藤雫。


物静かなうちのクラスの女子だ。


何考えてんか、わからねえ奴だ。


とりあえず口を割らせるか…




ということで、近藤のところに来た。


ザワザワー


「おい、見ろよ、関口だ…」


「馬鹿、静かにしてろ!こっちに飛んでくるぞ…」


「雫ちゃん、大丈夫かな…」


「あぁ、主の思し召しを!」


「ポヤンキーめ…」


おい、こら!


最後のやつ出てこい。


視線を一巡させれば、静まり返る教室。




近藤雫。


線が細くて、色白で。


うなじが、ちょっとだけ、エロく感じるだけの女だ。




近藤の前に佇む俺。


読書に夢中な彼女。


陽の光を遮る俺にさぞかし、不満を抱いて…




「陽光を遮ってくれるなんて、存外に紳士じゃないの?」


そんなことを、のたまう女。


向き合う視線は少なくとも嫌悪感がなく。


さらに、


「…日差しが邪魔で読みにくかったのよ。」


そう憂いを帯びて言う近藤。


なっなんだ? この展開?




普通、


「きゃー!こわーいのに目ーつけられちゃったー!?どーしよ!?」


そうなるべきだ。


近藤恐るべし。




そして、


「ありがとう。」


感謝された。


感謝された。


感謝された…。


久しく聞いてこなかったワード。


「ありがとう。」


彼女は俺のハートをこの時すでに撃ち抜いていて…。


「どーしたの?そんなにポヤンとしちゃって。ポヤンとしたヤンキーで、ポヤンキーね。関口ったら。」


そう言っていた。


後のことはよく覚えていない。


ただ、あの時から、近藤のことを目が追うようになり。


いつしか観察していて。


目線を合わせられなくなっていて。


俺は。




俺は、恐怖を感じた。




いや、きっと俺は近藤に恐怖を感じているんだ。


強い奴に目をつけられたときの感触だ。


高鳴る鼓動。


押さえられない動悸。


近藤が側を通るだけで俺は胸が張り裂けそうだった。


漂う微かな香水は俺を悩ませた。


これが恐怖なんだな!




今まで経験してこなかったこの感覚。


俺はいつも連れ歩く、鈴木という下僕に聞いてみた。


「鈴木」


「ひゃっい!なんでしょうか?」


「俺もこの年になって、とうとう、恐怖を感じた。」


「なっ!何言ってんですか!関口さん。あなたの右に出るものなんていないでしょ?」


躊躇われたが俺は言った。


「…俺は近藤に恐怖してる」


「はっ、!?」


「よく聞いてほしいんだ…」




それから俺は、鈴木に包み隠さず話した。


最近、近藤と視線が合わせられないこと。


いつしか注視していて動向を伺っていること。


側に来られると動悸がすごいこと。


微かな香水の香りでも嗅ごうものならのたうち回ってしまう、かもしれないこと。


これを恐怖と言わずして、なんと言う。




俺はそう、鈴木に語った。


そして、鈴木は盛大に笑いやがった。


ヘッドロックをお見舞いしてやった。




なんでも、それは、恋なんだとか。


恋だと?


恋は、こんなに恐怖のような動きをさせてしまうのか?




そんな風に思っているときだった。




「何馬鹿なことしてるの?」


汗が止まらない…これは…


振り替えると近藤がいた。


「っっっっっっっ!」


危うく悲鳴をあげるところだった。


危険なやつだぜ近藤め!


それでも危険は止まない。


「近づくな!これは!きっと!恐怖なんだ!」


「そーなの?じゃあさ…」


なっ?何をするんだ?




「えいっ!」


いつしか近藤は俺の胸元に飛び込んできていて。


彼女に抱き締められていた。




打ち鳴らされるビートは、脳血管をガンガン叩き。


俺は何が起きているかわからず…ただ、これは恐怖だったのだろうかと。


己に疑問を抱き始めていた。




目の前には近藤の瞳。


目と鼻の先にあって。




「好きなら好きって言えば良いじゃない?」


「…あんたって、ほんと、ポヤンとしてて、ポヤンキーね!」


彼女はそう言ったのだ。




俺はこの日、初めて恋をした。


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