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初恋は猫に似ている  作者: 久行ハル
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ソラの日記 十二月三十一日

 とうやの言ったとおり、はるきはずっと帰ってこない。


 執事の勤めを忘れて遊びほうけるなんてむせきにんにもほどがある。かえってきたら立場のちがいというものを教えこまなくちゃならない。


 いっぽうとうやは今日は午前中で仕事をきりあげて、せっせと家のそうじをしている。どうしてそんなに念入りにやるのか聞いたら、おおそうじだととうやは言った。


 よくわからないけど、あたらしいつめとぎ用のタワーも買ってくれたのでこれはいいことだ。


 さっそくがんじょうな木に麻なわがきつくまきつけられている柱につめを立てる。出し入れできるつめが食いこんで、えものをとらえた時のような満足感が体じゅうを満たしてくれる。


 もっともわたしはじっさいに生きたえものをつかまえたことはないけれど。よくはるきが動画を探して見せてくれるチーターやライオンの気分になる。


 とうやのケータイの着信音がなった。どうもはるきからのようだ。わたしが聞き耳をたてていると、とうやは映像をかべのスクリーンに出した。


 よう、とうや。ことしさいごの日を楽しんでる? こっちはサイコーにもりあがってる。お、ソラおれがいなくてさみしくないか? 明日はみやげ買って帰るからしんぼうな。


 そのあと、とうやは研究にかんするやりとりをはるきとしていたみたいだ。わたしははるきが一応わたしのことを気にかけていたことで、少しむねにのしかかっていたものが軽くなった。



 とうやは朝型でいつも夜の十時ごろにはねてしまうけど、きょうは十二時まで起きていると言った。わたしはいつもひるまに寝だめしているので、夜起きているのはぜんぜんかまわない。


 十二時が近づくととうやはキッチンでなにかつくりはじめた。かつおだしのいい香りがただよってくる。


 ほら、ソラ。としこしそばだ。赤くぬられた木のおわんには、いつもはしおからいからだめだといわれてるおそばと、その上にかつおぶしがたくさん乗っていた。


 わたしは塩っけのうすいだしにつかったそばを、かつおぶしまみれにして食べた。そばのあじはよくわからないけど、かつおのあじが口いっぱいに広がって幸せなきぶんになった。


 こんなおいしいものがあるなら今年さいごの日もわるくないなと思った。

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