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初恋は猫に似ている  作者: 久行ハル
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ソラの日記 三月七日

 あの日以来、表面上はとうやとはるきは変わらない。家では互いにほとんど不干渉だし、研究所でなにをやっているのかはわたしには知りようもない。ただ二人とも帰りが遅くなった。


 だからといって、わたしからいつになったら人間になれるの? と聞くのも、二人を信用していないようでためらわれた。


 そんな中途はんぱな気持ちでいたら、今日は二人とも早く帰ってきた。しかも「二人いっしょ」に! こんなことわたしの記憶には一度もないことだった。二人とも研究所内のPXとよばれるスーパーの大きな紙ぶくろをかかえている。


 ソラ、今夜はお祝いだ!


 ふくろをダイニングテーブルに置くのもそこそこに、はるきはわたしをかかえ上げ、くるくると部屋の中でおどりだした。かまってくれるのはうれしいけど、これはちょっと苦手。はるきの手につめを立てると、ようやくなぞのおどりは止まる。


 いてて、荒っぽいお嬢さんだ。やっと予算と許可がおりたんだよ! ソラ、おまえは人間になれるぞ!


 その言葉をきいてわたしも部屋中をかけまわりたくなった。はるきがおどりだした気持ちがようやくわかった。


 すごい! とうやもはるきもがんばってくれたんだね。ありがとう!


 素直な気持ちを伝えると、二人ともうんうんとうなずいている。


 なにせ、はるきの奴が申請書類やら予算見積もりやら、いつもはアシスタントにまかせている書類を必死に書いてたからな。正直ぼくもおどろいたよ。


 とうやはダイニングで買って来た食材を整理しながら、めずらしくはるきをほめる。


 いや、とうやこそ、上層部あいてに根気よく説得をしてくれたんだってな。所長から聞いたよ。こころから礼を言わせてくれ。ありがとう。


 はるきがとうやにこんなにまじめに接するなんて、それこそ滅多にないことだった。わたしはふたりがわたしのために、こんなにがんばってくれたことを知って胸がいっぱいになった。


 その晩はパーティーで、とうやはひさしぶりに猫用のアンチョビピザを焼いてくれた。これはわたしの大好物。メインディッシュのチキンの丸焼きも少しわけてもらった。パーティのあいだじゅう、みんな笑顔がたえず、おいしい晩ご飯よりもそれがわたしにはうれしかった。

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