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初恋は猫に似ている  作者: 久行ハル
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ソラの日記 十二月二十九日

 今日は研究所のなかががらーんとしていた。いつもせわしげに立ったままはたらいている科学者たちがほとんどいなくなった。まるで日曜日みたいだ。


 はるきも外にでかけるかっこうをしていたから、なにがあったのか聞くと、今日からしばらく研究所はお休みなのだそうだ。


 だから研究所の中に住んでいる私たちみたいなヒトやネコやそのほかの生き物以外の研究者は、自分たちの住まいにかえってしまうのだ。


 それじゃあ、今日は、はるきとずっと遊べると思ったら、これから外にでるけどわたしは連れて行けないと言われた。


 それでわたしはピーンときた。はるきはまた人間のメスと夜どおし遊ぶつもりだ。いつも違う香水のにおいをさせてかえってくるからわかるのだ。


 そのたびにわたしははるきはずるいと思う。いっしょに住んでいるわたしがいるのに、どうしてそとの人間とばかり遊びにいってしまうのか。


 今日はわたしと遊びなさい、とはるきに言ったけれど、いつもみたいに抱き抱えられて、そんなところがおまえはかわいいな、と言われてあごのしたをわしわしされてごまかされた。


 人間用のとびらはわたしのかぎづめのついた手足はとどかないし、とどいたとしてもドアノブをまわすことができないだろう。わたしは猫の体に生まれたことを心底こうかいした。


 キッチンの方でがたんと音がした。かんがえるまでもなく、研究所内のこの住まいに残っているのはとうやだけだ。


 わたしはキッチンまででむくと、わたしと自分のための夕食をよういしているとうやに聞いた。


 とうや、はるきはいつ帰ってくるの?


 とうやはちらりとわたしのほうを見て、ぼうねんかいをはしごして、カウントダウンライブに行ってくるらしいから年明けまでかえってこないと思う、と言った。


 年明けと言えば一月一日のことだから、はるきは三日後までるすにするということだ。わたしは目の前がまっくらなきもちになった。


……まさかとうやまでいなくならないよね?


 執事が二人ともいなくなったら、わたしは自分の食事を作ることもできない。もっともそんなことをしなくていいから、わたしはえらいのだけど。


 ああ、ぼくはずっと研究があるからここにいる。留守番の時間がながくなるけど大丈夫だよな?


 わたしはへんじをするかわりに、ベッと舌を出してからリビングに向かった。


 ああ、本当にムカつく! はるきのばかばかばかばか!

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