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第1話

あれは、きっと夢を見ていたんだ。


あの時、きっと、僕は、確かに悪夢を見ていたのだろう。


そうだ。


きっと。


僕は、そう思うことにした。


思い込む。


そうすることしか、出来なかった。


これは、本当に悪夢だって。




10年前のことである。


高校に入学し、1ヶ月が経ち、高校生活に慣れ始め、友達もでき、私は、充実した楽しい高校生活を送っていた。


勉強は、難しくついて行くのは、やっとという感じである。


部活動は、自分の気分で適当な感じの幽霊部員的で、存在が薄い。


高校生になっても、彼と赤い糸で繋がっているかのように席が隣。


これを運命と言うのだろう。


そんな彼は、周りの女子から、見たらほっとくことができない感じへの変わっていた。


素っ気ない感じの彼に惹かれるらしい。


モテるまではいないが、中学に比べると断然女子が彼の周りに集まる。


背が急に伸び、すらっとしていて、顔立ちも大人びた。


中学生の時よりもはるかにイケメンになり、クラスメイトの女子から、注目を浴びるようになった。


そこそこ、裏庭などで、彼が告白を受けているのを見るようになる。


その時、何故か、次第に、私の心が騒つく。


朝、下駄箱を開けると、ラブレターが入っていたりもするくらい。




そんなある日の放課後である。


教室に忘れ物をした私は、友達と下駄箱まで行って、


「あ、忘れ物した!」


私の友達の松木早苗は、私にに言う。


「取ってきていいよ、ここで待ってるから」


「ごめんね」


私の友達の早苗がそう言ってくれ、私は、急いで教室に戻り、机から宿題になっているプリントとノートを取り出し、友達が待っている下駄箱に戻ろうと、教室を出ようとした時、教室の入り口から下駄箱に向かう途中の曲がり角で…


どん!


何かにぶつかる私。


即座に私は、口を開き、


「すいません!」


その間に一度も前を見ず、頭を下げ、誤る。


それから、私は、前を向く。


しかし、私の前には、人ではなかった。


文化祭で使うのだろうか、物。



さらに、校舎中に音が響く。


ゴウ…ゴウ…バタン!どん!


気味が悪い。その空間からその雰囲気を感じる。


私は、その音が気になり、そっと身を構えながらその空間に行こうとすると、後ろから、バン!と肩を強く叩かれ、私はバタン!と気絶して倒れた。


気が付き、目を覚ますと、私の直ぐ前に人が倒れている。


え?


何?誰?


そんな倒れた彼女に私は、声をかける。


「大丈夫ですか?ねえ!ねえ!」


何度も何度も彼女に声をかける私。


しかし、彼女はピクリとも動かないし、反応もない。


身体がだんだんと冷たくなっていく。


「ねえ!ねえってば!」


私は、自分の手を見ると、赤いものがドロドロと手のひらの全体についていた。


血だ。


「え?」


動揺を隠せない。


「え?何?」


思わず、私の口から言葉が出た。


そして、その倒れた人の顔を彼女が見ると、クラスメイトのリーダーとしてクラスで目立とうとしていた彼女、月島薫である。


「え?」


動揺を隠せるはずもない。


戸惑いながらも頭が真っ白になる。


顔は、真っ青に。


え?


え?


何があったのだろう。


その場の近くに彼女は、人気を感じる。


え?


動揺を隠せない。


私は、顔を上げ、正面を向くと、隣の席の彼の早瀬くんとそこで会う。


「どうしたの?」


彼はそう言いながら、校舎の暗闇から歩いて来る。


動揺を隠せず、固まってしまう私。


唇が真っ青になり、震えている。


ぶるぶると。


疑われる。疑われても仕方がない。


そんなことを考え込む私。


そして、自然と私の目からは、涙が出る。


「私じゃないよ…私じゃ…」


震えながら言う私。


彼は、呆然としている。


更に話す彼に話す私。


「気が付いて目が覚めたら、彼女が倒れてて声をかけても返事がなくて…」


一生懸命否定する彼女。怖くなる。身体までもが震え始める。


彼は、思わず、私に近づき、そっと私を優しく抱きしめる。


「大丈夫だよ…」


彼は、震えた私にそう声をかける。


何度も何度もそう私に言いながらも落ち着かさせようとした。


その後に、僕は電話で救急車を呼び、彼女は運ばれた。


しかし、彼女は、すでに身体も冷たくなっており、息もしていなく、この世から去って行った。


あれは、何が起こっていたのだろう。


私は、まだ震えが止まらない。


動揺を隠せない私は、言葉が出てこなかった。


その夜、私は、あのことを思い出してしまい、眠りにつくことができず、ずっと、そのまま、私は凍りついていた。


まるで、長年、冷凍庫の中に入っていたかのように。


思い出してしまい、怖い。


布団に入ってからも私は、震えが全然止まらなかった。




気が付いたら、翌日が来ており、太陽の日差しが顔を出し始めた。


咄嗟に思ってしまった。


学校に行きたくない。


今までに、一度もそう思ったことはないのに…


目覚ましが部屋の中で響き渡る。


しかし、私は、布団の中に潜り込む。


学校に行くことが怖かった。


何かがあるような気がして。


恐怖と不安がよし上がる。


すると、母が上まで上がってきた。


私の部屋のドアもノック一つせずに、中へ入って来た。


私の部屋中に響き渡っていた目覚まし時計を止める。


「早く、起きなさい!遅刻するわよ!」


私を叱る。


布団から出ない。


いや、出たくない。


むしろ、出れないのか。


いつものように、起きたくないというよりももっとずっも重い気持ちが私を襲う。


私の上に隕石が落ちて来たかのように。


母は、私の布団を思いっきりめくり、


「起きろ!」


なんだかんだといい、私は母に起され、布団からも出て、起きる。


支度をして、それでも、私は、学校に普通にいつも通り行った。


昨日のことが噂にはなっていたが、クラスメイト達も学校の人達もみんな普通だった。


変わった様子が一つもない。


昨日のことが何事もなかったかのように。




それから、さらに1ヶ月してのことである。


放課後であった。


私は、バドミントン部で、練習を終え、帰ろうとしていた時である。


友達とバイバイと交わした後、自転車置き場に向かっていた。


どん!


音がした。


私は、あの時のことをせいめいに、頭の中に浮かび上がる。


「え?」


「まさかね…」


そう思いながらも、歩き始める。


慌てて教室に戻ると、まだ、彼がいた。


そして、サッカー部の同じクラスメイトの中学も同じだったあのグールプにいた高橋くんに彼は、暴力を振っていた。


「止めなよ!」


私は、思わず、そう叫ぶ。


すると、彼は、それを止め、その場からさり気なく、走って去って行った。


私は、思わず、彼を追いかける。


「早瀬くん!早瀬くん!」


そう呼びながら。


しかし、彼は、止まらず、走り続ける。


「早瀬くん!」


結局、高橋くんも何も言ってくれず、時は過ぎて行った。



しかし、帰り道、彼がボロボロになって、電柱のところにいた。


「大丈夫?」


そう私は、彼に声をかけた。


でも、何も答えない。


一点を見つめたままである。


「早瀬くん…?」


私は、声をかけるが、暫くすると、フラフラと歩き始める彼。


ふらふら。


「早瀬くん、大丈夫?」


私は、彼に手を貸そうとしても彼は、私の手を避け、ただ1人でフラフラと歩く。


私は、彼の少し離れた後ろを歩いていた。


次の日、何事もなかったかのようだった。


私に何もして来ないし、何事もなかったかのように。


あの時と同じだ。



考え込んでいると、友達の舞が私の席の前に座り、


「どうしたの?そんなに考え込んで」


「え?」


「なんか、あるなら、いつでも聞くよ」


「いや、何もないよ」


言おうか、迷いながらも言うことを止め、答えた。


きっと、言ってしまったら…


最後に彼女は、


「いつでも相談してね」


微笑みながらそう私に言い残し、授業の準備を始めた。


「ありがとう」


私がそう言うと、彼女は、微笑みながら、


「うん」


普通のその場の話のやり取りをし、チャイムが鳴る。


舞は自分の席に戻った。


しかし、衣替えになり、暑くなったというのに、彼はいつも長袖であった。


時々、彼の腕や足から、青くあざになっているのが見えた。



ある日、授業が終わった後、


「あのさ…」


声を彼にかけると、


「何?」


と強張った顔をして言う。


暫く間が空いてから私は彼に、


「なんか、あったらいつでも…」


と言っている途中に、


「何もないよ」


強張った顔をして言う。


「そっか…」


あの時から、変に彼が気になる。



いや、前から彼のことは気になっている。


隣の席になってから。


いや、中学生の時からだろうか。


どこか、寂しそうでどこか、孤独を感じる。


彼の背中がそう言っているよう。



高校1年生の夏休みに入ろうとしていた時である。


期末テストも終わり、夏休みの計画を友達と立ち始めていた。


沢山の課題が用意され、1学期の授業の残りを受けていた。


もう、夏である。


暑い。


日射しも空も空気もどんよりもしている。


目に見てはっきりと分かる。



そんな3日後である。


クラスメイトだった彼の友達でもあった人が亡くなったというハガキが送られてきた。


え?


その時は、あまり、気にしていなかった。


そして、その日、お葬式で彼と再会する。


雨だった。黒い傘を差している彼。


その雰囲気がおかしかった。


周りは、悲しみに浸るはずなのに、その人の両親だけが悲しみに浸っているだけだった。


何かがあの時からおかしい。


再会した彼は、相変わらず笑わなかった。


強張った顔しかしていない。


彼に私は話かけた。


「久しぶりだね…こんな時に再会ってね…」


「…」


返事は、帰って来なかった。


久しぶりでもなんでもないが、言うことが見つからずそんなことを言ってしまった。


お通夜の隣に座っている彼を見た時、彼の口元がニヤッとしたように一瞬だけ口が上がっていたように見えた。


気のせいだろうか。


その姿は、まるで悪魔のようだった。



その次の日、再び彼と再会する。



立て続けに人が亡くなったハガキがあのお葬式の日に来ていた。


クラスメイトだった浜松くんだ。


彼にあの時暴力を振っていた人だ。


「南無南無南無南無…」


お経を読みながら叩いているお坊さん。


一人ひとりが順番に立ち上がり、前へ行く。


そのお葬式の日も彼は、一瞬だけニヤッとした顔をしていたような気がした。



3度目の再会の時のことである。


社会人になり、働き始めていた。


仕事帰りだった。


今日も疲れたな。


明日も仕事か…


そんな時、真正面から歩いてくる彼。


何人もの人がすれ違って真正面から歩いて来るのに彼だと遠くのほうでもわかった。


声をかけようとした時、彼も私に気付く。


そして、私の目が合うと、彼は、向きを変え、走り出す。


すごい勢いで。


「ちょっと!」


私は彼を追いかけた。


「なんで、逃げるの?」


彼は、逃げ続ける。必死になって。


「ねえ、ねえってば…」


早すぎる。


彼の行方を直ちに見失ってしまった。


「え?どこ?はぁはぁ…ダメだった…」


その時だった。道に赤い物があっちこっちに垂れている。


何これ?


その後を追う。


すると、1メートルくらい先に、彼がいた。


手が赤くなっている。


血だ。


「どうしたの?え?けがしたの?」


「…」


僕は、何も答えない。彼女の顔さえ見ない。


いや、見れるはずがない。


見た感じだと、僕は怪我をしている感じではないことに彼女は、驚いている。


「何があったの?」


彼女は、僕に問う。


しかし、僕は、再び必死になって走り出す。


僕は、その時、咄嗟に思いついた。



もしかして、あの時…



僕を追い続ける彼女。


しかし、再び、僕は逃げ切り、彼女は、走って行った僕を呼びながらも逃す。




次の日も、お葬式があった。


クラスメイトの高橋と友達であった倉本だった。


不信感を持ち始める。


気付くのが遅かった。


これは…


中学生の時から…


ずっと繋がっていたんだ。


そんなことを今の僕は知らない。


しかし、そのお葬式では僕は、姿を現さなかった。



これはきっと夢だ。


悪夢を見ているんだ。


そうだ、そうだ、きっと。


そう思い込む僕。


まだ、その時の僕は、何も知らなかった

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