16.五人で遊園地へ
玲華と麻琴のデートの二日後、颯汰の必死の願いを玲華が受け入れ、五人で遊園地に行くことに。
颯汰は最後まで「二人がいい…」と言っていたが、玲華が
「付き合ったら嫌でも二人でいれるでしょ」
と言うと、颯汰は顔を真っ赤にして、無い尻尾を振っていた。
―麻琴Side
玲華の運転で遊園地に着いた。五人で遊ぶのは、小学校低学年以来。
(それにしても、緊張したぁ…)
―
「麻琴はこの前、ずっと助手席に座っただろ! 今日は俺に譲れ!」
という颯汰の訴えで、後部座席に座ることになったのだが、柊斗と湊が真ん中に座ると、後ろが見えづらいとのことで、
二人の間に座ることに…
助手席に座れて満足そうな兄の顔を見ると、譲ってよかったなと思ったが、この状況は緊張せずにはいられない。
(なるべく小さくなろう…)
足をピタッと閉じ、膝の上に置いた荷物をギュッと抱えるように肩幅を狭める。
「そんなに縮こまらなくても、リラックスしたら?」
右隣に座っている湊が声をかけてくれた。
軽くウェーブがかった黒髪、柔らかい印象を与える少し下がった目にはホクロが一つあり、通った鼻筋と薄い唇は柊斗と同じ。
―『湊さんって優しいけど、色気あってちょっと怪しい感じしない?』と誰かが言っていたのを思い出した。
「あっありがとうございます…」
至近距離に緊張しながらも、返事をする。
「麻琴、なに湊に緊張してんだ?」
テンションが上がっている兄が、振り向き言ってくる。
いつもはある程度距離があるが、車内という狭い空間では距離が近く、いつも以上に意識してしまう。
(相変わらず美形一家… 今更ながら、お隣に住んでるなんて信じられない……
あ、お兄ちゃんの顔見たらなんか癒やされたわ。 ずっと前だけ見とこう)
外の景色を見ようにも、右も左も向けないので、遊園地に着くまでひたすら前を向いていた。
―
「さあ! 久しぶりに遊び尽くそう!」
「「「はーい」」」「…」
玲華を筆頭に、次々とアトラクションへ。
楽しい時間はあっという間、辺りも薄暗くなってきた。
「よし!じゃあ、最後にココ行こうか!」
(……うっ ココだけは行かないように避けてたのに…)
玲華の指さす先には“お化け屋敷”
私は、驚かされるのが何より苦手…というか嫌い。
「無理無理!」と言いながら入り、怯えながらゆっくり進み、キャーキャーと怖がりながら出てくる。
そんな可愛いことが出来ればいいが、私の場合、まず入らないが、無理矢理入れられたとして、全力で走る。
驚かされる前に走る。ゆっくり進んだら相手の思うつぼ。
ましてや、驚いて「キャー」なんて言えない。「う゛っ」と可愛くない声を出すか、「なに!?」と切れるか、声が出せず手が出るか…だと思う。入ったことないけど。
「さぁ行くよー」
玲華は行く気満々で歩く。その後ろを三人も普通に付いていこうとしている。
「あ…あの、私ここで待ってるので、三人でお化け屋敷行ってきてください」
空気を壊すかもしれないと思いながらも、入る直前でやっぱ無理と言ったり、意を決して入ったとして醜態をさらすよりは言うなら今しか無いと思った。
「そっか!麻琴ちゃん、ホラーとか驚く系苦手だったね。 ごめんね。はしゃぎ過ぎちゃった。
でも、さすがに麻琴ちゃん一人にするには…」
「いえ、私のことは気にせず…」
「そうだ!柊斗、あんた麻琴ちゃんと一緒に待ってて! そしたら安心だし。ってことでどう?」
―柊斗Side
三人がお化け屋敷に向かい、麻琴と二人になった。
五人でいるときも話をしていなかったので、いきなり二人になってどうしようと思ったが、戸惑っているのは麻琴も同じだ。
(一緒にいて、つまらないとは思われたくない… 何か… そういえば…)
「もし、高いところ大丈夫だったら、アレ乗らない?」
―
(よかった~)
怖がりながらも、窓の外を楽しんで見ている。
前にHaruがブログで観覧車に乗ったと書いてあったのを思い出し、麻琴に言うと
「観覧車… そういえばHaruも乗ったって言ってた… 乗りたい!」
そうして三人を待つ間、観覧車に乗ることにした。
「観覧車に乗るのなんて小学生以来かも… 思ったより揺れる… ちょっと怖いかも… でも、Haruと同じ経験をしていると思えば…」
怖さを紛らわすためなのか、ブツブツと独り言を言う麻琴。
両手は観覧車の手すり部分をぎゅーっと力いっぱい握っている。
(漫画の男だったら、こういうとき隣に行ったり、手を握って「大丈夫だよ」とか優しく言うんだろうな…
てか、あいつら付き合ってない段階でもそういうことするけど、女子はそれでもいいのか? いや、女側も相手の男に気持ちがあるからいいのか… 俺は…)
向かいの席で自分を落ち着けようと独り言をつぶやき、手すりを両手でギュッと握る好きな子に、
「大丈夫だよ」って言えたら、あの手すりが俺の手だったらなとか…
(いや、大丈夫くらいは言えよ…)自分に突っ込みを入れながら、情けな…と窓に反射する自分の顔を見る。
「ねぇ、お願いがあるんだけど…」
!
ボーッとしていると、麻琴が話しかけてきた。
「その… 本当は外の写真撮りたいんだけど怖くて手が離せなさそうだから、柊斗撮ってくれない?」
恥ずかしそうに笑うその顔に、思わずきゅんとした。
「いいよ。どこら辺撮る?」
「ありがと。あのメリーゴーランドとか、あと…」
観覧車もてっぺんに近づく頃には麻琴も慣れてきて、自分で写真を撮り始めていた。
片手は変わらず手すりを握っているが…
「もうすぐ一番上だね!」
ワクワクと嬉しそうに上を行くゴンドラを覗き込んでいる。
(そうだ…)スマホから麻琴がHaruの曲で一番好きな曲を流す。
「あっ! You and dreamだ! いいね~ 柊斗ありがと」
曲を流したことにすぐに気が付き、さっきよりもニコニコ度合いが上がった。
時々歌いながら、窓の外をキラキラの笑顔で見る麻琴。
(もう少し早く流せばよかったな)
観覧車を降りる時間が近づいてくる…
最後まで窓の外に釘付けで楽しそうな麻琴を見ると、思わずスマホを向けていた―
―
「麻琴ちゃん~ 柊斗~」
観覧車を降りると、玲華から連絡が来て合流した。
「二人で大丈夫だった?」
麻琴の頭を撫でながら玲華が聞くと、
「柊斗が観覧車に誘ってくれて、とっても楽しかったです! 写真もたくさん撮ってくれて」
麻琴の言葉に三人は驚き、冷やかすような視線を送ってきた。
「そうだったの~ よかったね~」ヨシヨシと麻琴の頭を撫で続ける玲華。
「柊斗も楽しかった?」湊が肩に手を回し聞いてくる。
楽しんでいた麻琴の顔を思い出すと、自然と笑みがこぼれた。
…
帰りの車内で、お化け屋敷の様子を聞いた二人。
玲華は、ずっと手を繋ぎたがっていた颯汰を叱りながら、お化けが出ると笑い、
湊はニコニコしながら歩き、颯汰は玲華しか見ていなかったから覚えていないという。
麻琴は恥ずかしくて、行きよりも小さく座ったー




