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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

秘密のバレンタイン♪

作者: Towa

 日中とはいえいまだ寒く、外に出るのに少し躊躇してしまう2月14日。街はたくさんのチョコやイベント仕様の飾り付けにあふれていた。ようするにバレンタイン一色というやつである。

 バレンタインムードあふれる街には当然多くの人がいる。普段よりも男女の組み合わせが多い気がするのはきっと気のせいじゃない。

そんな人の波の中にとある女子学生4人組がいた。

まあ、この前振りからわかると思うがその4人組の中の一人が私こと琴浦澪(ことうらみお)である。


「もうバレンタインかぁ」


 私はバレンタイン一色の街並みを見て思わず呟く。


「そうだね~」


 するとのんびりした口調で返事が返ってきた。声がした方を振り返ると、そこにはにこにこと楽しそうな顔の少女がいた。私の友達の一人、日吉シロナだ。

さっきの返事は間違いなくシロナがやったのだろう。それよりもさっきのつぶやき聞かれていたのか……。


「ん?どうしたのシロナ?」


 すると今度はシロナのすぐ横にいるもう一人の少女が口を開く。彼女の名前は蓮佛聖(れんぶつひじり)。凛としたたたずまいがかっこいい私の友達だ。


「いや~、気付いたらもうバレンタインだなぁって」


「うん、確かにそうだね」


「この時期は美味しいチョコがあふれてて幸せだよぉ」


「まあ、かわいいチョコとか見てるだけでも楽しくなるけど……おいしいチョコがあふれて幸せって感想どうなの?普通女の子であるシロナって渡す側だよね?」


「聖ちゃん、細かいことを気にしたら負けだよ」


「……細かいのかな?」


 聖が反応したことでシロナの注意が私からそれる。そしてそのまま二人でバレンタインやチョコについて私そっちのけで話し出す。

完全に二人だけの世界だ。

 この二人ってホント、仲がいいなと思う。


「バレンタインと聞いてふと思ったんだけどさ」


 シロナと聖、二人の会話を横で聞いていると、今度は私のすぐ横から声がかかった。


「ん?」


 私はいったん二人から意識を外し、声のした方に顔を向ける。

 そこには4人組の最後の一人であるところの天野葵が私、シロナ、聖の三人が視界に入るように体ごと顔を向けていた。

 葵もまた私が思うかっこいい女の子だ。ただし聖とはその性質はだいぶ異なる。

 聖が「お姉さま」とか呼ばれそうなタイプだとしたら、葵の方は「姉御」と呼ばれそうなタイプだと私は思っている。

 わかりにくいかな?まあ、とにかく私の印象としてはそんな感じなのだ!


「別に大したことじゃないんだけど……いや、女子的には大したことなのかもだけど―」


 葵はそう前置きした後、一呼吸分の時間を空けて次のセリフを口にする。


「この中に彼氏いる人挙手」


 かれし。


カレシ。


彼氏。


 私は葵の突然の質問について考える。

 彼氏がいるかどうか。

 そんなものもちろんNoだ。

 何を意図して聞いたかは知らないが、そもそも私は現状彼氏を作ろうという気はまったくない。

 次に私は周りに目を向けた。

 葵はまあ、言わずもがなである。

 次にシロナと聖に目を向ける。この二人は私の目から見て、かわいいしきれいだと思う。素朴というか地味目な私とは全然違う。正直恋人がいても全く不思議じゃないと思っている。そんな風に考えをめぐらせつつ私は二人を見ていたが、シロナは相変わらずの笑顔を、聖はちょっと困り顔をするばかりで挙手するそぶりはまったく見られない。どうやら二人にも彼氏はいないらしい。


「いないみたいだね」


「そうだな澪……」


「ん?どうかしたの?」


 なぜだか葵がげんなりした感じの雰囲気を出している。


「いやさ。女子4人が集まって、誰一人彼氏がいない現状ってどうなんだろうなぁって」


「何か問題でも?」


 葵はいったい何が引っ掛かるんだろう?


「ついでにもう一つ聞くけど、彼氏はこの際おいておくとして、家族を除いて誰か少しでもチョコを渡そうかなみたいな人がいる人挙手」


 またも葵がアンケートを取ってくる。私は当然いない。そしてそれはほか三人も同様であるみたいで、誰一人手が上がらない。


「……別に問題があるわけじゃないんだけど、なんだかな、この女子が四人も集まってるのにどうなの感」


「問題ないならいいんじゃない?」


 うん。少なくとも私はそれでいいと思う。


「ははは。まあ葵の言いたいことはわかりますよ。かくいう私もどうなんだろうなぁ感が無きにしもあらず」


 しかしどうやら聖は葵の言いたいことがわかるらしい。


「おお、聖。わかってくれるか」


「ええ。まあ、理解は」


 すると葵は勢いよく聖の両手をつかむ。よほど聖が賛同したのがうれしいのか。


「んー。私は澪ちゃんと一緒で、別に何も問題ないんじゃない派かな?」


 しかし今度はシロナが私の意見(?)の方に賛同する。


「な!?ここにもまた一人澪と同じずれた人間が」


 なんかさらっとシロナとあわせて私までずれてる発言されたのだが。


「ええー、なんかすごい暴言だったよ今の!」


 シロナさん激おこ(かわいい)。まあ当然ですね。


「じゃあ逆に聞くけど、葵ちゃんは彼氏欲しいの?あとついでに聖ちゃん!」


「え?私も?」


 そしてシロナの矛先はなぜだか聖の方にも向く。


「んー。そうだね」


 しかしこの唐突な展開にもちゃんと考えてあげる聖はきっといい人。

 そうして聖と葵はほんの一瞬だけ考えるそぶりをした後、お互いに無言でうなずきあい一言。


「「特に欲しくないかな(ないな)」」


「ほらほら~。二人だって程度の違いはあれずれてるじゃん!そして聖ちゃんは私の嫁なので誰にも渡しません!」


 二人の回答に、ほら見たことかと若干どや顔をしつつ、何の脈絡もなく聖に抱きつくシロナ。


「ちょっ、シロナ、突然なに!?」


「えへへ~。聖ちゃんは私のお嫁さーん」


 シロナの突然の行動にあわててる聖はやっぱりかわいい。そしてシロナはホントに聖のことが好きだな~と思う。


「はあ。おーい、お二人さん。そろそろいちゃつくのはやめろー。帰るのが遅くなるぞー」


「えへへ。ごめんね、葵ちゃんに澪ちゃん」


 そのすぐ後、聖への拘束を解くシロナ。


「まったく。びっくりしたよシロナ」


「まあまあ。たまにはいいじゃないですか~。それに―」


 シロナはいったんそこで言葉を区切ると、自身の顔を聖の耳元に近づける。


「―」


「……」


「―」


「……っ!?」


 な、何をシロナは聖に言ったんだ?聖がこんなにあわてた顔をするなんてめずらしい。

「楽しみにしてるからね」


「…………ばか」


 うー、聖が何を言ったのかちょっと気になります。思い切って聞いてみる?


「おーい。いい加減早くしろよー」


 そうこうしていると、しびれを切らした葵が再度催促をしてくる。

 正直ちょっと気になるけど、しょうがないここは葵に従うかな。


「待って。今いく」


 私は葵にそう返して、葵の隣に再び並ぶ。

 その後は特に何事もなく、私たちは帰宅するのでした。













「うん。今から家を出る」


『―』


「大丈夫。お母さんには適当に言ってごまかしたから」


『―』


「わかった。じゃあ待ってるね」











 夜の公園。昼間と違い誰もいないこの場所は、いつも見ているはずなのになんだか違う場所に来ているみたいで少し不思議。そんないつもとちょっと違った雰囲気を感じつつ私はここで待ち人を待つ。

 携帯を使って時計を確認する。時間的にはそろそろのはず。

 私は今一度公園の入り口に目を向ける。

 するとまさにちょうどのタイミングで人が一人公園内に入ってくる。

 人影はまっすぐに私の方へと向かってくる。

 そうして私に近づくにつれ、人影はそのほの暗い街頭に照らされた顔をあらわにする。


「ごめん、待った澪?」


「この場合今来たところって言えばいいのかな、葵?」


 そう、私の待ち人とは日中一緒にいた天野葵である。


「その返答だと判断に迷うんだけど」


「ふふっ。大丈夫、今回のはちゃんと言葉通りの意味だから。私も来てからまだ10分もたってないし」


 そうして私は葵ににっこりと笑いかける。


「じゃあ早速だけど、はい私からのバレンタインチョコ」


 私はその流れのまま手元に持っていたラッピングされた箱を渡す。


「ありがと澪。じゃあ私からも、はいハッピーバレンタイン」


続けて今度は私が葵からバレンタインチョコをもらう。あぁ、幸せだな。


「……でもごめんね、私のわがままでこんな時間になっちゃって」


「大丈夫、気にしてないよ」


 そう、これは完全なる私のわがまま。

 私は葵のことが好きだ。世界で一番愛している。それに関して思うところは何もない。人を好きになることに躊躇する理由が全くない。

 でも残念なことにそれが一般的ではないということも私は理解してしまっている。多分大多数の人からは奇異の目で見られるだろう。それが好意的であれ、否定的であれ。

 私はそれでもいい。でも葵をその視線にさらすのかと思うと、正直わたしは怖い。葵には嫌な思いなんてさせたくない。

 ……まあこれも私が一人で勝手に思っているだけなので葵がどうなのかはわからない。でも葵は優しいから内心思うところがあっても私の言うことに同意してくれそう。まあ、これもまた私が勝手に思っているだけなので、実際は違うのかもしれない。でも私は葵のことに関してだけはどうしても意気地なしになってしまうから……。だから、もうちょっとだけ待っててほしい。


「じゃあ早速一つチョコをもらおうかなと思うんだけど、その前に」


 今は全然違うことを口にすることにする。


「その前に?」


「……シロナたちといる時、彼氏が云々って言ってたけど、ホントのホントに本気じゃないよね?」


 そう、彼氏がどうとか言う昼間の件だ!まさか実はなんてことないよね?ね?


「……澪って弱冠ヤンデレの気質があるよね?」


「なに?」


「いや、なんでも。もちろん、彼氏なんていらない。だって澪のことが好きだからね」


「……ふーん」


 きゃー!私のこと好きだって!!だって!!


「じゃあ、もうちょっと行動に示してほしいなって」


「……行動ね」


 すると葵は何事かを考え始めた後、突然私との距離詰めてくる。距離はどんどん短くなっていき、ついには目と鼻の先どころか鼻と鼻があたるような位置まで近づけられる。


「澪」


「は、ひゃい!」


 うぅ。思いっきり声が上ずっちゃった。


「好きだよ」


「―!?」


 その一言共に私と葵の距離はゼロに!唇と唇なんか完全に触れ合ってます!


「ん……ちゅっ」


「ぅん……ちゅぅ」


 そうしてしばらくの間私たちはキスをしていた。


「……はぁ、はぁ」


「どう澪?ちゃんと伝わった?」


「……ふわぁ」


 ダメです!完全にろれつが回りません!


「その様子だとちゃんと伝わったかな?さて、じゃあせっかくだし今度こそチョコを食べようか?」


「……はぁ、はぁ……うん」


 私はどうにか、本当にかろうじてそれだけ伝えます。


「……ねえ」


「な、なに?」


 私はどうにかほんのちょっとだけ持ち直した体で葵の方を見ます。……なんだか笑顔がちょっと怖い。


「せっかくだし、チョコの口移しする?」


「っ!?」


 そ、それは!私はあと何回葵とキスをすればよいでしょう!!


「ダメ?」


「……………………お願いします」


 顔が、顔が熱いです。絶対私の顔、今真っ赤です!


「そっか、じゃあ早速―」


「ふわっ~」


 その後私たちは何度も何度もキスをした。とりあえず確実に二桁は越えていた。


 とってもあまかったとだけ言っておきます。


 ……え?それだけかって?それ以上は私も恥ずかしいんです!たとえ思い出すだけでも!

 うぅ、絶対変な声出してた……。

 とにかくこの話題終わり!

 以上わたしのバレンタインでした!

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