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I love Choco  作者:
2/2

アイス シャーベット

風邪看病物って王道だよね!

「はい、あーん」


銀色のスプーンにきらきらしたシャーベットが! 迷わずぱくんと食べる。熱い口の中ですぐに溶けて甘酸っぱいジュースになる。


って、あれ、なんでこんな状況と思い返す。


 数日前から薄々、感じてはいたんだ。ぞわぞわする感じ、なんだか体が重だるく、喉が変になってきて……

 これは、風邪引きそうって!


 だんだん喉痛みが耐えられなくなって、昨日、職場で「声変だぞー 風邪っぴき、げっらうと! はよ帰れ!」って言われて、ついに覚悟を決めた。お医者さんにいこうと。

 仕事帰りに兄へ「これから帰ります。お医者さんに行ってきます」とメールしてから行く。

 小さい頃から通い慣れたお医者さんのおじいちゃん先生に

「一人できたのー えらいねー」

と褒められるが、

(もう子どもじゃないよ! って反論できないー 喉痛くてー)

と、うーうーとしていると、昔からいるお馴染みの看護師さんになんだか同情的に、でも笑いながら頭ポンポンされ、お薬いっぱい出て、やだなぁと思いながら扉を出る。

 街灯に照らされた長い影が見える。

「風邪だった?」

れいちゃんの優しい声がする。

(あれ、もうらぶちょ終わる時間になってたかー 結構待たされたもんなぁ)

と思いながら頷く。

「お薬、いっぱい」

と袋を見せる。

(うう、声かわいくないぃぃ。やだぁ。)

「がんばったねー」

と頭ポンポンする。

(うー また子ども扱いー)

と抗議したかったが、冷たい手が気持ちよかった。

 そのまま手を引かれ歩く。長くて細くて少しごつごつの指ーと堪能していると、気が付けば、仕事用の鞄もお薬も、れいちゃんが持ってくれてて、あれー? って思う。手品みたいと少し笑う。

「ありがと」

と言うと

「どういたしまして」

と甘い笑顔を浮かべる。れいちゃんと帰り道、お菓子の話をする。新作のお菓子の話とか。話を聞いてるだけでも元気が出てくる。わくわくしながら聞く。

「喉の風邪かぁ、そういう時ってゼリーとかひんやりしてつるんとしたものが食べたくなるよねー 何食べたい? 頑張ったご褒美をあげよう」

と言われる。即座に

「アイス!」

と答えると、れいちゃんが微笑んで

「わかった、アイスねー」とつぶやきながら、材料を考えているようだった。「シャーベットでいいかな?」

うんうんと頷く。食べたい! シャーベット! 風邪で重だるい気分が完全に吹っ飛び、わくわくるんるんで歩く。


 お医者さんは、帰り道のご近所さんなのですぐ家につく。

声でない私の代わりに少し大きめな声で、

「ただいまー」

とれいちゃんが言う。

「おかえりー」

と兄が言う。「ご飯どうする?」

と聞かれたので首を横に振る。固形のもの食べたい気分じゃなかった。

「風邪引いちゃって喉痛いみたい。」

とれいちゃんが補足するのに、頷く。

「そうか……熱は?」

(お医者さんではかったけど何度だったっけ?)

と首かしげると、れいちゃんが、とことこいって、体温計を持ってくる。

ピピピ 38.0℃ わー、数字をみると何だか余計に調子が悪く感じる。

「高めだねー」

と覗き込みながら言うれいちゃんの声も何だか遠くに聞こえる。

「寝ろ」

と兄が一言呟く。

 はーいという感じで手をあげて、とりあえず、うがい手洗いして、お化粧落とす。その後、お部屋に直行。

 とお布団までの最短ルートを着実に実行していく。

 仕事用のスーツ脱いで、部屋着に着替えてひんやりしたお布団に包まる。


 うとうとするんだけど、けほけほで目が覚める。それを何回か繰り返す。

(うー、のどいたいー ねむいー ねられないー)

とうだうだしていると、控えめなトントンが聞こえて「開けるよー」と声がする。

ドアの方みるとれいちゃんで、手にはシャーベットが! きらきらしている。

「わぁ」

と思わず起きちゃう。

「食べたらお薬ねー」

(あー、そうだったー)

と少ししょんぼりする。

「のまないと、よくならないよー」

こくんと頷くが、

(苦いかなぁー やだなぁ)

と考えて、食べるの躊躇っていると、目の前にスプーンが、きて、ついぱっくんしていた。


(甘くて酸っぱい、ひんやり、でも香りしないぃー。ってー!! なんでー! って抗議しようにも、のどがー)

と思っているうちに、

「はいあーん」

とどんどんくる。

 そして、最後の一口を食べちゃう。

(ああー なくなっちゃうー)

と惜しむ間もなく、

「はい、お薬」

と見覚えのある白い袋を差し出される。

「待ってて、お水持ってくるから」

と言われ頭をひとなでされる。シャーベットの器とスプーンもって、ばたんと閉まる。

これは1錠、これが2錠と準備していると、すぐ戻ってきて冷たいお水をもらう。

 覚悟を決めてお薬を飲めば、少し良くなった気分になっていた。

「れいちゃん、アイス、ありがと」

というと、微笑んで

「ああ、シャーベットね」

と訂正される。そこはお菓子屋さんのこだわりのようだった。

任務を完遂したように、「じゃ、お休み」

と部屋を去ろうとするのをぎゅっとシャツの裾をつかんでしまう。

 困った表情をしている。

(風邪うつしちゃうしダメだって思うけどー でもー。)

期待するようにじーっと見ていると、しょうがないなぁという感じでまたベッドの近くに座る。

「寝るまでね」

と。飲み頃のホットミルクココアの温度の声が言う。ほろ苦い。

(お兄ちゃんごめん)

と思いながら横になる。

 枕ががらんとする。

(あれ、氷枕?)

おでこのはがれかけていたぺったんを少し冷えた手が貼り直すように、ペタペタする。

(あれ? ぺったん?)

「いつのまに……」

と唇を動かすと、

「ああ、寝てる間に、香がやってってた」と微笑む。その後、少し表情が変わって「いいお兄ちゃんだよね」

と呟く。

(あれ、もしかして、今ヤキモチ妬かれてる?! お兄ちゃんの彼氏に! ほんとごめんお兄ちゃーん! 妹だから! 家族愛だから! とアピールするのも逆にだめな気がするし、どーしよー!?)

と思ってるとげっほんげっほんでる。

(ううー のど痛いー)

 恋のライバルにも優しい手が軽く背中さすってくれる。

「れいちゃん、ごめん」

謝ると首を傾げる。「いつも、ごめん」

(甘えてばっかりだし。お兄ちゃんとの時間とっちゃってる。)

と心の中で付け足す。

「いいんだよ、好きでやってることだから」

大好きな指がおでこを軽くなでる。お兄ちゃんって愛されてるなぁとうらやましく思う。

お薬のせいか、だんだん眠くなってくる。

「ありがとう、お兄ちゃん」

って伝えてね、と思いながら夢の中に沈んでいく。


☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・


「寝たか」

と扉の前に立っていた少し不機嫌そうな男は言う。

「ぐっすり」

静かに扉をしめる。「あれー、そんなにオレ信用なかった?」

と少し茶化して笑うとさらに不機嫌そうになる。不機嫌そうな顔の時は、実は不安だったり、心配している時なのだと、長い付き合いでわかっている。

「してなかったら、こっから追い出してる。」

階段を降りながら呟くように言う。意外にもちゃんと答えてくれるところが好きだ。

「ありがとお兄ちゃん。」

千代子ちゃんの真似をして言ってみる。

「はぁ?」という形に口が、動く。

「だーってさ。」

「ちぃか。」

なんだという感じに脱落している。

「なんで、れいちゃんにはごめんで、お兄ちゃんにはありがとうなんだよー」

ちょっと拗ねた口調で言ってみる。香は意外とこんな感じに弱い。予想通り少し笑ってる。不安な感じも少しは減っただろうか。

「でも、お前明日風邪引いたら許さない。」

少し油断したところに痛いところを突いてくる。氷枕に散ったミルクチョコレート色の髪とか、うるんだダークチョコレート色の瞳とか赤い唇を思い出す。

「オレは待つのが好きなんだよ。」

笑って言う。生地が絶妙に焼けるまで、しっかりと冷えて固まるまで、絶妙に美味しくなるまで待つのが好きなのだ。

 読んでいただきましてありがとうございます!

 今回は特に時系列順とかではないです。

 年齢もいつもの通りふんわり設定です。

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