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プロローグ


 人は死んでしまったらその姿を電柱に変える。

 そんなルールがこの世界の常識となっているのは、私が生まれるはるか昔のことだった。

 とはいえ、電柱というものを実際に有効活用しようなどと考えたのは僅か一世紀に過ぎない。それまでは邪魔者扱いされて、除け者扱いされて、地中深くに埋められたり、どこかに移されたりしていた。

 今のこの時代だからこそ、人が死んで電柱になる――ということはまだいいこととなっているが、つい少し前までそんなことが起きていたというのである。

 仮にもそれは墓だ。死人を弔う場所だ。そんなことをしてしまえば罰当たり……なんてことを誰も考えなかった。

 考えてみて欲しい。電柱により大地が埋め尽くされてしまう光景を。 想像してみてほしい。駅ホームに電柱が屹立する光景を。

 そんな有り得ないことではない。これはあくまで、この世界での真実を語っている。



 ――もし、人が死んで電柱にならなかったら。



 そんなことを考えた学者も多く存在した。ただ、それは夢物語に過ぎない。

 そんな話を聞いていた中学校時代の私は「なるほどな」とだけ思っていた。別にこの授業はただの道徳であって、試験とかにはまったく関係ないことなのだろうけれど、まあ、聞いて損はない話だろう――とは思っていた。

 私が死んだとしても、その姿は電柱に変わってしまうのだろうか。そして、それは誰が確認したことなのだろうか。

 そんなことを考える以前に、この世界の大前提が覆るわけもなく、私はその考えたこと自体が徒労に感じて、直ぐにその考えを止めた。




 ――それは、私の中学校の頃のおはなし。

 ――そして、そんな曖昧な思考のまま、私は大学生に進んだ。


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