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朝の目覚めから始まる日常

ちょっと明るい話になりました。

一、

「・・・・・ちょっと時雨!何時まで寝てるの?」


 一階から少年の母親が朝から元気のある声を張り上げている。過去の少し悲しい思い出を夢に見ていた少年は現実へと誘拐されていくのであった。


「・・・・・久しぶりだな・・・あんな夢を見るのは・・・・」


 少年は寝ぼけ眼で床に足をつけるとそんなことを口走る。夢の時代は小学生ぐらいの頃だと思われる。あの時、正直言ってつらかったのを覚えていた。


「・・・・・ま、どこかで見ていてくれるよね、そう思わないと・・・・やっていけないから・・・」


「・・・・時雨!蕾は先に学校に行ってるわよ?今日から転校なんだからあの高校での最後の青春の一ページを刻んできなさい!」


 少年、時雨はため息を出して一階へと降りていくのであった。

 そして、朝のホームルーム。活発そうな時雨のクラスの担任の数学教師は時雨を教壇にたたせて説明を開始する。


「・・・・今日には、彼、天道時てんどうじ 時雨しぐれ君は他の高校に引越しするそうだ。すぐに引っ越すそうだ。まだ、四月で入学式からそこまで経っていないが・・・この中には彼にお礼をいいたい人もいるだろう。それでは、お礼をいいたい人はその場でたって時雨君にお礼を言うように。」


 教室にいたその中の一人・・・がその場で立ってもじもじしながらも答える。


「あのぉ・・・ええと・・・私を助けてくれてありがとうございます!」


「いえ、いいんですよ。当たり前のことをしたまでです。」


 他の生徒(主に女子、そして、男子生徒が数人)が立ち上がって転校するクラスメートにお礼を述べる。

少し前のことである、と言っても、入学式の次の日、上級生に囲まれていた数人のクラスメートを発見した時雨はそれを見に行った。

そして、気の弱そうだが、美少女と言ってもいいクラスメートを掴んでいた上級生をぼっこぼこにしたのであった。

そして、もうちょっとで男子生徒が殴られるといった場面に自ら入り込み、殴られる。

クラスメートにさっさと逃げるように指示した後、暴走を開始・・・・とある、アニメの主人公機のような獅子奮迅の働きにより、残っていた上級生をすべて排除・・・・と、ここまではかなりかっこよかったのだが、相手が悪かった。

相手はその私立高校のお偉いさん方の息子たちであって、病院送りになったと聞いてお偉いさん方は怒り狂った。

それはもう、龍の逆鱗に触れてしまったようであった。

しかし、時雨のクラスメートの証言やそれを見ていた数名の生徒・・・そして、素直だとかなり定評のある時雨のクラスの担任教師の努力により、時雨は五月までの間に他の高校に転校するといったことで話は綺麗に収まった。相手をぼこぼこにしてしまったので一部の生徒達からはかなり恐れられてしまい・・・・上級生は時雨を連日探し回った。この高校の番長だったものたちを倒したので血が騒いだのだろう・・・・。しかし、時雨はそんなものたちを相手することなく、静かに生活していたのであった。

 一通りのお礼が終わり、時雨は頭を下げた。


「・・・・・かなり短い間でしたが、ありがとうございました。では、失礼します。」


 一応、転校することは自分で皆に伝えたかったので時雨は今日、学校に来たのだ。彼の義妹も同じ高校だ。

 時雨は鞄をつかんで自分の教室を出た。そして、廊下に出たところでスタートダッシュ。怪我させてしまった相手に下げる頭もないので逃げるように一直線の廊下を駆け抜ける。だが、途中で用務員のおじさんに捕まり、しかられてしまったのであった・・・・。

 なんだかんだで、どうにか校門までやってくることが出来た。時雨はかなり短い間過ごした校舎を見上げ、ため息をついた。今日、時雨が転校する高校は名前以外、知らない。暴力沙汰の事件を起こしてしまった時雨を母親は怒らなかった。しかし、転校先の高校については何も教えてくれなかった。なんでも、サプラズというやつらしい。


「・・・・・短い間、ありがとう。もう、戻ってこないよ。」


 名残惜しげに時雨が小さい頃に死んでしまった父親が通っていた高校に別れを告げる。なんでも、自分の父親は凄い人だったと小さい頃からよく聞いたものであった。


 それから、時雨は家に向かって一直線に帰らず、ちょっと外れている道を通ることにした。そこには、近頃出来たらしい占い屋があるとの噂であった。しかし、その占い屋の営業時間は午前中でいまだに高校生が行ったことはないらしい。そして、その占い屋の前に来て時雨は考えた。

 よし、今度からの高校生活がエンジョイできるか占ってもらおう。さいわい、財布は持ってきているし、いつもより少しは多く入っているからな・・・もしかしたら年上の綺麗なお姉さんがいるかもしれないし・・・・

 少し、神秘的な占い屋に時雨は入ることを決心し、第一歩を踏み出したのであった。と、サンダルをはいた中年のおじさんが出てきたのであった。そのおじさんは時雨をまじまじと眺めた後、


「お客さんかい?」


と、尋ねてきたのであった。時雨の中で勝手に形成されていた神秘的かつ、ボンキュボーンな天然形と思われる推定年齢二十四のお姉さんは消滅したのであった。


「・・・・・ええ。そうです。あなたはお店の人ですか?」


 最後の頼みといった具合に時雨は口を開いた。時雨としては首を横に振って欲しかったのだが・・・・・


「ああ、そうだよ。」


 こうなったものはしょうがないと、時雨はお店の中に入ったのであった。先を歩くサンダルおじさんは時雨が入店した時、嬉しそうであった。


「いやぁ、第一号目のお客さんだから嬉しいねぇ。丁寧にしないと罰が当たる!」


時雨をパイプ椅子に座らせ、自分はみかんの箱に腰を落とす。


「さて、早速占ってあげよう。ちょっと、目をつぶって集中してくれないかな?」


 言われた通り、時雨は目をつぶって身構えることなく、リラックスした。このおじさんからは人を安心させるようなオーラが出されているようであった。一家に一人、いたらいいかもしれない。


「・・・ふぅむ、魔界が再び天界と戦争か・・・・。あ、もう目を開けて結構だよ。」


 占い師はそんなことを言って近くに置いてあった机(学校とかにおいてあるタイプ)から白い書類を一枚取り出した。時雨の前にそれをおく。


「・・・・・時雨君、君の未来と過去は・・・まぁ、最悪だよ。そこでだ、これも一つの始まりだと思って天使になってみないかね?いまなら、初回無料サービスだけど?」


 未来はどうか知らないが、今日見た夢のこともあったので時雨は頷いた。きっと彼は、おれおれ詐欺に引っかかるかもしれない。


「ええ、で、何をすれば天使になれるんですか?」


「おお、信じてくれるのか!全く、なんて素直な子なんだ。とりあえず、この書類に名前と目標を書いてくれないかな?それで結構だ。」


 時雨は言われたとおり、名前を書いた。そして、目標の欄で筆を止める。


「何でもいいよ?『我が人生、萌を極める!』でも結構だ。」


 時雨は悩んだ。目標なんてもとから持ってないし、今から考えても少し時間がかかるかもしれないので思いついた文字を適当に書いてみることにした。


「ふむふむ、『一日一善』?ふぅむ、シンプルイズザベストってやつだね?気に入ったよ。これで、君ははれて天使だ。」


 時雨は首をかしげる。別に体から白い羽なんて生えていないのだからそうだろう。なんとなく、不安になりながらも財布を取り出す。


「ええと、いくらですか?」


「いや、今回は御代はいいよ。君の天使としての活躍に期待させてもらうからね。君が活躍してくれれば私は利益を手に入れることがあるだろうからね。」


 時雨はそのまま、店から出ることにした。全く、占いらしきことはしてもらわなかったが・・・・家ではきっと母親と義妹が待っているに違いない。


「時雨君、最後にこれを渡しておこう。お守りだよ。」


 最後に、時雨はサンダルおじさんから水晶をもらい、時雨が角を曲がるまで手を振ってくれているおじさんに頭を下げて歩き出したのであった。

 家に帰ると、母親と義妹が既に家の前に待っていた。車はいつでも走れるだろう。


「兄貴、遅いよ!」


「あ、ごめん。ちょっと用事があってさ。」


「さ、時雨と蕾、さっさと車に乗りなさい。出発するわよ?」


 時雨の母親がそう告げると時雨と彼の妹はさっさと車に乗り込んだ。車は少々小さいのでいっぱいいっぱいだ。


「兄貴!触んないでよ!!」


「あ・・・・ごめん。」


 義妹にそういわれ、時雨は母親の隣に移動。母親はそんな二人に対して何にも言わず、ため息を出すだけであった。

 蕾が母親と話し出し、時雨にはよくわからないことだったので過ぎ行く景色にいちいち感想をつけていると(あの電柱の上にいるカラスは頭よさそうだなぁ・・・・お、こっち見て睨んだぞ?凄い勇気を持ってるなぁ・・・・あ、あそこの雷おじさんが実は猫に甘いなんて噂があったけど・・・・本当だったんだなぁ・・・!あ、道路にお札が落ちてる!!)眠くなり、そのまま眠ってしまった。



『時雨、お前も大変だなぁ・・・。』


「ち、千夏姉さん!何でいるの?今頃棺おけの中にいると思ったけど?」


『あのなぁ、前にも約束しただろ?私はお前を必ず守るってな。で、実のところを言うとな、私は人間じゃなかったんだ。どうだい、信じることが出来るかい?』


「え・・・うん。」


『全く、その性格はそのままか・・・・あれから結構経ったと思ってんだけどなぁ・・・まぁ、いいや。そんなことよりな、お前、天使になっただろう?だけどなぁ、ちょっとまずいんだよ。』


「ええと、なんで?」


『ま、頑張れよ。出番があったらまた登場するからな。』


「ちょ・・待ってよ!千夏ねえさぁーん!!」


 時雨は車の中で叫んでいたらしい・・・・母親と彼の妹が時雨のことを見ていた。


作者の切実な願いです。誰か、感想ください。

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