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第2話

真正面から何人もの人たちが歩いてくるのにすでに真正面から遠くのほうなのに、彼女とわかった。


僕は、彼女と目が合い、方向を変えた。


そして、走った。


彼女に追いつかれないように。


しかし、僕の手に付いた血がタラタラと垂れていた。


それでも、走った。


彼女の姿が見えなくなった。


はあはあ…


息が切れる。


しかし、逃げ切ったと思っていたが、彼女に見つかってしまう。


「なんで、逃げるの?」


その言葉を聞き、僕は、再び走った。必死になって。


はあはあ…


息が再び切れる。


すぐそこにあった角を曲がり、隠れる。


早瀬くん!早瀬くん…」


彼女は、そのまま、真っ直ぐ道を早歩き僕の名前を呼びながら、過ぎて行った。


彼女から逃げ切れた。


はあはあ…


ズボンから小銭を出す。


近くにあった自動販売機にその小銭を入れ、ボタンを押した。


飲み物がどん!と出てきた。


はあはあ…


息がまだ切れている。


自動販売機から飲み物を取り出し、一口口に含んだ。


はあー


少し行き返る。


そして、その後に空を見上げて僕はこんなことを考え込んだ。




君は、多分僕のことを覚えていない。


だって、今とは、全く違うから。


僕の記憶の中では、君は笑っていた。いつもいつも。


隣の席だった君はこんな僕でも優しく微笑みかけてくれていた。


そんな彼女に僕は惹かれていた。


でも…




記憶がどんどんと蘇ってくる。



僕たちは、中学生の時も隣の席だった。


僕は、高校の時や今とは違い、中学生の時は、地味で眼鏡をしていた。


イケメンでもなく、身体もひょろひょろで背も小さかった。


勉強はできたが、運動神経もよくはなかった。


クラスメイトからいじめも受けていた。


今とは全く正反対であった。



中学に入学して3ヶ月が経った時のことである。


学年トップの僕のことが気に入らないらしく、僕のいじり始めのからかいからだった。


やけに僕へのいじりが毎回激しくなっていく。


いじりだけなら、まだよかった。


ある日は、教科書やノートに落書きされていたり、体操着が捨てられていたりへと変わり始める。


さらに2週間して、眼鏡を隠された。


見えない。暗い。


彼らも聞いても知らないと言う。


どこだろう。


僕は手探りで眼鏡を探し始める。


わかるはずもない。


家に帰ることもできない。


そんな時、僕の前にキラキラと光った彼女、天使が舞い降りた。


「大丈夫?」


優しい声。


「眼鏡?」


「うん…」


「私も探すよ」


「あ、ありがとう…」


見えないけど彼女が微笑んでくれたような気がした。


彼女は、5限の始まりのチャイムが鳴っても探し続けてくれた。


「どこではずしたの?」


問いかける彼女。


「自分の席に…」


彼女は、教室中や下駄箱など色々なところを探し始めた。


「あ、あったよ!」


彼女は、叫びながら言う。


「あ、ありがとう…」


彼女が僕の手を優しく掴み、僕の手のひらに眼鏡を優しく載せてくれた。


僕は受け取ったその眼鏡を身につけた。


すると、彼女が微笑んでいた。


「よかったー!」


「よかったね!見つかって!」


僕はその時確かに、君がキラキラと光った天使に見えた。




さらに僕へのいじりは、いじめに変わった。


朝、登校して下駄箱を開けると、下駄箱の中には、納豆が入っていたり、何らかの虫が入っていたりと。


その他にも上履きが隠されたり、上履きが履けないような状態になっていたりもした。


さらにもっとエスカレートすると、外に机と椅子があったり、僕の身体を傷つけたり激しくなる。


暴力を振るわれることが多くなっていった。


僕の身体はボロボロだ。


常に僕は傷が見えないように長袖を着たり、夏でも暑そうな格好をした。


まだ、自分だけならよかった。


僕へのいじめに飽きたのか、僕の友達に手を出すようになった。


その彼を助けても彼へのいじめは、激しくなる。


僕には向かなくなった。僕が何を言ってもどうしても彼らは、僕に興味さえ示さない。


それは、まるでそこに僕がいないかのように。


彼が傷ついていく。助ける。


でも、僕を彼らは、物をどかすように、倒すだけだった。


その彼は、自分から屋上に落ち、自殺した。


彼らは、その姿を見て、怪物のように笑っていた。


信じられない。人が死んだというのに。


さらに、僕の周りを傷ついていく。




中学を卒業式の日だった。


終わった後、無理やりお酒を飲ませた親友だ。


彼は、そのせいでこの世を去った。


僕は、爆発寸前だった。


なんで?なんで?


彼らは関係ないのに。


あいつらは、人間なんかじゃない。


怪物だ。


その日から僕は、彼らを恨むようになった。


そして、計画し始める。


彼らのしたことを僕は許さない。


日々、恨む。恨み続ける。




それから、僕は高校生になって実行し始めたのだ。


誰も僕のことなんて覚えていない。


覚えているはずがない。


僕は影が薄かったから。


それを利用しているのだ。


僕は、怪物へと変わっていった。


そんな記憶から現実に引き戻される。




息が普段通りに戻る。


空になった缶を川へと流した。


よし!


僕は、そして、その場から去り歩き始めた。




私は、探し続けていた。


そこに、歩いている彼を見つける。


やっと、見つけた。


そして、そっと彼の後を追った。


彼に気付かれないように。


そっと。


一定の距離を置き、後を追った。


今、その日の空の下で緊張感が走っていた。

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