6 島ずきんちゃん
ニージュラ島の火山地帯。サトゥマ高地に伝わるおとぎ話に島ずきんちゃんがある。
サトゥマ高地のサトゥマ村に伝わるニージュラ島の祭り頭巾、通称島頭巾をかぶった女の子の話だ。
女の子は島頭巾が大好きで、祭りでもないのに普段から島頭巾をかぶり続けていた。
日本で言えば一年中サンタクロースやトナカイの帽子をかぶっているようなもの。
当然、島頭巾ちゃんはちょっと変わった子、変な子、特殊な性癖がある子という扱いで、友達もあまり居なかった。
実は女の子の父親がたまたま女の子に買ってあげた何気ない玩具であったのだが、父親が不慮の事故で急逝してしまった。
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女の子にとって、その島頭巾は最後の父親の思い出の品になってしまい、最後の楽しい思い出を手放すまいと思い常に身につけているうちに、
いつしか自分の一部になってしまったものだった。
ある日、サトゥマ村の子供たちが連れ立って、火山の麓まで遠出することになった。
サトゥマ村には火山地帯の温泉に入って身を清めることで子供の無病息災を願う儀式があるのだ。
その中には、島ずきんちゃんも居た。
折り悪く、その日は火山の噴火が起こった。
管理人さんとアッシュ達勇者連合によって、中央火山に封じられた鮮血の巨人ブラッド・ギガスが、火山の噴火によって封印を解かれ、目を覚ましたのだ。
湯気に混じる新鮮な子供達の肉の匂いに惹かれ、腹ぺこのブラッド・ギガスは温泉に現れた。
なにせ50年の間岩につながれ、血肉を食べていないのだ。
ブラッド・ギガスにとって、子供達はこのうえないごちそうでであった。
島ずきんちゃんの祭り頭巾を見るまでは……。
島ずきんちゃんのかぶっていた頭巾こそ、鮮血の巨人ブラッド・ギガスを貫き、
出血多量の末に一度命を奪った恐竜騎士の兜。そのレプリカであったのだ。
己が退治された様を思い出したブラッド・ギガスはその後150年間、火山の中に引きこもり、
島の人間の前に姿を現すことはなかった。
それは今も続いているという……。
ことの顛末を管理人さんに聞かされた村の子供達は、島ずきんちゃんを二度と奇異の目で見ることはせず、
年頃の女の子はみな、島頭巾をかぶるようになったという。
島の女の子、特に火山高地地方の女の子が恐竜の頭巾をかぶっているのは、この伝承を引きついでのことである。