1 ニージュラ島について
ニージュラ島。
フトゥバ大陸の南端、メイ侯爵領メイ半島の沖にある島だ。
島の面積は約88,000 km²。
地球。特に日本からの転生者、転移者の皆さんには北海道くらいと説明したほうがわかりやすいだろうか。
この島を一言で表せと問われれば、混沌。
これにつきる。
もともと亜熱帯に位置する気候風土であり、夏季の台風の襲来に目をつむればおだやかで過ごしやすい場所であった。
実際避暑地としてこの島の南端を選ぶ貴族も多かった。
あの200年前の、魔王の降臨までは……。
鮮血の巨人ブラッド・ギガス。
世界を止める魔王サバルム。
胎帝イクラサンラ。
この3魔王の降臨と、魔王討伐のために世界中から集まった勇者達との戦いによって、島の地形と環境は一変した。
この島の別名は複数あるが、
代表的でもっとも知られたのはこれであろう。
出口のない島。
ニージュラ島を訪れたものはだいたい2つに分かれる。
島に踏み入って1時間も耐えられずにこの地を脱出するもの。
1日居てしまったがために居着くことになってしまったもの。
これは後者であり、魔王を討伐した勇者の一人、魔斧ナローアックスの初代の使い手、アッシュ・トーキが残したニージュラ島に関する、異世界の地誌である。