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第0話
「・・・っはぁ・・・っはぁ・・・」
暗い闇の中。
繰り返される吐息は、まるで何かから逃れるかのように駆け抜けていく。
・・・・いや、事実逃げているのだ。
「くそっ・・・どうしてっ・・・!!」
少年は自分の持てる力を出し切って走る。
後ろを見ている暇もない。
もうすぐ後ろに、化け物は迫っているのだから。
「・・・あっ!?」
一直線の先に、ひとつの扉。
怪しい雰囲気がしたが他に逃げ込めるような場所もなく、少年は迷いなく扉を開けて飛び込んだ。
化け物が侵入してくる前に、大慌てで扉を閉める。
荒々しい扉の閉まる音。
それと同時に迫っていた邪気は少し薄らいだような感覚がして、少年はため息をついた。
それと同時に走った疲れが出たのか、その場に崩れ落ちるように倒れこみ、眠りについた。
・・・・彼の名前は亜倉 氷忌。
彼は、この迷宮をさまよい、迫りくる魑魅魍魎から逃れ続けていた。
──自分が、己の過去も、なぜここにいるのか知らずに。