第1話 「会社帰りの道にて」
午後、8時。
「お疲れ様です。お先に失礼します。」
会社が終わり、コンビニで飯を買い、いつもの道を原付バイクで帰宅する俺。
大学を卒業して、今の会社に就職し彼女はいないが特に今のところ人生を普通に生きている今日この頃。
「ふぅ~今日も疲れえた。早く帰って風呂入りて~」暗い道をバイクで走りながらつい声がでる。
この道は、街灯はなく真っ直ぐな一本道で左右は林でよく幽霊が目撃されるという心霊スポットらしい。
そんな道、普通避けて通ればいいが、この道を使ってまだ、そういった経験がないので特に気にしてなかった。
だが、俺はとうとう見てしまった。
走行中、前方のガードレールのそばに白のワンピースを着た綺麗な女性が立っていた。
驚きはしたが、恐怖とかは不思議と感じなくほんとに幽霊?と見間違うほどであった。そのままバイクは直進し彼女にどんどん近づいていく、近くで見ると清楚で綺麗な女性に一瞬俺は見とれてしまった。
次の瞬間。
クラクション「ビー!ビー!ビー!!」
「キィィィィー!!」「ドォゴン!!!」
「・・・・・・・・・・・」
あたりが一瞬真っ暗になり「え?」と驚いた。
気が付くと地面に仰向けになって倒れていた。自分に何が起こったのかわかるのに少し時間がかかる。
「なんだ?」「体が動かない」「事故ったのか?」
そう俺は、彼女に見とれた瞬間、バイクは反対車線に飛び出し、トラックと正面衝突していた。衝撃でバイクは大破し体は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられていたのだ。
トラックの運ちゃんが駆け寄り必死に呼びかけている。
「何?何言ってるか聞こえないよ・・・」体は不思議と痛くないがなぜか耳も聞こえなく声もでなかった
でもだんだんと寒くなり、次第に意識が薄れていく「あ、俺死ぬんだ。」ふとそう思うとスゥーと体が軽くなり、体というか意識が宙に浮き始めた感覚があった。
「あ、これ幽体離脱やね。なんか体浮いてきた。」どんどん体と離れて行き、後ろ(地上)を向くと倒れた自分と運ちゃんが見える。
「あ~これはさすがにダメやろな。」血だらけの無残な自分を見て死ぬということを再度確信した。
地上からどんどん離れていき、やがてガードレールのところにいた彼女が見えた。
「あの人まだあそこにいるよ。やっぱ幽霊なんかな。」そう何気に彼女を見ていると
彼女は急にグルんと顔を上げ宙に浮く自分と目を合わせた。
「え?こっち見たよ。」
振り向いた彼女の顔を見て、その時俺は理解した。
「ニタァ~」と彼女の顔は口角をめいいっぱい引き上げ、目を細めて不気味な笑みでこっちを見ていた。
「あ~そうか、俺は彼女に殺されたんだな。」
第1話 「会社帰りの道にて」 おわり