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神の居ない世界にて  作者: アウラ
1.He interacts with her
6/249

5.

 陽里と新が朝食を終わらせ席に立とうとした時である。


「結城陽里一等陸士だな」


 陽里に前には軍服が体のラインを強調している赤髪の女性――エリザベス・エドベルがいた。


「ェ、エエエエエエドベル教官!!」


 あの新でさえ姿勢を伸ばして敬礼している。


 教官と言う事は自分より偉い立場であるから礼には則るべきだろうと思い陽里も敬礼する。


 事前にA師団内の主だった人物を陽里は調べてはいるが全員をカバー出来てはいないために目の前の女性が誰なのかわからなかった。


「はい、結城陽里一等陸士であります」


「貴様の所属が決まった。訓練グループはワタシのところだ。出撃グループも同様になるだろうが随時編成する事が多いためその時々に告げる」


「はい」


「げっ……」


 陽里が「はい」と答えた瞬間、エリザベスは眉間に皺が寄り、新は顔を青くする。


「返事はイエスマムだ! 覚えとけ!」


「イエスマム!」


 突然の怒声で食堂は静かになるもいつもの事であるかのようにすぐさま騒がしくなる。


「以後気をつけろ」


「は……イエスマム」


 そうしてエリザベスは去って行った。


「はぁー」


 新は気が緩んだのかイスに座る。


「なんなんだあの教官は?」


 陽里は若干困惑を浮かべて新に尋ねる。


「エリザベス・エドベル教官って言うんよ。第壱都市軍からの客員教官でめっちゃ美人だけどめっちゃ恐い人」


「ふーん」


 客員とは言うものの組織図として見ると出向と言う形に近い。


 連合国軍――これについて説明するにはまず連合国について語らなければならない。


 時は80年前に遡る。


 当時までは150カ国以上も多くの国があったのだが、社会情勢が大きく狂いだして2つの派閥に分かれて遂に2つの国へと統合されていったのだ。


 1つはヴェスティール神和国。東ロシアを除いたユーラシア大陸とアフリカ大陸に加えイギリスなどのヨーロッパの島々が統一された大国である。


 もう1つがエステリア連合国。日本やアメリカ、オーストラリア、ブラジル、東ロシアなどの環太平洋地域の国々の連合国である。


 連合国とだけあって国境は取り払われたものの文化は残されており言語も未だまちまちである。

 しかしもう国ではないがそう言ったものの区別化として当初はアメリカ領や日本領と言った言い方で分けられた。


 暦も改められて連合歴へと変えられた。


 しばらくして軍事的に重要拠点を設けるべく旧主要都市やその付近に新しく都市が設置されるようになる。


 これは食料生産が少人数大量生産化されてから久しく、都市から離れた地方には畑しかなく新しく都市を作るより既存の都市を元にした方がコスト的にも良かったために旧主要都市に設置されたのである。


 まず最初に決定されたのが連合国の中心として経済の中心地であるアメリカ領のニューヨークが第壱都市となった。

 同じく西海岸にも都市が作られた題弐都市ロサンゼルス

 そして日本領に設置された第参都市トーキョー


 トーキョーと言うものの旧東京は特A地区にあたり、旧関東や静岡、山梨を含めた地域である。


 他にも都市はあるがここでは割愛するとして、連合国軍は各都市毎に組織が大きく分かれている。


 例えば第参都市には第壱都市軍、第参都市には第参都市軍と言った具合にである。


 従って連合国軍の組織図において第参都市軍と第参都市軍は横関係であるため、エリザベスの立場に対する正確な表現は出向となる。


 しかしそこはプライドを傷つけかねない表現なのであろう、招いたと言う形にして客員と表現したのだろう。


 事実、連合国軍として同じ組織ではあるが世間一般的な見方では第壱都市軍と第参都市軍は別組織として見られる事が多い。


 世界中にチェーン店があったとしても国毎に違う組織として感じるのと同じである。






「よし来たな」


 陽里が訓練のために戦闘服に着替えて訓練場に来るとエリザベスが既に待ち構えていた。


 右手には鞭が握られている。


「って新もここなのか」


 新と共に着替えた陽里は訓練場に向かう途中新がいつ別れるのか考えていたが結局最後まで同じだったのだ。


「そうなんよ。エリザベス教官美人だしなぁ。あ、本人前にして名前で呼ぶとぶん殴られるから注意するんよ」


 新は鼻の下を伸ばしてエリザベスを見る。


「何をしている! 早く来い」


 早速エリザベスから怒声が飛ぶ。


「「イエスマム!」」


「全員揃ったな。新人もいるが自己紹介なんてしてる暇があったら訓練しろ! 全員走れ!!」


 その無茶苦茶な内容に陽里も困惑してしまう。


「ま、いつもん事だ」


 新も慣れているようで走りだす。


「とっとと走らんか!」


 エリザベスは陽里にだけでなく他のメンバーも煽る。


「「イエスマム!」」


「走って走って走りまくれー!!」


 後から鞭を振り回してエリザベスが追いかけてくる。

 その姿は鬼であり捕まればどうなるか考えたくない程であった。


「結城陽里! 貴様手を抜くな!!」


 明確に己を狙っての鞭の一撃を陽里は僅かに走りのペースを上げて避ける。


「まだ走れるだろっ」


 エリザベスもペースを上げて再び鞭が飛ぶ。

 陽里もさらにペースを上げて躱す。


 この時点で既に陽里は他の集団より大分差が付いてしまいエリザベスと2人で走っている状態になってしまった。


「ほう、まだ行けそうだな」


 エリザベスは鞭をしまって拳銃を取り出す。


「それは……!」


 陽里もこれには驚き声を漏らす。


「ゴム弾だ。当たれば痣はつくがな」


 そう言ってエリザベスは陽里の足元に狙いを定める。


「それ走れええ!!」


 撃たれる直前で陽里はさらに加速する。


「そうだそうだその意気だ!」


 いよいよエリザベスの全力疾走より速くなった陽里はエリザベスと距離を離していく。


「なんなんだあの新入り……」


「俺達より倍近くは速くねえか?」


 他の訓練メンバーが陽里の速さに驚く。


「貴様らももっと走れー!」


 再び鞭を取り出しては彼らを煽り始める。

 訓練は始まったばかりだ。

文中の連合国軍の組織図としてはこんな具合です。

文字がズレておりましたら申し訳ありません。


連合国軍

L第壱都市軍

L第弐都市軍

L第参都市軍

 L第一兵団

  L特A師団

  LA師団

 L第二兵団

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