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初恋は猫に似ている  作者: 久行ハル
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ソラの日記 三月十一日

 入院のことはあまりおぼえてない。キャリーに入れられてとうやに連れて行かれたのは、いつもの病院じゃなくて奥まった研究室だったことくらい。そこにはおなじみのねんぱいの看護師さんと、めずらしいことにはるきがいた。てゆーか、はるきがこの大手術を最初にうけおったんだからあたりまえだけど。


 ちょっと長いあいだ現実ではあえないな。さみしくなるけどがまんするんだぞ……。


 わたしを抱きあげたはるきは、もう一生あえないみたいにうるんだ目で鼻をすすっている。おおげさだなあと思いながらも、わたしははるきの気持ちがうれしかった。胸がきゅんとした。


 それからすぐ看護師さんにますい注射をうたれたから、その後のことは覚えていない。最後に猫の目で見た光景はとうやの立ちすがた。まかせておけ、大丈夫だ、とでも言うように、自信ありげなほほえみをわたしにむけていたけど、なぜかその目はいまにも泣きだしそうな少年のようにわたしには見えた。



 で、この日記を書いているのが当日の午後六時十四分。今日は朝からなにも食べてないのに、ふしぎとお腹はすかない。というか、自分がいまどういう状態なのかもよくわからない。目を閉じて頭の中に浮かぶ文字を並べている時のじょうたいがずっと続いているみたい。だからこうして日記も書けるのだけど。


 さっきとうやからメッセージが来た。わたしの手術はひとまず成功したみたい。もっとも、このあとの半年間の調整がたいへんだということだけど。わたしの五感が全部回復するにはあと数日かかるらしい。それまではこの、ぬるま湯の中で目をとじているような感じがつづくらしい。


 どうにもしっぽのあたりがむずがゆいような気がして落ちつかない。でもとうやとはるきにまかせておけば大丈夫。それだけは信じることができた。

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