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溢れる

作者: 水橋 哩

 昨晩、隣町が沈んだ。

 さっき開けたばかりの目を擦りながら、2chのニュース速報でその事実を今、認識した。

 山ひとつ隔てているし、私の家はそれなりに高台にあるから、身の危険は感じていない。

 気だるい体を上半身だけ、無理やりに起こして背伸びをする。朝日の大半をカーテンが遮ってくれているが、隙間から多少は射し込んでくる。飛び込んでくる陽子や電子は、私の身体には優しくない。

 

 そんなことより、さっきから股間の辺りがスースーしている。

 寝る時は下着を着ける主義なので明らかに違和感。

 穿いていたはずのパジャマはおろか、下着も見渡した付近には見つからない。

 そして、ようやく、異常事態に気付く。

 昨日取り替えたばかりのシーツが、田植えをするには程好い具合にグジョグジョになっている。

 慌てて、2段ベッドの下を覗き込む。

「こんな所を見られる訳にはいかない」

 覗き込むと、水面に光が反射して眩しい。顔面に焦点が集まって局所的に暑い。

 どうやら見つかる心配はしなくても良いようだ。20才を過ぎて、こんな所を見られてしまったら、まず間違いなく社会的に終わる。詰む。ハイ、サヨウナラ、だ。

 そう思うと、さっきまで強張っていた全身の筋肉が緩む。

 胸筋、背筋、括約筋。そして、失禁…。

 どうやら、まだ膀胱に残尿していたらしい。

 垂れ流されるアンモニア水。

 2段ベッドの下段を軽く浸からせる程になった海へ流れ出す始末。

 成分は一緒だから、何も問題は無い。

 ただ、海へ還るだけだ。


 こうして、隣町だけでなく、私の住む町も海へ沈んだ。

 私の家は高台にあるから、心配することは何も無い。

 そうだ。朝食を済ませる前に、洗濯機を廻してしまおう。

 今日はお天気も良いらしい。お洗濯日和にはお洗濯をしなければ罰が当たってしまう。

 すっきり綺麗にしてしまわないといけない。

 

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