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第2話

 魔物の大群による襲撃による村の消滅、その知らせがグラムの村に届いた時には王都はすでに各地に散らばる冒険者を含めた、戦えるものを全て王都へと召集し迎撃態勢を整えることを決定していた。


 それはすでに冒険者として屈指の力を持つ、グラムも例外ではなく王都への召集を受けた。

 セシリアと「必ず帰ってくる」と約束し彼女に笑顔で見送られた。


 すぐにまた会えると思っていたグラムはこのとき、これが彼女との最後の約束になるだなんて思ってみずに、笑顔で村を出た。



熾烈を極めた魔物との戦争、大群の魔物に多くの人員が投入されその命を散らして行った。

 グラムは最も過酷で死亡率の高い最前線で戦い続けた、戦いの中で死なないために腕を磨き続け、いつしか王国側の切り札とまで言えるほどに力をつけた。

 多くの人を見送り、戦い始めて2年が過ぎたある日、戦争は王国側の勝利で終わりを告げた。

 戦争が終わった次の日、グラムは荷物をまとめ村へと帰還した。

 王から活躍した褒美として爵位や、領地を与えられる。

 それをセシリアに話したら、喜んでくれるに違いないと思い、グラムの足は自然と早くなる。


 セシリアの家に着き、ドアを開けたグラムを待っていたのは誰もいない、空き家だった。

 事態が把握できていないグラムを見た、村人の女性が話しかけて来た。


「彼女なら……3か月前に死んだわよ……」


 耳を疑った、嘘だと信じたかった。

 しかし、その女性に連れて行かれた彼女の墓には、セシリアの名が刻まれていた。

 その夜、グラムはその墓の前で一晩中泣いた。


 あと3か月自分が早く戦争を終わらせていればとそんな考えが頭を過る。

 大量の魔物せいで、戦時中となった村の極度のストレスは体の弱い彼女が生きるにはつら過ぎた。


「もう一度……会えないかな……」


 まだ、伝えたいことがたくさんある、離ればなれになった2年間色々な事があった。

 村ではできない体験を様々し、今ならセシリアに外の世界の事を話してやれると確信していたのに。


 ――彼女はもう居ない


 数ヶ月後、グラムは1人で西の果ての森へと向かった。

 そこで、ある魔法陣を完成させた。

 この世とあの世を結ぶ魔法陣、グラムはセシリアを取り戻すため神と交渉するつもりだった。


「さて……いこうか」


 魔法陣の上に立ち、手をつき魔力を流す。

 蒼白い光に包まれ、グラムは気がつくと真っ白な空間にいた。


「人間が何用で参った?」


 振り向くとそこには白い服を着て、白ひげを生やした年配の男がいた。

 こいつが神かと思い、グラムは単刀直入に話を切り出す。


「とある人を生き返らしてほしい。

無理なら、一日でもいい、話す時間をください」


「ならん。

生きている人間と死んだ人間を会わすことはできん」


「無理を承知でお願いしています」


 頭を下げるグラムに神と思われる男はため息をついた。


「わしらは貴様たちが思っているほど慈愛に富んでいるわけではない。

全ての人間は平等に扱われなければならない。

貴様の個人的な願いが優先されるようなことはない、それでも己の願いを叶えたいのなら覚悟を示せ」


「覚悟ですか?」


 男が指を鳴らすと砂の入っていない、砂時計が出て来た。


「これを人の魂で満たせ、そうすればそれと引き換えに望む者を生き返らしてやろう」


 砂時計がグラムの方へ近づき、身体の中へと吸収された。

 その瞬間、頭にこの砂時計の使い方が浮かんだ。

 脳にダイレクトに話しかけてきているようだ。


「人を殺せと?」


「そうだ。

誰が死のうとワシらには一緒だ。

そもそも、貴様らの生き死になど興味が無いわ」


 戦争中、神に兵の無事と戦争の勝利を願い神に祈りを捧げていた姫が残念に思えた。


「せいぜい、頑張るとよい」


 男が消えた瞬間、その真っ白な空間が暗転し、気がつくと森の中へと戻ってきていた。

 足元の魔法陣は消えかけており、数か月の努力と魔力が消えようとしているのと同義だった。

 胸に手をやると、もらった砂の無い砂時計が出て来た。

 これに魂を満たせば、もう一度セシリアに会える。

 これからの人生はただそれだけのためにある。


 グラムは王国へと向かった。

 表立って行動し、目立ってしまうと色々と妨害が入る可能性がある。

 そうなっては、セシリアと会う時間が先延ばしになる、一日も早く再開したいグラムにそれだけは避けたかった。


 闇夜に紛れ、フードを被り1人ずつ確実に暗殺していく。

 王国に暗殺者がでると、噂になると警戒され夜に出歩く人間の数が減る。

 そうなる前に大量の人間を殺すつもりだったが、数十人殺した時に砂時計内の砂があまり増えていない事に気がついた。


 どうやら、この砂時計を満たすには数百人は殺す必要があるとグラムは思った。

 頭に浮かんだ方法はこの国と真っ向から反抗することになる。

 しかし、グラムに迷いは無かった。


 魔物の多い、西の果ての森で魔物たちを活性化させ人を捉えさせ、集めた後に殺す。

 心の決めたその瞬間、後に魔王と呼ばれる男が登場した瞬間だった。


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