名前
三、
さて、名前が分からないとは致命的なことだ。なぜなら、返事を出来ない、テストで名前を書けない、等等・・・色々と困ることもあるのである。
「・・・・うぅむ。教授の実験結果に名前を忘れると書いてあったが・・・うむ、君の名前はだね、坂凪 驟雨。ええと、ほかの事は覚えているかね?」
「ええ、大丈夫です。ありがとうございます。じゃあ、次の質問していいですか?」
「ああ、構わんよ。」
少年は言いたいことを一旦、頭の中でまとめ・・・・どのようにしたら面白おかしく話せるか考え・・・・やはりまじめに聞いてみることにした。スリーサイズはまた今度としたほうがよさそうだと思い、首を振って聴く。
「・・・・父さんが言っていた天使と堕天使って何ですか?」
「うむ、あれはだな・・・・教授の頭の中のものを実際にやってみたらどうなるかと言うものだった。まぁ、簡単に言うなら人工的に天使を造ってみた結果だな。しかし、教授は天使じゃ面白くないから堕天使にしようといって堕天使が計画案となったのだ。そして、教授は現地の酒場でその堕天使が入っていたカプセルを盗まれたのだ。」
「で、盗んだ人たちはそれが本物かどうか確かめるため、僕に試してみたと?」
「ああ、その堕天使はまだ実験段階でね、何かに同化しないと力が発揮できないのだよ。で、それを知ってはいたが・・・同化したらどうなるかまではしらなかった盗賊たちは造った本人の息子に対して使ったのだ。実験は見事成功。結果、君はめでたく堕天使となることとなった。しかし、悲しいことにどのようなことが起きるのかさっぱり分からないのだ。私たちはなんだか分からない植物の種を君の種に植え付けてしまったのだ。」
「・・・・ええと、もしもですがね?そのぉ、僕に備わってしまったその堕天使の力とやらは本当は誰に試されるはずだったんですか?」
なんとなく、気になったので聞いてみた。まぁ、ある意味での幸運かもしれない。
「・・・・私だ。だから、試験者となってしまった驟雨君のところまでやってきた。まぁ、一応のところは家事は出来るので君の妻としては・・・・合格ラインに達していると思う。」
いえいえ、どちらかと言うと僕のほうが足りてなさそうですよといいそうになるのをこらえ、驟雨は答える。
「・・・ええと、その・・本当にこの家に住むんですか?」
「いや、君は・・・こっちでは死んでいることになっているらしい。教授が君を死亡扱いさせており、高校には提出済みだ。まぁ、確か退学したとなっているらしい。」
(ううむ、父さんめ・・・まるで悪の首領みたいな俊敏さだな。いったい、これからどうなることやら?まぁ、あの高校もなかなか良かったけど・・・。)
「じゃあ、これから僕はどうなるんですか?」
「安心してくれ。それについてはすでに行き先が決まっている。そうだな、今から行くとしよう。」
驟雨が彼女に連れられて家の外に出る。まぁ、家といってもアパートの一室であり、ぼろぼろなのだが・・・・そのアパートの前に大きな車が止まっていた。
「あの・・・これ、なんですか?」
「私の家に置いてある車だ。これで私の家に行く。」
氷は顔を赤くさせ頬に手を重ね・・・・何故か構えている驟雨にこう告げた。
「・・・安心して欲しい。部屋は一緒だ。」
「いや、安心できないと思いますが・・・。」
二人は車に乗り、乗ったところで車は緩やかに走り出した。その社内には彼らのほかにも二人のお客さんが乗っていた。
「・・・・あの、この人たちは?」
「うむ、あっちの高校で生徒会をしているものたちだ。それと、詳しい話はあっちについて話すとしよう。」
どちらも驟雨から見たら美少女であった。彼は失礼にならないくらいに相手の顔を確認してみた。と、その中の一人がそんな彼に話しかけた。
「・・・・どうも、あの時はすいませんでした。」
「・・・あの時?・・・ああ、君はあの時、不良に襲われてた人か・・・。うまく逃げれたんだね?」
氷は不思議そうに二人を眺め、驟雨に無言の眼差しを送信してきた。彼女の言いたいことを解読するなら次のようになる。『あの時とは何だね?』
驟雨は彼女に話すことにした。別に隠すことではなかったからである。
入学式のときであった。
高校生活のしょっぱなから遅刻しそうな状況となってしまった驟雨はかなり慌てていたのであった。
彼は電池が切れていた目覚まし時計が悪いといっている。
さて、そんな驟雨が走って高校に向かっていると、途中で一人の不良に絡まれているどこかのお嬢様のような感じの人を見つけた。
しかし、少し遠く、ここから行っても彼女が連れ去られるほうが早いと思った驟雨はそこいらに転がっていた手ごろな石を持ち上げ、放り投げた。
投げた後になって、自分が少々、運動音痴だと気がついた彼は絡まれているほうの女の子に向かって大声で叫んだ。その声を聞いた彼女は驟雨の行ったことを的確に理解し、頭を下げた。そして、見事不良の顔に当たり、隙を突いて絡まれていた女の子は逃げ出すことに成功したのであった。ちなみに、石が当たった直後にすでに驟雨は安全圏まで退避しており、不良に顔を見られることはなかった。
「・・・・ふぅむ。なるほど・・・。」
「まぁ、助かってよかったよ。」
「・・・・ええ、でもですね、実は・・・その、私はあなたに謝らないといけないんですよ。」
「・・・何をですか?」
驟雨は一物の不安を覚えた。なんだかあまり聞きたくない感じの雰囲気である。
「ええと・・・実はですね、私たちがあなたに堕天使を投入してしまった者たちなんです。ええと、私はどちらかと言うと、後方支援なので・・・戦闘のほうは苦手でですね、私を助けてくださったあなたを調べるために色々と情報を探し回ってたんです。ええ、組織の力を使ってまで調べました。」
全く持って執権乱用といったものかもしれない。まぁ、理由が不純とはいかないが・・・でも、それはそれ、これはこれなのでやっぱりいけないものだ。
「それで、見つけたまではいいのですが、それが・・・あの教授さんの息子さんだって知ってですね、たまたま一緒に見ていたこちらの・・・」
彼女が指差すほうには眼鏡をかけて驟雨をまるで観察しているかえるに送る目で見ていた。
「・・・人に見つかっちゃってですね、上司に報告されて・・・結果、驟雨さんに堕天使を投入することになってしまったんです。」
ここに、驟雨の人生を半ば変えてしまった少女がいる。驟雨はあっけにとられ黙り、氷は納得したような顔をしていた。
「・・・・驟雨さん、つまり・・・恩を仇で返すことになってしまったんです。すいません。」
車内で頭をぺこぺこ下げる。隣の少女は驟雨を見ており、ある意味、興味深そうであった。驟雨に至っては複雑な顔をしており、自分の人生と子のこの幸せがどちらが大切かを考えており、途中まで考え、へんな計算式が頭に出たところで考えるのをやめた。
「まぁ、その話はあっちについて返答するとして、驟雨君、少し眠ったほうがいいぞ?」
先ほどまで寝ていたが、急に眠くなってきた驟雨は目をつぶることにした。この車は張りぼてではないらしく、寝心地も最高であった。
「・・・・そうですね、さっきまで寝ていましたが・・・・なぜだか、疲れました。精神的にも何がなにやらさっぱりですので少し、失礼します。」
どうも、どうだったでしょうか?できましたら評価、感想をよろしくお願いしたいと思います。




