ガァァッコォウ!
十二、
「驟雨君、私がついてこれるのはここまでだ、先生はあの女の先生だからね?」
職員室の前にて、僕は氷さんから僕のクラスとその担任教師を教えてもらった。氷さんは三年二組なので、会うことはないだろう・・・・。僕がお礼を言って、職員室に入ろうとすると・・・・
「・・・・驟雨君。話しておきたいことがある。」
真剣そうに僕の名前を呼ぶ、氷さん。ま、まさか・・・この学校にも凶悪な番長でもいるのだろうか?
「・・・う、浮気をしたら許さないぞ?そこのところは忘れないでくれよ。」
そういってまだ、全く人気のない廊下を光の翼を生やして去っていった。・・・・できれば、真面目な話のときにだけ、真剣な顔してください。その思いつめた表情は僕を精神的に追い詰めます・・・・。
「・・・・はぁ、ま、しょうがないや・・・失礼します。」
職員室の扉を開けて、担任の先生だといわれた女性に近づく。まぁ、他に先生の数は少ないので挨拶もそこそこで先生の下にたどり着いた。
「・・・おや、君が今度転校してきた坂凪 驟雨君かな?」
「はい、そうです。これから、よろしくお願いします。」
先生はしげしげと僕の顔を眺め、ふぅむと二回程うなった。・・・・まるで、獲物を見るような感じだ。
「・・・うん、まぁ、合格ってとこだね・・・ついといで、君のクラスを紹介するよ。」
「はぁ、わかりました。」
先生は自己紹介などせず、びしっと決まったスーツ姿で僕の前を歩き出した。先生は長髪なので、後ろから見ると、井戸から出てきそうなお化けに見える。
「・・・ここだよ、今日から君のクラスは一年三組だ。」
先生は腕時計をちらりと見て、再びふぅむとうなったのであった。・・・・・なんだ、何か僕の顔にはついているのか?
「さ、入って入って。色々とこの学校について教えておかないといけないからね。」
「はぁ、ありがとうございます。」
先生に後ろから押されながら、僕は教室の中に入った。中は綺麗に整理されており、まだ、時間が早いせいか、誰も登校してきていない。
「・・・・ええとね、まずは私の名前から紹介させてもらうよ。私の名前は差林 榊。歳は偽り続けた結果、今のところは十六歳ってところかな。趣味は色々なことを学ぶことで、嫌いなことは嘘。好きな食べ物は果物全般で嫌いな食べ物は特になし!自慢できそうなことは、一度も虫歯になったことがないってところかな?あ、君は転校生だから、一応、何かあったときのために私の家の住所と携帯電話の番号を教えておくよ。」
準備していたとしか思えないほどの綺麗な自己紹介(多分、年齢は十六歳でも通じると思われる。)と、懐からの個人情報。・・・・熱血の先生なのかもしれない。僕が黙ってそれを受け取ると、今度は僕の目をしっかりと見据えてきた。
「・・・坂凪君、念のため、携帯の番号を教えておいてくれないかな?住所はもうしってるから。」
「はぁ、わかりました。」
僕は携帯の番号を先生に告げた。それが終わると、先生はにこりと笑って、腕時計をちらりと見た。ちょっと、眉をひそめあせった表情を見せた。あ、意外と可愛い・・・・。
「・・・ち、そろそろタイムアップかな?」
「?何がですか・・・。」
僕がそういうと、急に廊下のほうから音がしだした。どたどたどたどた・・・と、そんな音が聞こえてくる。そして、教室後ろ側のドアが勢いよく、開け放たれた。
「あ、みんな、転校生が本当に来てるよ!!」
「え、うそぉ!先生が昨日言っていたことは本当だったんだぁ!!」
「へぇ〜どんな奴?」
途端、騒がしくなっていく教室。段々と僕の前にはこの学校の生徒であろう、人物たちがやってくる。く、囲まれた!!まるで、タマが切れた銃を持ってゾンビに囲まれてしまった気分だ。しかも、やってきたのは全て女子・・・選り取り見取り?いや、どれもどうやら、僕にとっては高嶺の花のようだ・・・・。
「いやぁ、仲間が一人増えて嬉しいよ。」
どうやら、一人例外が混ざっていたようだ。いつのまにか、僕の目の前に男子生徒が一人だけ、立っていた。その目は、すべてを見透かせそうな雰囲気を持っている。きゃ、エッチ!
「・・・・先生、そろそろホームルームを始めたらどうですか?既に、この教室の全員が登校してきています。」
「・・・・そうだね、私としては坂凪君と夜遅くまで教室で語り合っていたかったけど・・・邪魔が入ったんじゃ、しょうがない。さ、みんな、坂凪君に触らないでさっさと席について!」
珍しいものでも見るような感じで僕を囲んでいた女子生徒を先生はさっさと追い払って僕の体を教壇の上に引き寄せた。・・・・先ほどまで、教壇の上にいたのに、教室の真ん中まで引っ張られていたようだ。もしも、先生が僕を引っ張ってくれなかったら近くのトイレに連れ込まれて襲われていたかもしれない・・・・。
「ええ、みんな、昨日言っておいたとおり、このクラスに転校生がやってきた。彼の名前は坂凪 驟雨君。みんな、私が予約したから触るんじゃないぞ?では、坂凪君、皆に何か言ってくれないかな?」
頷いて、教室をざっと見渡す。女女女女・・・・どこもかしこも女子だらけである。ああ、これってなんだか、幸せ?
「いや、男も一人いるよ。忘れないでくれ。」
・・・・・さて、何を言おうかと考えたが、特に思いつかないのでとりあえず、自己紹介から言ってみることにした。
「・・・ええと、坂凪驟雨です。昔の高校での思い出は特にないので・・・・できれば、こちらで多く作りたいと思っています。みなさん、よろしくお願いします!」
頭を下げて、頃合を見計らって頭を上げてみると、目の前に先生が立っていた。
「・・・・坂凪君、ぜひ、私と思い出を作ろう・・・・そして、後十年ぐらいしたらあんなことあったねぇとか言って一緒に笑おうじゃないか!!」
先生は同窓会の話をしているのだろうか?だが、なんとなく、違うような気もする・・・・。ここは頷かないほうがいいのかもしれない。
「先生なんかより、私たちと思いでつくろうよ!ま、特に私と一緒が多いと思うからね。」
いつの間にか、先生は教壇においてある花瓶に咲いている花の葉っぱを掴んでおり、僕の手を他の女子が握っていた。・・・・う、うわ、初めて触ってもらったよ。意外とやわらかいもんだなぁ・・・・。
「みんな、抜け駆けを許しちゃ駄目よ!さっさと坂凪君を捕まえてみんなでいろいろなことして楽しみましょう!!」
誰かがそういうと、クラスのほとんどが賛同した。・・・・誰ですか、ロープまで取り出している危なそうな人は・・・・。いったい、ロープで何をしようって言うんですか?
「・・・・まぁ、とりあえずみんな、落ち着け。坂凪君が怯えているぞ?脅迫はよくない。」
そういって、皆を静めてくれたのはあの、男子生徒だった。・・・・どうやら、先生もなんだか叩かれたら痛そうなものをもって生徒側にまわっているみたいだ。




