表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋は猫に似ている  作者: 久行ハル
17/18

ソラの日記 三月十日

 ソラ、明日から入院だ。


 とうやがそう言ったのは朝食のしたくをしているとうやに、おはようを言いに行ったときだった。


 入院? わたしどこも悪くないよ。


 本当に心当たりがないのでわたしは不思議そうなかおをしていたと思う。


 あー、そういえばきちんと話したことはこれまでなかったな。ごめん、ソラ。ぼくもはるきも学者バカだからな……。


 とうやもはるきもバカなんかじゃないよ! とてもすごい科学者だよ!


 わたしが反論すると、とうやは苦笑いをして、そういうことじゃないんだ、と言った。


 ぼくとはるきはソラを人間にするために必要な手順をよく知っているけど、ソラにはきちんと教えていなかったね。


 そう言うととうやは朝食を用意する手を止めて手を洗うと、テーブルのイスにこしかける。わたしもはなしがしやすいように、テーブルの上までかけあがる。


 とうやが順序だてて話してくれたことには、わたしは人間になるために半年間特別な液体にみたされたポッドの中に入っていなくちゃならないらしい。その間に体の細胞のほとんどを取りかえて、十七歳の人間の女の子に変身するんだって。


 半年間もじっとしてるの? 退屈で死んじゃいそう!


 わたしが悲鳴をあげると、とうやはそこは大丈夫とうけあう。


 入院中も意識はあるから、仮想現実(VR)のなかですごせばいい。ただ、安全のために外のネットにはつなげられないけどね。ぼくもはるきもちょくちょく遊びに行くよ。


 わたしはとうやの話の全部をりかいしたわけじゃないけど、ずっと寝たきりとかそういうのではなさそうで少しホッとした。


 じゃあ、今日が猫でいられるさいごの日?


 そう聞くととうやはうなずいた。なにかしなくちゃいけないかなとちょっと考えたけど、人間になれる喜びにくらべればどれもたいしたことはないように思えた。


 だけど、お昼寝の時間だけは大事だから、これは人間になってもゆずれないなと思った。ごはんを食べたらリビングでお昼寝! ひとまず猫として最高の幸せを味わっておいたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ