No.18 最期の想い
「いやあああああ!!」
華の悲鳴が礼拝堂に響いたその瞬間、眩い光が弾けた。
華とダージリンを中心に、光が広がる。
まるで二人を守るように、透明な盾が生まれた。
その盾に触れた瞬間、ディアナの体が弾き飛ばされる。
「ぐあっ!」
ディアナは礼拝堂の壁まで吹き飛び、激しく叩きつけられた。
ブラックは目を細める。
「……なんだ、今の」
光の盾はゆっくりと形を成していく。
それは、白い花の形だった。
あの洞窟に咲いていた、華を救った白い花と同じ形。
華は震える手でダージリンを抱き支えた。
「ダージリンさん……!」
ダージリンの横腹からは血が流れ続けている。
ダージリンは苦しそうに息を吐きながら、華の頬に手を伸ばした。
「……華……」
その手は優しく、華の頬を撫でる。
「聞くんだ……あの……神秘の泉は……存在する……」
華は涙を流しながら首を振った。
「ダージリンさん!いいですから……!」
必死に叫び、
「喋らないで……!」
華はダージリンをゆっくり床に寝かせる。
そして刺された横腹を押さえるが、血は止まらない。
「血が……血が止まらない……」
ダージリンはゆっくりブラックを見て、
「ブラック……洞窟に……華を……連れて行って……くれ……」
呟くと、ブラックはしばらく黙っていた。
そして舌打ちし、
「……チッ」
ダージリンを睨む。
「後で絶対戻るからな。それまでくたばるなよ」
ブラックは拳を握ると、
「……お前を倒すのは俺なんだからな」
そう言って華の腕を掴んだ。
「行くぞ」
華は抵抗し、ダージリンを見つめる。
「やだ……!ダージリンさん……!」
涙が溢れて、止まらなかった。
「やだ……離れない……!」
そんな華に、ブラックは怒鳴った。
「ダージリンの思いを無駄にすんのか!!」
礼拝堂にその声が響いた。
ダージリンは、自分を助けるためにここまで来た。
そして命をかけて守ってくれた。
その想いが胸に刺さる。
華は震える手で涙を拭き、もう一度ダージリンを見つめる。
「ブラックさん」
震えていた声は、もう揺れていない。
「洞窟に連れて行ってください」
その瞳には、強い決意が宿っていた。
ブラックは小さく頷くと、
「……行くぞ」
二人は礼拝堂を飛び出すと、森へ向かって走り出す。
そして、礼拝堂には再び静けさが戻っていた。
床には血が広がり、倒れた椅子や信徒達が散らばっている。
中央には、ダージリンが倒れていた。
呼吸は浅く、横腹から血が流れ続けている。
それでもダージリンは、ゆっくりと目を開けた。
かすむ視界の中、天井のステンドグラスが揺れて見える。
「……はぁ……」
か細い息を吐く。
そして震える手を持ち上げた。
「……ここは……」
指をわずかに動かすと、祭壇に火が灯った。
華が横たえられていた祭壇、そこから炎が生まれ、ゆっくりと広がっていく。
椅子、床、布へ。
炎は次第に勢いを増していった。
ダージリンは横になったまま、その炎を見つめる。
「……ここは……」
声はほとんど聞こえない。
「私が……終わらせる……」
炎が柱へ燃え移り、天井まで火の光が揺れる。
ダージリンはゆっくりと視線を動かした。
その先には、ディアナが倒れている。
背中を強く打ち、意識を失っていた。
ダージリンは小さく息を吐き、
「……これから……」
苦しそうに言葉を紡ぐ。
「苦しむ人が……増えないように……」
炎はさらに広がり、礼拝堂の壁が燃え、天井から火の粉が落ちる。
ダージリンの瞳が、ゆっくりと閉じていく。
「……華……」
その名前を最後に、ダージリンは意識を失った。
燃え広がる炎の中で。




