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第5話

僕は、山橋くんのお葬式に参加していた。


周りにうまく混じりながら彼女に見つからないようにしていた。


空いている席がそこしかなかった。


彼女に気づかれても可笑しくない席だ。


僕は、それでも取り合えず、彼女に見つからないように直ぐそこに座った。


しかし、すぐ斜め前のところに彼女が座っていた。


彼女にいることが気づかれる前にここから出ようと考えていた。


「南無南無南無南無…」


周りはしーんとしていて静かだ。


外で車が走っている音がよく聞こえる。外から人が話す声もよく聞こえる。


「南無南無…」


お坊さんのお経が室内に響き渡る。


ここから出るタイミングがわからない。


彼女にわからないようにすっと逃れようと考えた。


僕は、お坊さんがずっとトントンと叩いている間、ずっと思わず、ニヤッとした顔をしてしまった。


思わずそんな顔になってしまう。


やっと7人に…


計画が成功したからだ。


少し僕の中で光を感じた。


まだまだ、気が抜けない。


そのお葬式には、なぜか、外に警察が立っていた。


周りの人達に話しかけている。


なんでいるのだろう。


額に冷や汗が出始める。


やばい。


次々に滲み出る冷や汗。


僕だという証拠は何一つない。


気にしてしまう。


きょろきょろとしそうになる。


冷や汗が止まらない。


一滴だけが僕のズボンに垂れた。


やばい。


さらに、冷や汗が出てくる。


しかし、ここから離れるとなると…


警察にだって、声をかけられる。


絶対に怪しまれるだろう。


そっと出て行くとなると。


僕は、ウジウジと迷いながらも終わったと同時に直ぐに座っていたところから、立ち上がった。


それから、そっと早足で誰にもわからないようにその場を去った。


早歩きで外に出る。


そして、さらに実行方法を考え始めた。


少しその場から離れ、額から出る冷や汗を拭き取った。


はあはあ


息が荒くなる。


「大丈夫?」


声をかけてきたのはクラスメイトだった山原だ。


そんな歩いている途中にクラスメイトだった山原と再会した。


「久しぶりだね」


覚えていないような風にしてその場を去ろうとしたが


「もしかして、僕のこと、覚えてない?」


覚えていない筈がない。


忘れるわけなんかない。


「あ、ははは」


それでも、僕は彼に覚えていないような風にした。


「覚えてないよね…」


そう、帰って来た彼からの言葉に苦笑いをする。そして、彼は口を開く。


「僕は…」


山原は驚く。


彼の

目がパッチリと見開いた。


それもそうだ。


僕は彼に告知をしたのだから。これから、彼にすることを。起こることを。




1週間が経った時、彼女と目が合う。


会ってしまった。


僕は咄嗟にそう思った。


どうしてこんなにも彼女と会ってしまうのだろう。




高校の時、入学して校舎で彼女と再会した。


「ねえ、早瀬くんだよね?」


「そうだけど…」


「私のこと、覚えてる?」


彼女のことを忘れるはずがない。


「うん…」


「高校も席が隣だね」


「そうだね…」


何てこともない話のやり取りをした。


なぜか、自己紹介もしていないのに、直ぐに彼女は僕だとわかった。


そして、彼女は僕に会った時、微笑みながら


「久しぶりだね」


声をかけてくれた。


「久しぶり…」


答えると彼女は微笑んでいた。


チャイムが学校中に鳴り響く。


「チャイム、鳴っちゃったよ」


そして、彼女は僕の手を掴んだ。


「行こう!」


微笑んだ彼女は僕の手を引っ張りながら走り出す。


その彼女の顔はキラキラと輝いて見えた。


その時、声にもならないくらい心が高鳴った。


苦しくなる。


暗闇から一瞬だけ光の方へ導いてくれる。


彼女の手を離したくないと思った。


このままでいたい。


このままで…


教室に着き、彼女は僕の手を繋いだまま、入っていった。


「おはよう!」


クラスメイト達に挨拶する彼女。


その時も手は繋いだままだった。


自分の席に着いた時、僕の手を彼女は慌てて離した。


「あ、あ、ごめんね…」


彼女の頬が赤くなっている。


僕の頬もその彼女を見て赤くなっていく。


顔を見れない。


彼女もうつむいている。


すると、教室に先生が入って来た。


「早く、座れ!チャイム鳴ってるぞ!」


クラスメイト達に声をかける。


先生の声と共に彼女は席に着いた。


そんな僕も彼女をチラチラ見るように席に着いた。


僕は、思わず、ホームルームが始まったと共に彼女の手と繋いだ。


彼女は僕を見る。


お互いに目が合うと微笑みあった。


その手はホームルームが終わるまで繋いでいた。


終わった後もなかなか、お互いに手を離せない。


僕は、手を引き、手を離した。


それでも、彼女は微笑んでいた。


こんな幸せなだった記憶が蘇っていた。




山原と話した後、再び歩き始めた。


僕のことを今、彼女は不審に思っているだろう。


そう思われても仕方がない。


仕方がない。


そう、自分に言い聞かせるように心の中で思った。


ふっとし、ズボンのポケットから、小銭を出す。


近くのコンビニを探した。


すると、直ぐ近くにあり、コンビニまで歩いた。


「いらっしゃいませ!」


店員が仕入れをしながら挨拶をする。


僕は、レジに真っ直接に向かい、タバコを購入した。


そして、コンビニを出て僕は歩いた。


買ったタバコ箱から一本出し、口に加え、火を付けた。


はあー


僕は息をつく。


歩きながら、タバコを吸っている時だった。


タバコの灰が静かにゆっくりと落ちる。


そして、風が吹く。


風で葉がゆらゆらと踊っている。


平和な世界だった。


ふと、真正面を向くと、道路を挟んだ反対側に彼女が立っていた。

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