魔術士
今はどれくらい人達がここまで読んでくれたのでしょうか!!ありがとうっすよ!少しずつ頑張りますよ!
一夜明けて日が昇りはじめた頃。
ライアは老婆に与えられた紺色の着物に身をつつみ二階の窓から朝日眩しい村を見渡していた。
村の家々にはチラホラと雪掻きに精を出している人達が見える、生まれて死んで初めてみる雪国の景色を眺めていると、ふと折角だし夫婦の代わりに雪掻きをすれば喜んでくれるんじゃないかと思いついた。よし、そうと決まれば道具を借りに行こう。
「ということで道具を借りたいんですが」
居間にはすでに夫婦が起きて寛いでいたので早速聞いてみた。
「あー…そりゃ嬉しいんだが、重ぇぞ?」
「大丈夫です!見た目によらず力はあります!」
「そうかぁ?じゃあ少しやってみっか」
任せてくだされ!何と言ってもオーバーテクノロジーの結晶ですからね!雪掻き程度雑作もありません!
と思っていた時期が私にもありました。
妖怪ジジイこぇぇ…
猿のように屋根へ駆け上がると鞭のようにしならせた雪かきを振りまわして数十秒で終わらせていた。
何を言ってるか分からねぇと思うが私も何を見たのか分からなかったとはこのことだろうか。
とりあえず私は私で頑張ろう!
サポコ!フルパワーだ!
[[了解 出力最大 稼働補助開始]]
うおおおおお!!ぎゅいいいいん!!
玄関前の道を10分程度かけ終わらせたライアは一息つくと呼び止められる。
「おぉーーい!茶にしよう!」
当然のように敷地内全ての除雪を終えて一服してる妖怪爺さんはなんなのか。
「お爺さんはやいですね」
「おぅよ!伊達に酒樽担いでねぇよ」
「そういうレベルなんでしょうか…というか酒屋さんだったんですか?」
「ん?言ってなかったか、あっちの蔵の方にあるぜ。大人になったら飲ませてやるよ」
「とりあえず茶ぁ飲みな、体冷やしちゃなんねぇからな」
そう言って渡されたのは空の湯呑み……?
「昨日、魔法見せてやるつっただろ?茶を出すから見てろよ?」
おもむろに取り出したのは掌程の大きさの薄い木の板を2枚と茶釜。
疑問符が浮かんだ私を置いてお爺さんは茶釜を置くと木の板を思いっきり握り割った。
「ふんっ!」
割られた木の板は砂で出来ていたかのように粉になって砕け散る、思わず目を見張った私の目の前で更に驚くことに、
砕けた木の粉が意思を持つかのように掌の上に集まりだし、瞬きの間に水に変わっていく。
「どうでぇ」
お爺さんが空中に浮かんだ丸い水を差し出して自慢げに言う。
信じられず手品の類かと考えるが水を宙に浮かばせるなんて見たことも聞いたこともない…本当に魔術なのだろうか…
「すげぇじゃろ?ほれ、ライアもやってみな」
木の板を渡されて観察してみるが水という字が書かれた木の板にしか見えない。
……分からないし割ってみよう、
「む!」
割れて粉になった板は同じように水球を作り出した。
……おもむろに手を動かすと水球も追従してくる、ぐるぐると動かすもピッタリと水球はついてきた。
水球を見つめてみるも宙に浮いてる以外の異常はみられない……
「気に入ったか?」
「はい。これ、どうなってるんですか?」
「そうかそうか!よかったよかった。」
ニコニコとお爺さんが言うが私はこれが気になってしょうがないです
「どういう仕組みなんでしょうか?」
「よし茶にしようか」
そう言いお爺さんが家の中にそそくさと戻ろうとする
「お爺さん?ちょっと待って下さいよ!お爺さん!というか水が離れないんですけど!お爺さん!」
「あーん?お父さんじゃねぇと聞こえねぇなぁ〜」
「お爺さん!?ちょっと!お爺さん!おと、お父さん待って下さい!」
昼も近くなる頃にライアはお爺さんに連れられ魔術使いの家に行くことになった。
「それじゃあ、いってらっしゃいね」
「おぅ、夕前には帰る」
「行ってきますお婆さん」
「あら?私はお母さんって呼んでくれないのかい?」お婆さんはヨヨヨと泣き真似してみせる
「あ、いえその………」
ぐがががが………!!恥ずかしい…
「………行ってきます、お母さん」
「はい、行ってらっしゃい」
着いた家は至って普通とは言い難い威容をしていた。
ボロボロの家を取り囲む古びた鉄の柵に、
風鈴というには過剰なほど至る所に吊るされた鉄板、庭には鉄屑が山になっていた。
現代日本にあれば幽霊スポットになってそうな見た目に帰りたくなってきた。
いえ、帰っていいですか?
「おぉーーい!イイノメーー!酒持ってきたぞー!」
お爺さんが声をあげるとボロ戸がガタガタと音を立て開かれ男が見えた、
その容姿は一言で言うならだらしなく、黒い髪はボサボサでよれよれの服を着て寝起きといった風だった。
「おぉ……待ってたっすよサカクラさん…最近はめっきりお酒呑めなくって…」
(容姿同様に生活も堕落してそうだな…)
「おや?こんな可愛い子どうしたんすか?誘拐っすか?」
「昨日拾ったんじゃ、俺の娘よ!」
「ライアです、よろしくお願いします」
「よろしくっす、イイノメっすよ!あ、サカクラさんお酒ください」
(こいつ…!)
「おぅ、家ん中はいるか」
「はいーどうぞどうぞ〜ライアちゃんもどうぞ〜」
(酷く気が進まない……)
付いて入った家の中は異様な程に物で溢れかえっていて用途不明の物から鉄屑にしか見えない物と混沌を極めていた。
「おっと!触っちゃダメっすよ〜、危ないっすからね〜」
吊るされた鉄板のカランカランと立てる扉を潜ると少しはマシな部屋にはいる。
座布団に三人座るとイイノメが言う
「えー…じゃあ今日は何を御所望っすか?」
「おぅ、いくつか札が欲しいってのと娘が話聞きてぇっつうんで連れてきたんだ」
「成る程っす〜じゃあお代はおいくら程っすか?」
「酒3本あるぞ」
「マジっすか〜!じゃあ、この箱の中から好きなの20枚までいいっすよ〜!」
そう言い、取り出したのはおそらく数十種程の魔術の板が入った木箱。
「おぅわりぃな、話してやっといてくれ」
「はいはいお任せっすよ〜!」
「それで何が聞きたいんすかね?」
くるりと振り返ってヘラヘラとした顔が言う。
「魔獣についてお話したくてきました、あ、それと魔術も」
「あー…成る程っすねー、じゃあアッチの部屋で話しましょうか、いいっすかサカクラさん」
「おぅ、手ェ出したらぶっ殺すからな」
「はいはい〜…じゃあこっちっす〜」
案内された部屋は天井に沢山の鉄板が吊るされて壁には何やら沢山の文字が描かれた異様な部屋だった。
まるで黒魔術にでも使われそうな部屋だ。
まさか使えるのだろうか?
後から入ったイイノメさんが戸を閉め言った。
「いや〜あんまり声を大きくして話すもんじゃないすからーそれでどうすか?」
どう?とはどういう意味だろうか?と首を傾げた時、不意にバランスを崩し転ぶ。
一体なにが起こったのか、それはすぐに分かった。
「お、良かったす効いてくれてー……んじゃ教えてもらいましょうか」
「どうして魔獣がここにいるんすかね?」